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2023.07.13

大いなる空と大地を感じるクルマ、ラングラー4xe&レネゲード4xeを体感

【PHEVインプレッション】レネゲード4xeとラングラー4xe。今回はJeepが誇るPHEV 2台にモータージャーナリストの嶋田智之さんに試乗してもらったインプレッションをお届け!

親和性が高い、電動化システムとJeepブランド

自動車の電動化は、様々な意味合いで、もはや止めることのできない世界的な潮流です。Jeepが所属するステランティスもカーボンニュートラルを目指してグループ全体が様々な施策を行っていて、Jeepも電動化モデルの拡充を進めています。その意味合いは、僕はとても大きいと思うのです。

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▲『ジープ ラングラー ルビコン フォーバイイー(Jeep Wrangler Rubicon 4xe

なぜなら、“どこにでも行ける”乗り物としてJeepを選ぶ人の多くは、美しい大自然というものを愛しているはず。地球の自然環境を大切にしたいという気持ちも強いことでしょう。可能な限り空気も汚さず、大自然が奏でる音以外の静寂も侵さず、自分たちにとっても心地好い森羅万象を維持していきたい。心の中のどこかに、そうした気持ちがあって不思議はありません。

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▲『ジープ レネゲード リミテッド フォーバイイー(Jeep Renegade Limited 4xe)

悪路の走破性のことを考えても、電動化モデルは有利です。アスファルトの上でももちろんなのですが、とりわけラフロードに分け入ったときには、瞬間的に大きなトルクが必要となる場面だって少なくありません。バッテリー+モーターはそれが可能になる駆動システムですし、しかもそれは内燃エンジンのみを動力源とするものより電子制御との相性がいいので、繊細かつ素早い駆動力配分を得ることができます。

モーターとバッテリーで走る電動化システムとJeepブランドとの親和性は、実はものすごく高いのです。

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▲モータージャーナリストの嶋田智之さん

そしてJeepブランドの電動化モデルの第1弾として、“4xe”というサブネームを持つレネゲードのプラグインハイブリッド(以下、PHEV)がデビューしたのが2020年のこと。以来、グランドチェロキー、そしてラングラーにも4xeが追加され、2024年の春以降にJeep初のピュアEV、アベンジャーがいよいよ日本でもデビューを予定しています。アベンジャーで現在発表されているのは前輪駆動のみですが、近い将来の4WDモデルの登場を予感させるコンセプトモデルも公開されています。また、ここ数年のうちにゼロエミッションヴィークルが登場することもアナウンスされています。“2030年までにアメリカの新車販売の50%を、そしてヨーロッパで販売する100%の製品をBEVに”という計画は、着々と進行しているわけですね。

気持ちよく曲がってくれるハンドリングも電動化によるメリット

現在この日本には、レネゲード、グランドチェロキー、ラングラーの3種の4xeが導入されています。今回はそのうちの最もコンパクトで日本の道路環境にフィットするレネゲードと、最も悪路走破性にこだわったラングラーの2台を走らせてみました。

ジープ レネゲード リミテッド フォーバイイー(Jeep Renegade Limited 4xe)』を走らせるのは、およそ2年半ぶりくらいでしょうか。ちょうど日本で発売になった頃に、どちらかといえばオンロード向きの快適装備仕様といえるリミテッド4xeと、トレイルレイテッドバッジが与えられた、よりラフロードに向いたトレイルホーク4xeの2台を走らせたのでした。そして今回の試乗車は、都市部を中心に普段使いをするのに適していそうな、リミテッド4xe。3シーズンタイヤを履き、ヒーテッドステアリングやシートヒーター、アダプティブクルーズコントロールなどを持つモデルです。

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レネゲード4xeのPHEVのシステムは、2基の電気モーターと総電力量11.4kWhのリチウムイオンバッテリーパックに、1.3リッターターボの直列4気筒エンジンと6速ATが組み合わせられるもの。前輪の駆動とバッテリーの充電はエンジンが担い、フロントアクスル上に置かれる48Vのスタータージェネレーターが駆動のアシスト、そして回生ブレーキとして機能します。そしてリアアクスルにあるもう1基のモーターが、後輪のトラクションを担当し、回生ブレーキの役割も果たします。前輪と後輪の間にはプロペラシャフトやセンターデフのようなメカニカルな4WD機構はなく、駆動力の配分は電気的に自動で制御される仕組みです。

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リミテッド4xeのアウトプットは、エンジンが131ps/5,500rpmに270Nm/1,850rpm、フロントのモーターが45psと53Nm、リアのモーターが128psと250Nm、システム最高出力は191psです。

ハイブリッドシステムの作動は3つのモードから選択が可能です。エンジンとモーターを自動的に効率よく使い分ける“ハイブリッド”、モーターのみで走行する“エレクトリック”、バッテリーの消費を抑えるためにエンジンを多用する“Eセーブ”、です。またドライブモードはオート、スポーツ、スノー、サンド&マッド、さらには4WDロウと4WDロック、ヒルディセントコントロールも選べるのですが、今回の試乗は街中メイン。オートとスポーツで走りました。

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スタートして最初に感じたのは、やっぱりサイズのよさでした。レネゲードの全長は4,255mm、横幅は1,805mmとコンパクト。街中では、小さいということそれ自体が武器のようなもの。周囲に神経質なほど気を配らずにスイスイ走れるのは、それだけで心地好いものなのです。

その心地好さを大きく増幅してくれるのが、モーター駆動です。エレクトリックモードではもちろんですが、ハイブリッドモードをチョイスしていても、バッテリーの充電量が残っているときには、可能な限りモーターだけで走らせようとします。モーターのトルクが250Nmもあるのだから、街中での走行では全く不足はありませんし、高速道路の巡航も同様でした。この時点ではエンジンによる前輪の駆動がなく、後輪駆動で走っているわけですが、悪天候などで路面の状況が悪くて不安なときにはEセーブモードにしてエンジンを始動しっぱなしにすれば前輪駆動ベースの4WDとして機能してくれますし、そもそも前輪の駆動が必要な状況になれば、即、自動的にエンジンが始動して前輪での駆動力を生み出します。

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より強力な加速が欲しいときも同じこと。アクセルペダルを強めに踏み込んでいくと、エンジンが始動して前輪と後輪の両方での駆動を開始します。その瞬間にスピードの伸びがグッと強くなりますし、クルマ全体に一気に力強さが宿る感覚もあって、その頼もしさが気持ちよさと楽しさにつながるのです。また1.3リッターのエンジンはもともとファイアフライ(Firefly)というシリーズに属するのですが、実はファイアフライ系のエンジンは、実用エンジンとして開発されたくせにシャンシャンと軽やかに高回転まで回り、回すほどに伸びていく意外やスポーティな性格であったりします。レネゲードのエンジンもまったく一緒。それにリアモーターのパワーとトルクが加勢するわけですから、ストレスなんてあろうはずがありません。走らせる楽しさ、気持ちよさを感じるのみ、なのです。

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乗り心地やハンドリングについても同じで、PHEVのシステムを積み込んでいることが、レネゲードをさらに良い方向へと向かわせているように感じます。重量のあるバッテリーを車体の真ん中辺りに低くマウントしているので、乗り味はかなり落ち着いている感じだし、同時にスポーティに気持ちよく曲がってくれるハンドリングを作り上げている印象。それらもあきらかに電動化によるメリット、なのです。

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とはいえ、やっぱり新鮮な気持ちになれるのはモーター走行です。レネゲード4xeは、満充電の状態からモーターだけで約50kmの走行が可能。つまり自宅でフルチャージしておけば、通勤や買い物などの日常的な使い方のすべてもしくはほとんどを、モーターだけでまかなえてしまうのです。遠くまで走っていって大自然の中を静寂とともに走りたいときには、Eセーブモードでバッテリーの消費を抑え、目的地についたらエレクトリックモードに切り換える、という手段で満喫できることでしょう。

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メーター上でバッテリー残量がゼロになっても実際には20%ほどを残す設定とされているそうで、その状態でも発進のときにはモーターだけで走行したりします。よく考えられているし、よくできているのです。レネゲード4xe、あらためて魅力的なモデルだな、と感じさせられました。

Eセーブモードで発電、満充電へ近づけながら走ることも可能

次に走らせたのは、『ジープ ラングラー ルビコン フォーバイイー(Jeep Wrangler Rubicon 4xe』でした。最強のオフローダーであるラングラーの中の、さらに最強のオフローダーであるルビコンの称号が与えられています。PHEVのシステムで環境に優しいだけじゃなく、ラインナップの中で最も悪路走破性に優れた1台でもある、ということなのです。こちらは僕にとっても初試乗でした。

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ラングラー 4xeのPHEVシステムは、レネゲードのそれとは異なります。こちらはエンジンとモーターで生み出すパワーとトルクを、トランスファーを介して前輪と後輪の双方に伝えます。その駆動力はレバー式の副変速機のポジションで切り換えることができるので、2Hでは後輪のみ、4Hパートタイムなら前輪と後輪の両方、4Hオートならそれらを自動的に切り換えながら駆動します。つまりモーターのみでの4WD走行も可能、ということですね。

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パワートレーンの基本構成は、通常のラングラーと同じ2リッターターボの直列4気筒エンジンに8速AT、そしてエンジンにマウントされるスタータージェネレーターとトランスミッションの前側にマウントされる駆動用モーターという2基のモーター、トランスファー、総電力量15.46kWhのバッテリー、です。

エンジンは272ps/5,250rpmと400Nm/3,000rpm、エンジン側のモーターは63psと54Nm、トランスミッション側のモーターは145psと255Nm。本国での発表値によればシステム全体では380psと637Nmになるということですから、日本市場においては段トツで過去最強のスペックを持ったラングラーになった、というわけですね。

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こちらもドライブモードはハイブリッド、エレクトリック、Eセーブの3つで、副変速機も含めていろいろ切り換えながら走ってみたのですが、ハイブリッドでは当然ながら負荷がかかるまでモーターのみで走行していきます。モーターでの走行時はいうまでもなく滑らかで、重厚で、通常のルビコンより320kgも重いはずなのに、力強さに不満を感じることもありません。車内が静かだからなのでしょうが、通常のルビコンと較べればマッドテレインタイヤのノイズが大きく聞こえてきます。そういうタイヤを履き、レバー式の副変速機を備え、スウェイバーをディスコネクトする機能まで備えた悪路の王者と言えるクルマがモーターだけで走っているというのが、とっても不思議な感覚。電気であっても内燃エンジンであってもJeepである以上、やることは一緒という考え方がうかがえる一例ではあるのですが、僕の気持ちの中で今ひとつイメージができてなかったのか、かなり新鮮な気持ちにさせられました。

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最初のうちはそこに気をとられていたのですが、ふとモーター駆動のもうひとつのメリットが強く活きたクルマであることに気づきます。アクセルペダルの操作に対するトルクの出方が素晴らしく素直にしてレスポンスに優れているから、4つのタイヤへのパワーデリバリーがしやすいのです。とりわけ低速域、微速域では秀逸。これは足元の悪い泥濘地や這うようにして進むような荒れ地などで正確にパワーやトルクを送りたいときに、ドライバーに大きな恩恵をもたらすことでしょう。

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そしてアクセルペダルとグッと踏み込んでいくと、これまでのラングラーでは体験したことのない加速が襲ってきます。いや、普通の感覚から考えても速い速い、充分以上に速い。スピードがどんどん伸びていくのです。ラングラーにこの怒濤の加速、必要? なんて思えてしまうほどでした。微速もいける。高速もいける。間違いなく電動化の恩恵です。

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ルビコン4xeも、満充電の状態からモーターだけで約42kmの距離を走ることが可能です。レネゲード4xe同様、自宅などでフルチャージして、1日のほとんどをEVとして過ごすことができるかもしれません。そして4WDのEV走行が可能であることを考えると、鳥のさえずりなどを聴きながら大自然の営みを極力邪魔しないよう静かに排ガスも出さずに道なき道など走りたい、という気持ちがさらに大きくなってくるのは僕だけじゃないでしょう。

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ラングラーのPHEVシステムでは、Eセーブモードを選ぶと充電量を温存させるだけじゃなく、発電して満充電に近づけながら走ることも可能です。さらにダッシュボードの“Max Regeneration”スイッチをオンにすると、充電能力が強力になるようです。これが結構効いているようで、首都高速を10kmくらい走っただけで7%もバッテリーの充電量を取り戻すことができました。今回は自然豊かなところへと足を伸ばすことはできませんでしたが、モーターだけのオフロード走行がより身近なものとなっていることを実感できて、期待感が膨らんだものです。

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▲Max Regeneration”スイッチ

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Jeepオーナーの次の一手になる4xeの存在感

今回、東京でJeepの2台のPHEVモデルを走らせてみて気持ちの中に残ったのは、地球環境への刺激を大幅に抑えることができるという点でこれまで以上に晴れ晴れとした気持ちで自然に触れ合いにいけるクルマが誕生したのだな、という実感でした。大いなる空と大地を、そして静謐な空気を可能な限り美しく綺麗に保ちたいという大半のJeepオーナーの中にある望みに、Jeepの電動化モデルは寄り添ってくれるのです。

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カーボンニュートラルを目指すという世界的な潮流の中で自然の中を走るためには最適解に近い存在。皆さんの次の一手として、ふさわしい候補になることは確かでしょう。また僕自身も電動化によるメリット、とりわけモーター駆動による静かで強力な走りを大自然の中で試してみたい、という気持ちが大きく膨らみました。きっとその期待感を満たしてくれるだろうという感覚を得ることもできました。次はその感覚を体験に変えてレポートできるチャンスを得たい、と強く強く感じさせられた東京ドライブだったのでした。

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Text:嶋田 智之
Photos:安井 宏充(Weekend.)