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2011.08.15

感動を呼ぶネイチャー・ドキュメンタリー、 そのドラマ性の裏に不可欠だった”技術”

話題の映画『ライフ ーいのちをつなぐ物語ー』共同監督が語った撮影の舞台裏

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    天敵のいない南極の極寒の中であえて子育てをするウェッデルアザラシの母と子。©BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMITED MMXI. ALL RIGHTS RESERVED.
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    長崎で進行中のプロジェクト『THE WATER CLIFF(仮)』。3匹のチーターが協力してダチョウ狩りを行うシーンは、今回世界で初めて撮影に成功した15の奇跡のひとつ。
    ©BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMITED MMXI. ALL RIGHTS RESERVED.
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    果敢にカメラを回す製作スタッフ。©BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMITED MMXI. ALL RIGHTS RESERVED.

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アフリカゾウの親子の姿に最新鋭カメラシステム “ヨギカム” で迫ったケニアでのメイキングから。

©BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMMXI. ALL RIGHTS RESERVED.

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階級社会の掟を守り続けるニホンザルの温泉入浴の習慣にもフォーカス。

©BBC EARTH PRODUCTIONS (LIFE) LIMMXI. ALL RIGHTS RESERVED.

sub3_thumb44 感動を呼ぶネイチャー・ドキュメンタリー、 そのドラマ性の裏に不可欠だった"技術"

監督のマイケル・ガントンとマーサ・ホームズ。

、映画界は空前のネイチャー・ドキュメンタリー・ブームだが、その原動力となっているのが世界的な大ヒットとなった『ディープ・ブルー』(04年)、『アース』(07年)などの作品だ。これらを製作しているのは英国公共放送BBCのナチュラル・ヒストリー・ユニット(以下NHU)。NHUが製作するネイチャー・ドキュメンタリー番組は、世界最高峰といわれ世界中で視聴されているが、『ディープ・ブルー』から映画製作に本格的に乗りしたBBCは、BBC earth films を設立。その第一作となるのが2011年9月1日から全国公開になる『ライフ ーいのちをつなぐ物語ー』である。監督は、BBC2の看板シリーズである「Natural World」を手掛け、現在はNHUのクリエイティブ・ディレクターを務めるマイケル・ガントンと、「ワイルドライフスペシャル:ホッキョクグマ」(97年)で英国のアカデミー賞といわれるBAFTA賞を受賞しているマーサ・ホームズ。ふたりともNHUで20年以上に渡ってネイチャー・ドキュメンタリーを手掛けてきたスペシャリストである。

「NHUは、ネイチャー・ドキュメンタリーを志すものにとって最高の仕事場です。50年の歴史によって蓄積されたノウハウがあり、優秀なスタッフも集まってくる。私もマーサもそうですが、ここは勤続年数がとても長い。一度勤めたらそうそうよそへはいかないんですね。そういうワケで、スペシャリストが多いのもクオリティの高いものを作っていける秘訣だと思っています」(ガントン)

ふたりは長年NHUで共同で監督を続けてきたが、これはお互いの資質を補完し合う意味で理想的なあり方だともいう。

「ブリストル大学で動物学、ヨーク大学大学院で魚類の行動研究で博士号を取得しているマーサは、よりテクニカルで映像や質にこだわる。また、長年フィールド・ワークにより情熱を注いできました。つまり私よりさらに動物の専門家なんです。自然界に精通していて、どうそれをカメラに収めたらいか、熟知している。私は、より表現やストーリー性にフォーカスするタイプですね」(ガントン)

『ライフ』は、「いのちをつなぐ物語」というサブタイトルがつけられているように、地球上の24の生物をチョイス。彼らがいかに知恵や特殊能力を駆使して、生き抜くかにフォーカスしたドキュメンタリーである。ロケ地は世界18か国24個所、製作には6年間、3000日がかけられた。

「我々がNHUで培ってきた技術や知識を映画に投影させ、いかにTVとは違った幅広い観客にアピールできるか。長年、TVドキュメンタリー畑で仕事をしてきた私たちにとって、映画づくりは私たちにとってとても大きな挑戦でした」(ガントン)

「TVは、フォーマットが決まっていて、制約も多い。使える機材も限られている。けれど、映画では多くの自由が与えられました。その自由さに最初は戸惑ってしまったのです。実際に、機材も自由に選べて、最終的にはこれまでTV番組では不可能だった難しい撮影にも成功することができました。これは素晴らしいことだし、貴重な経験になりました」(ホームズ)

小さな生物の些細な動きをスローモーションで捉えるウルトラ・ハイスピード・カメラ”、人間の俳優と違ってこちらの意向はおかまいなしに自由に動き回る動物を追いかけるのに最適な”ヨギカム”など最先端の撮影技術がこの映画には採用された。

「ハイビジョン・マクロ・カメラは、北京オリンピックのときにかなり進化したので、今回は、アリのシークエンスで上手く使えました。また、ハイ・スピード・カメラは、かなり前からある技術ですが、我々が今回主に使用したのは”ファントムHDゴールド”と呼ばれているウルトラ・ハイ・スピード・カメラ。ブラジルのフサオマキザル、ベネズエラのオリオスネラ、ケニアのハネジネズミ、メキシコ沖のハショカジキ、メキシコ沖のトビウオ、ベリーズのバシシスク、マダガスカルのカメレオンなどのシーンで使われています」(ガントン)

『ライフ~』は、ドラマ性にこだわった構成がこれまでのネイチャー・ドキュメンタリーと一線を画すところだ。ネイチャー・ドキュメンタリーの分野では、見たことのない “驚愕の映像” がお約束だが、成熟してきた観客にとっては、正直、もうそれだけでは物足りない。”驚き” から “感動” へ。自然界の中で日々起こっているドラマをストーリー仕立てで紹介することで、『ライフ』はフィクションのドラマにも、ネイチャー・ドキュメンタリーにもなかった感動の世界へと誘う。

「この映画では、撮影方法やカメラの選択は、生物のアイレベルで撮影することを基本に考えられました。それによって、観客は彼らと同じ視点でこのドラマを観ることになり、親近感が得られるのです」(ガントン)

「より至近距離の撮影も課題でした。望遠レンズを使えば簡単だけれど、より臨場感を出すためにはやはりできるだけ彼らの近くに寄って撮影することが重要なんです」(ホームズ)

感動を生むのは、技術の裏付けがあってこそ。自然に長年寄り添ってきたスペシャリストだからこその言葉である。

『ライフ ーいのちをつなぐ物語ー』

http://onelifemovie.jp/

2011年9月1日(木)よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

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