星野リゾートとのコラボによる『2022 Jeep Hokkaido Lifestyle Session』パート2/特別対談:星野リゾート代表 星野佳路氏とStellantisジャパン代表取締役兼CEO ポンタス・ヘグストロム氏が“体験”をキーワードに語り合う。
北海道の魅力をJeepで体感する星野リゾート×Jeepのウィンターセッション。パート2は、『OMO7旭川 by 星野リゾート』で対面した星野リゾートとJeepの両ブランドトップによる特別対談をお届けする。生粋のスキーヤーであるお二人が、宿泊(ホテル)と移動(クルマ)に共通する“体験”を軸に、今後のコラボレーションプランまで語り合った。
体験一つとっても互いのブランドに類似点は多い
──最初に、互いのブランドイメージを教えてください。
星野氏:日本初のグランピングリゾートとして2015年10月に『星のや富士』を開業する際、お客様を施設内に送迎するための車両として『ジープ ラングラー アンリミテッド(Jeep Wrangler Unlimited)』を選びました。『星のや京都』でも大堰川を舟で渡る形で実践していますが、そうした移動を私たちは“日常から非日常のトランスファー”と呼び、星野リゾートを楽しんでいただくための重要な仕掛けとしています。
なぜ『星のや富士』でJeepだったかというと、まずブランドが個性的で憧れの対象であり、ラングラーにはアドベンチャー、ワイルド、ネイチャーといった印象が強く、グランピングというアウトドア体験のイメージとも一体感があると考えたからです。積載能力やコスト面を優先させれば国産ワンボックスが勝つかもしれませんが、『星のや富士』ではトランスファーの装置としてJeepが最適だったのです。
ヘグストロム氏:『星のや富士』でラングラーを使っていただいたことは、私も早い時点から知っていました。また、星野さんらしいチョイスだと感銘を受けました。星野リゾートは、日本のホテルのイメージを一変させたと認識しています。従来の日本の宿は、寝泊りするだけの限定的な範囲に留まっていたと思います。それを星野リゾートは、宿泊自体を包括的なエクスペリエンスのハブとし、家族や友人と過ごす有意義な時間を体験する場所に改めてくれました。
一方でJeepも、体験が重要な意味を持っています。Jeepにおける体験は、オーナーのコミュニティです。ですから体験というキーワード一つとっても、互いのブランドに類似点は多いですよね。
死ぬときには「もっと滑っておけば」と悔やむに違いない
──お二人ともスキーが趣味と聞いていますが、スキーの魅力とは何でしょうか? 星野さんからうかがいます。
星野氏:よく聞かれる質問ですが、いまだ納得できる解答にたどり着いていない感じです。自分でもよくわかっていないのでしょうね。仮説を立てるとすれば、綺麗な雪面を眺めて「幸せだな」としみじみ思うのは、それを幸福と感じさせる脳内物質が出ているからではないかと。
──スキー以外で同じような脳内物質が出ることはありますか? 仕事はどうですか?
星野氏:仕事なんて比べものになりませんよ!
ヘグストロム氏:なるほど(笑)。
星野氏:私は間もなく62歳になりますが、50歳になったとき残りの人生を考え始めました。自分以前の星野家三代は皆80歳前で他界しているので私の余命も30年として、30年後に死ぬとき何を後悔するのかと自問自答したら、仕事ではなかったのです。なぜなら、それ以前から件数や売上に目標を持ったことがなかったですし、何より仕事はプロセスで成立するものだからです。では、何を悔やむか? もっと滑っておけばよかったと思うに違いない。
ヘグストロム氏:素晴らしい(笑)。
星野氏:そこで数値目標を立てました。年60回滑走。それを実現させるため、コロナ以前は南半球で20日間、北半球で40日間を毎年達成してきました。ところがニュージーランドで出会った日本の方は年200日滑っているとおっしゃっていました。一昨日、北海道で知り合った方も今年で35日目とおっしゃった。これは3桁でなければならないと目標の軌道修正を企てているところです。
──そんな星野さんのあとで、ヘグストロムさんにもスキーの魅力をたずねます。
ヘグストロム氏:スキーの大先輩を上回る話ができる自信はありませんね(笑)。私がスキーを身に着けたのはヨーロッパでしたが、今から35年ほど前、25歳で日本に来たときに行ったゲレンデで新しい世界を知りました。こんなにも日本の雪質が素晴らしいことを私は知らなかった。おそらく当時はヨーロッパ全体でも知れ渡っていなかったと思います。ウィンタースポーツにおいて特に日本がラッキーと感じたのは、雪質以外にも国土がコンパクトで、300㎞も走ればスキーリゾートにたどり着ける点です。私が子どもの頃は家族とスキーをしにスイスへ行くのが恒例でしたが、片道だけで陸路1,500㎞もあるのです。
星野氏:往復3,000㎞。それは大変だ。
ヘグストロム氏:まさにハードワークでした。それを考えれば、いかに日本が恵まれているかわかってもらえると思います。
──そんな状況下でも星野さんはスキーに行きますか?
星野氏:行くでしょうね。昨年は二度ほど東京から北海道までクルマで各ゲレンデを巡る旅をしました。北海道は2周しましたから、距離的にはヘグストロムさんの経験と同じくらいじゃないですか。
──こんな社長をヘグストロムさんはどう思いますか?
ヘグストロム氏:日本には必要ですね。斬新でフレッシュなアイデアを出すためには刺激が不可欠ですから。星野さんを真似て日本のCEOもスキーを楽しめば、より新しい考え方ができるのではないでしょうか。