ドイツの高圧洗浄機ブランド、ケルヒャーの威力を体感!正しい洗車方法とコツを伝授
ドイツ発の高圧洗浄機ブランド・ケルヒャー。洗浄機器のグローバルマーケットをリードする実力をJeepイベントで知り、改めてケルヒャー ジャパンを取材。そこで見たのは、道具好きも唸らせるアガる洗車だった。
洗車のイメージを変えた美しい水煙
高精度・高機能を感じさせる、いかにもドイツらしい『ケルヒャー』という名称、もちろん知っていた。30年以上前になるらしいが、ニューヨークの自由の女神やリオのキリスト像など、世界の名だたる建造物の洗浄作業を記録した映像を見た覚えもある。
だが、その実力を初めて目の当たりにしたのは、2022年5月末に新潟で開催された『Jeep Adventure Academy 2022 Basic Class』の会場だった。このイベントでケルヒャーは、自社製品の家庭用高圧洗浄機を紹介するブースを展開していたが、本領を発揮したのは参加者のオフロード走行が終わった直後。Jeepにまとわりついた泥を一気に洗い流したのがケルヒャーだった。
この場に用意されたのは、給水車と連携した業務用のプロスペック。1台当たり数分で泥汚れを吹き飛ばしたのには驚いた。なおかつ、高圧で放たれる水がボディに当たって弾けるときに立ち上がる水煙が、夕暮れの逆光を受けてとても美しく見えた。
洗車って、見ているだけでこんなにアガるのか?
そう感じた瞬間、ケルヒャーによって洗車のイメージが大きく変わった。
業務用から生まれた家庭用高圧洗浄機
改めてケルヒャーの素晴らしさを体感するべく、横浜市港北区のケルヒャー ジャパン本社を訪ね、家庭用高圧洗浄機を使った洗車方法を見せてもらうことにした。
本社ビルの1階は、家庭用と業務用を含む全ラインナップのショールーム兼ショップ。鮮やかなイエローをまとった家庭用の中には、アウトレット価格を表示した製品もあり、またしてもアガってしまった。
興奮はさておき、ここでケルヒャーの歴史を紹介する。ケルヒャーの創業者は、1901年にドイツで生まれたアルフレッド・ケルヒャー。発明の素養があった彼は、23歳で公認技術者の資格を取得した後、勤めた父親の会社を数年かけて技術コンサルティング会社へと発展させた。
1935年に自分の事業を立ち上げ、航空機エンジンを暖める温風送風機の開発と量産体制を確立。それを皮切りに、ストーブや台所レンジ、車両運搬用トレーラーなど様々なプロダクトを世に送り出した。1950年にはヨーロッパ初の温水高圧洗浄機の開発に成功する。
ところがアルフレッドは、1959年に58歳で急逝。会社経営を引き継いだ妻のイレーネは、1974年頃に起きた戦後最大の不況時、ケルヒャーがもっとも信頼を得ていた業務用高圧洗浄機事業の一本化を決断した。
1984年、業務用をベースにした世界初の家庭用ポータブル高圧洗浄機『HD 555 profi』を発売。初年度3,600台の販売台数は翌年に30,000台となり、家庭用製品市場でも世界屈指の洗浄機ブランドへ成長する礎を築いた。ちなみに、コーポレートカラーをイエローに定めたのは、イレーネが業務用高圧洗浄機だけに絞ったのと同じタイミングだったという。
ケルヒャー家庭用高圧洗浄機のニューモデルが発売
ここで最新ニュース! お馴染のイエローをまとった家庭用高圧洗浄機の人気モデル、K 5、K 4、K 3が約9年ぶりのフルモデルチェンジを行い、2022年10月1日に発売されるという。住宅街でも気兼ねなく使える水冷式静音タイプという基本コンセプトはそのままに、柔らかい素材を用いた高圧ホースや、ホース収納はリール式で本体背面に付属するなど、さらなる使い勝手のよさを実現したそうだ。
中でもトップエンドのK 5は、ノズルの交換で噴射方式を変える仕組みから、ノズル交換不要で5種類の噴射が選べる新システムに移行。洗浄性能の向上と利便性を突き詰めた点は、Jeepにたとえれば『ジープ ラングラー(Jeep Wrangler)』のルビコンに相当すると言っていいだろう。
その最新型、K 5を使った洗車を指導してくれたのは、業務用プロダクト部プロダクトマネジメントの齋藤幹夫さんだ。取材当日は洗車に不適合な大雨が降り、本社ビル1階の屋内駐車場を特別に貸していただいた。そこでも驚きがあった。屋内作業にも関わらず響くのは水の音だけ。結果的だが、K 5の驚異的な静粛性を知ることができた。
業務用由来のパワーでムラのない噴射。洗車時間の短縮も。
では、作業開始。齋藤氏はまず、K 5からホースをたぐり寄せ、まっすぐ伸ばした。
「プロはそこから始めます。それから、サンダルなど肌が露出する靴は避けてください」
まさか、高圧噴射の水で怪我をする可能性があるとか?
「噴射モードに備わっているサイクロンは、高圧の水を高速回転で噴射するので、基本的に床などで使ってください。ボディの塗装が落ちかけた場所で使うと周囲のペイントを一気に剥がしかねません。業務用由来のパワーですから、その点は注意してください。私たちは安全靴を履いて作業します」
何という威力。またしても気分がアガってしまうじゃないか!
「ボディの下回りから洗浄機をかけます。先に上半分から洗うと、後の下回りの洗浄でボディに汚れが跳ね上がり、二度手間になってしまうからです。噴射モードは、扇形に水が出るバイオスプレーランスを利用されるのがいいでしょう。一般洗車場にも扇形の水が噴射される高圧洗浄機が備わっていますが、その中には水の両端だけに圧がかかってムラが出るものもあります。ケルヒャーは、家庭用も業務用もムラのない噴射をしますから作業効率がよく、洗車時間も短縮できます」
高圧をかけて強く噴射すればいいというものではないわけか。
「こんなものもありますよ」
齋藤さんが取り出したのは、ケルヒャーが発売しているホイールクリーナー プレミアム。ホイールに付着したブレーキパッドダストなどを落とすケミカル剤で、汚れに対して赤く変色するサインを示してくれる。
「ペーハーが強いので手袋を装着してください。それから、このオプションアクセサリーも便利ですよ」
そう言って長いパイプを組み上げたのは、アンダーボディスプレーランス。文字通りボディ下部の汚れを落とすのに効果的なツールだ。オフロード走行やスノードライブの後で重宝するのは間違いないだろう。
道具好きにはたまらない、豊富な洗車ツールであらゆる汚れに対応
下回りの次はボディの洗浄。
「最近はコーティングが行き届いているクルマが多いので、ケルヒャーで水洗いするだけでもほぼキレイになります。ですが、しっかり汚れを落としたい場合は、こちらをお勧めします」
これは誰でも爆アガリ。優れた泡立ちと付着力で汚れを浮き上がらせる3 in 1 ウルトラフォームクリーナーを注入したフォームノズルを使うと、瞬く間にボディが雪を被ったようになる。この様子は圧巻の一言だった。さらに齋藤さんは、さらなるオプションアクセサリーの回転ブラシを持ち出し、K 5のノズルに装着した。
「周囲の硬そうなブラシで擦っているように見えますが、これは水除けです。実際にボディに触れているのは、内部中央のマイクロファイバーです。優しい手洗いのような感触ですよ」
洗車ツールであれば何でも出てくる齋藤さんの作業を眺めていたら、四次元ポケット付きのロボットに見えてきた。
「ウェット&ドライ両用でモバイルのバキュームクリーナーがあれば、車内の清掃に役立ちます。窓用バキュームクリーナーは水滴を吸うので拭きムラができにくく、クルマのウィンドウにも使えます」
予想のはるか上を行くラインナップ数に感服。道具好きにはたまらないだろう。
「業務用がケルヒャーのベースですから、家庭用であっても効率性はずば抜けています。作業の時短にもなります。モデルチェンジしたK 5、K 4、K 3は使い勝手が向上していますから、ぜひ試してください」
今回は、高圧洗浄機による洗車方法を教えていただいた。しかしケルヒャーは、その製品を洗車機と謳っているわけではない。何が言いたいかというと、洗車にも使えるし、壁や窓の掃除にも使える、まさしく家庭用の洗浄機なのだ。だからあなたがJeepのためにケルヒャーを求めたとき、家族のためにもなるという口実、いや正しい理由を提示することができるだろう。
それで役割が増えても、きっと大丈夫。あの噴射機を構えるプロフェッショナル感と、想像以上に強い噴射力の手応えがある限り、あらゆる洗浄がアガる作業になるはずだ。
Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土