Outdoor

2011.09.14

植物の声に耳を傾け、 自然とのつながりをカタチにする

ギフトからアートプロジェクトまで、
自然が息づく空間を作り出すプランツアーティスト

  • main179 植物の声に耳を傾け、 自然とのつながりをカタチにする
    部屋の真ん中には観葉植物「カポック」。
    普通は垂直にまっすぐ整えられるが、木咲さんの心をとらえたのは独特の広がった枝振りをもつもの。
  • main264 植物の声に耳を傾け、 自然とのつながりをカタチにする
    古い鉄瓶にアレンジされた多肉植物。
  • main357 植物の声に耳を傾け、 自然とのつながりをカタチにする
    木咲さんが手がけた「家プロジェクト」(岡山市犬島)のI邸の庭。
    柳幸典氏のアートワーク、妹島和代氏による建築との調和という難題にチャレンジした。

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自然と近しい存在でいたい、と木咲さんは話す。

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木咲さんのお気に入りの本が並ぶ本棚。そこには『みどりのゆび』も。

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植物を置く場所や贈られる人にどの植物の性格や波長が似合うのかを考えながら作っていく。

『みどりのゆび』という童話がある。どこにでも植物を育てることができる特別な指を持った男の子が、その不思議な力で大人の社会に奇跡を起こし、みんなに豊かな安らぎをもたらすお話。東京・五反田でフラワーショップ「明るい部屋」を主宰する木咲豊さんも、そんなみどりのゆびの持ち主ではないかと思う。

個人のギフトはもちろん、2年前に復活した谷中「カヤバ珈琲」をはじめとした店舗の植栽から、昨年公開になった「犬島 家プロジェクト」の庭作りまで、様々なシーンの植栽を手がける木咲さん。プランツアーティストという肩書きで紹介されることが多いが、もらった名刺を見ると、そこには名前だけが印字されていた。

「僕自身は特に肩書きにあまりこだわりはありません。アーティストなんて思っていないです。僕は何もしていないですから」

その言葉は決して謙遜ではない。彼にとって「アーティスト」は植物自身なのだ。「いろんな意味で、自然には勝てないと思うんです。だけど、ひとたび人が関わると、自然本来の姿なんてあり得ない。だから、人も自然の一部であることが実感できるような関わり方をしたいと思うんです。人が自然に関わることで、自然も変化するし、人も変化する。そしてもちろん、植物も生き物ですから、生きているがゆえに変化します。そこに植物の”人生”というか、ストーリーがある。それを引き出してあげるお手伝いをしてあげられたらいいなと思いながら、器を選んだり、アレンジをしたりしているんです」
そのプロセスは、テクニックではなく「対話」なのだという。

「植物にもそれぞれ育ってきた環境があって、その姿は千差万別です。たとえば長く生きていれば肌がキズやコブでゴツゴツしてきたり、枝が曲がったりします。それは植物自身にとってはストレスの現れなのかもしれない。でもそれを逆手にとって個性にしてしまう。その曲がった枝を、どこにアレンジしたら魅力的に見えるか、どこに植えたらカッコよくみえるかを考えてあげるんです」

木咲さんが作る空間から、どこか「植物に身を委ねている」ような印象と心地よさを感じるのは、そういった「同じ地球に存在する対等な生き物」としての植物に対するリスペクトともいえる思いゆえだろう。

しかし、生き物であるからこその難しさもある。それは「変化」するということ。「変化」は困難でもあり、また同時に魅力でもある。昨年、木咲さんが手がけた「家プロジェクト」(岡山市犬島)のI邸の庭では、コラボレーションした柳幸典氏のアートワークや、妹島和代氏による建築との調和という難題にチャレンジした。「植物で主張しすぎてもいけないし、瀬戸内の環境で草木の生育サイクルがどうなるのかも考えて庭を作らねばならない。挑戦でした」

そのときも、木咲さんはひたすら植物とコミュニケーションをとったという。日々の変化、朝と夕方ですら違った表情を見せる庭をずっと見守り、植物の声に耳を傾けた。基本的には自然のサイクルに委ねるというコンセプトの庭だが、花が付き過ぎて全体のバランスを崩しそうなときは、剪定したり肥料を調整して対処。公開から1年経った今も、木咲さんは2ヶ月に1度は足を運びメンテナンスを行っているという。「いまでは犬島が第2の故郷のようです(笑)」

最後に、これから挑戦してみたいことについて訊ねると……。

「自分が出会った植物を必要としている人に、植物が発している”光”や、内に秘めているものを届けていきたい。そして、その植物の近くにいる人が、それを感じ取ってくれるといいなと思います」

明るい部屋

http://www.akaruiheya.com/

犬島 家プロジェクト

http://benesse-artsite.jp/art/inujima-arthouse.html

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