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2011.12.16

木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具

類い稀な木の生命力を未来の暮らしに繋ぐ
日本の伝統工法と新しい感性の融合

  • main186 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具
    オスとメスと呼ばれる凸凹が木組みの基本構造。
    経験を積むうち、木材を直角に切る以外は機械より手の方が精度が高くなったという。
  • main271 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具
    工房ではペアのつなぎが作業着という、いつも仲良しな職人夫婦。
    大輔さんが工房長だが、ときには奥さんが師となる場合も。
  • main364 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具
    実物を暮らしの風景で、と住居がそのままショールームに。
    子供サイズのplain-chair「p-chair mini」は、タモ素材で¥35,700。
  • main431 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具
    愛犬フルールのために生まれた「ボウルスタンド」も人気作。
    永久定番プロダクツともいえる柳宗理のボウルを乗せて完成する。
  • main519 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具
    とある写真館のオーダーされた大きな作業デスク。同じ木から出た板を用い、いかに木目を美しく繋げるかに神経を注ぐ。美観だけでなく、木の反りや割れを最小限に防ぐにもこの板の配置が重要という。

sub1_thumb64 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具

2006年からスタートした、クリスマスシーズン限定のsnow-treeシリーズ。毎年1種の木を用い、6年目の今年で全シリーズ完成。全種揃うと、6色の木で雪の結晶を形づくることができる。

sub2_thumb61 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具

丹波山地の山々が取り囲み、冬は雪深い静寂の地となる質美。この古い民家を、自分たちの手で少しずつリノベートしてきた。

sub3_thumb54 木の力+使い手+時間が育む スタイリッシュな木組み家具

注文主の難題から生まれた傑作がこの回転本棚。金具を使わずに回転させるには…と考えた結果、棚と脚部の隙間にビー玉が仕込まれた。回転の際にビー玉が転がる音も心地良いと好評だ。

丹波・質美。京都市内から車で約1時間、緑深い山々に囲まれた小さな山里に、上田大輔&亜紀夫妻の家具工房「つみ木」はある。ネジ・クギなどの金具は一切使用しない。無垢の木だけを使用し、昔ながらの「木組み」の技術のみで作り上げる。古民家を再利用した工房で、そんなオリジナル家具が日々コツコツ作られている。彼らの哲学は、その家具同様にいたってシンプルでストレートだ。

「家具は、100年以上あるいは数百年生きてきた木を使って作ります。木は生きた時間と同じだけ素材として生きることができる。だから本来は家具もそれくらい長い間使えないとおかしいんです。金具は仕様が変わったり、生産中止になるなど100年後も同じものが使えるとは限らない。でも木組みなら、私たちが死んだ後でも、わかる人が見ればこの仕組みは理解できるはず。いつか壊れても誰かが修理してくれる。木組みには、そんな想いもあります」

そして木が生きた年数と同じだけ家具が生きたとき、山にはまた次の木が立派に育っている。こうした想いから生まれるつみ木の家具には、いつも未来の情景が含まれている。現在設計中の新居の完成に合わせて、あるいは生まれたばかりの赤ちゃんが1年生になったら…と、未来に照準を定めたロングスパンのオーダーも多い。

「あるときお客さんに『今まで座卓だったのが、テーブルが来て生活がリズミカルに変わった』って言われ、ハッとしたんです。そうか、僕たちは家具のカタチをしたものを作っているけど、未来の暮らしそのものを作る仕事でもあるんだと」

だからデザインを声高に主張したりはしない。彼らが「絶対90度」と呼ぶ高精度の直角を生かしたシャープな線と、なめらかで美しい面。木の性質やクセを読みながら、その力強さ、優しさ、美しさを最大限に引き出す、シンプルで最も心地いいカタチを心がけている。そこには同じ1本の木から出た木材、一枚の板を使ってできる限り無理なく、美しく仕上げるべく考え抜かれたデザインと精妙な木組みの技が大きく作用している。そういえば、話を聞きながらふと気づくと、自分の手がテーブルの天板を無意識にすりすりと撫でている。なぜだか気持ちいいのだ。頭が理解するより先に、五感が反応する家具!

「普通はウレタン塗装などで木の表面を覆ってしまう場合が多いですが、うちは主に食用にも使われるえごま油を使っているので木の呼吸を妨げない。それが感触に表れるんです」

塗料もえごま油や漆といった天然のものだけ。昔からごく当たり前に使われてきた天然の素材や技術は、木に最も無理がなく理にかなった手法。そして長い時間の中では人の感性にも大きく影響する、と彼らは考える。木は家具になっても毎日呼吸する。雨の日には湿気を吸って膨らみ、晴れれば吐き出して伸縮を繰り返す。だが、金属は木の伸縮についてゆけず木を破壊する。だから素材は木のみ。必要な遊びをもたせて工夫を凝らし、機能性とデザインを最適なバランスで調和させる。あとは長い時間が、家具をその家々にふさわしいカタチと色に変化させてくれる。木と時間の力を信頼したこの妙味こそが彼らの真骨頂。また、回転する本棚、高さを変えられるスツールなど、発注者の「こういうの、できますか?」という難しい要望ほど、がぜん燃えるという大輔さん。木組みの複雑な構造を、いかにスマートにスタイリッシュに仕上げるか? その答えが出たときこそ、彼いわく「家具屋がデザインする」木組み家具の、新境地が開ける瞬間なのである。

つみ木

http://www.tsumiki.net/

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