許可さえ下りれば富士山の頂上へ
ここからは、Jeepアンバサダーとしての岡部氏に登場してもらう。実は今回、岡部氏に東京から軽井沢まで2台のNew Jeep、2列シートのグランドチェロキーとコマンダーの試乗を依頼した。まずは、昨年の秋まで乗っていたグラチェロのインプレッションから。
▲『ジープ グランドチェロキー (Jeep Grand Cherokee)』
「ボリュームが増したせいか、よりどっしりとした安定感が高まった気がします。今度の2リッターのターボエンジンには軽いイメージを持っていたのですが、意外にも重厚感があって好感触です。さらに長距離が楽になるんじゃないかな。先代を引き継ぎながら新しくなったデザインも悪くないですね」
次はコマンダー。岡部氏の希望で、一つ手前のインターチェンジで降り、曲がりくねった旧碓氷峠を駆け上がった。
「ステアリングも足回りも、反応が凄くよかった! コーナーでタイヤが吸い付く感じが好きですね。運転席横のピラーが寝ているにも関わらず視界が良好。ディーゼルエンジンも想像以上にレスポンスがよかった。軽油ですから、コストパフォーマンスの良さも期待できますね。なおかつコンパクトなのに7人乗りは驚きですよ。Jeepは1シーズンだけ乗ったコンパスも含め、スキーを車内に入れたい派の僕にとって、常に最適の空間を用意してくれる。人も荷物もたくさん収められるのは、日本各地を走り回るスキーヤーにとってありがたいんですよね」
撮影中も進んで車両移動を手伝ってくれたところを見ると、2台のNew Jeepはアンバサダーに気に入られたようだ。何も言わなければ再び走り出しそうな様子だったので、引き留めるようにして質問を投げた。現在の愛車であるラングラーで行ってみたいところは?
「富士山の頂上。許可さえ下りれば、走破できると思うんですよね」
これは、時にたがを外さないと滑り出せない元アルペンスキーヤーらしい発想だろうか。
「自分のクルマなら日本中を走り回って、この国をもっと知ってみたい。特に沖縄。ラングラーは似合うと思うんですよ。その旅はナビを禁止しようかな。現役時代にヨーロッパを転戦したときと同じように、紙の地図だけを頼りにしたらおもしろそうですね」
スキーだけではなくサーフィンもキャンプも好き。やりたいことだらけと言いながら、そこに仕事を加えなかったのは岡部氏の性格ゆえか。
「できれば2台同時に持ちたい。住まいのある都内と軽井沢の往復にはグラチェロ。軽井沢より北に向かうときはラングラー。これ、理想形ですよね」
その語り口が真剣だから、次に会うときは実現していそうな雰囲気が岡部氏にはある。あえて言えば、沸き立つ欲求を自らいさめようとしないからこそ、自然と爽やかな覇気を放てるのだろうか。あるいはそんな人こそ、Jeepのアンバサダーにふさわしいのかもしれない。
Text:田村 十七男
Photos:望月 勇輝