新世代のギターヒーローへ 再会を果たしたラングラー乗りのギタリストAssHが示した新たな到達点
YOASOBIを始めとするアーティストのツアーサポートはさらに拡張。なおかつ独自の視点で綴られた自著を初出版。さらにプライベートでも大きな変化が!?RealStyleでは2度目の登場となるギタリストのAssHに、前回から1年半の間で起きた進化をたずねた。
やっぱり最新型はアガる
江の島の脇に両裾まで見渡せる富士山。東京のど真ん中で落ち合った1年半前(前回記事はこちら)とは、まず風景が違っていた。
「こっちにいても、ここまで見事な富士山が望める日は本当に少ないんですよ。今日はラッキーですね」
前回と違っていなかったのは、手に入れて2年が経ったJK、『ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ(Jeep Wrangler Unlimited Sahara)』の白さと、日差しがまぶしそうに話すAssHの穏やかな表情だ。そう言えば、静かな語り口の人だった。“新世代のギターヒーロー”という、字面だけなら派手な印象を受ける目標と、当人が醸す落ち着いた雰囲気のギャップも変わっていない。ただ、どことなく佇まいに深みが増したようにも見えた。
それが気のせいではなく、あるいは彼が言ったラッキーな天候による一時的なものではないことは、後にやんわりと、そして深々と理解するのである。
久しぶりの再会に向けて、ある仕掛けを用意した。20歳の頃からの憧れを叶えてJKラングラーのオーナーになった彼に試乗してもらおうと、最新の『ジープ ラングラー ルビコン4xe (Jeep Wrangler Rubicon 4xe)』を連れ出した。新旧2台が並ぶ姿をじっくり眺めた後、左ハンドルにも戸惑わず走り出した横顔が瞬く間にほころんでいくのを見て、この試みも悪くなかったと安堵した。
「ラングラーを探していたときと、JKの車検時にも代車のJLに乗ったのですが、乗り心地がめちゃくちゃ滑らかですね。あらゆる面が新しいのに、ラングラーの伝統を一切削らず仕上げた技は、マーフィー・ラボを彷彿とさせます」
「マーフィー・ラボ」とは、世界的ギターブランドのギブソンが誇るエイジングに特化した部門で、希少性が高く入手困難なヴィンテージ・ギターの風合いや塗装の剥がれなどを最新テクノロジーで忠実に再現した新製品を世に送り出している。
「特にデジタルの恩恵を随所に感じます。モニターの解像度も高くて、綺麗で見やすい。ドライブモードをELECTRICに切り替えてみると、より一層滑らかで静かな走りになりますね。やっぱり最新型はアガるなあ。4xe、すごくいいです」
乗れば欲しくなる?
「そうですね。それが試乗の悩みどころですね」
すべてにおいて良い方向に作用する確信
ギターを弾き始めたのは17歳。バンドを経て20歳でソロアーティスト/サポートギタリストになることを決意。アメリカで武者修行を敢行し、2010年代後半から本格的にプロとして活動。ひときわ注目を集めたのは、2021年のYOASOBIのライブツアーメンバーとしての活躍。それ以降、サポートワークはAIやEXILE THE SECONDなど数多くのアーティストのツアー参加などによって拡大。さらに、高校生で手に入れたギブソンのES-335というギターを今も大事に使っているというAssHの基本プロフィールは、2022年9月に掲載された初回の記事で伝えた。
「あのときはAIさんのツアー真っ最中で、そのツアーに参加するためギブソン・レスポールを買った話もしましたよね。2022年は4本のツアーが同時進行して、本当に忙しかったです。どのツアーも大御所ミュージシャンばかりで、一人だけ若造という状況の中、いろいろ強くなったし、けっこう変わりました。レベルの違うところに行けた感覚があります」
ギタリストAssHにおけるこの1年半は、後に振り返ると大きな節目という他にないような大転換がいくつもあった。「レベルの違うところ」というのは、YOASOBIを通じてアリーナツアーや大型フェスを人生で初めて体験したことも含まれている。
「最大規模は8万人。それだけの大人数を前にしたら、好きなマンガの『キングダム』を思い出しました。あの世界ならこれだけの敵を迎え撃つのかと、すごく興奮しちゃって」
その一方、2022年8月31日に自身の4人編成バンド『Silver Kidd』がデビュー。翌2023年11月3日には全米デビューを果たした。一人のギタリストとしてかつてないほど多様で濃密な音楽環境を過ごす中で、プライベートでも大きな変化があった。
2023年7月17日付けの『X』で入籍を発表。30歳になったことも同時に伝えていたから、年齢的な節目も決意を支えたのかもしれない。それにしても、前回会ったときにはそんな話はまるで聞かなかったと思うのだが。
「東京でお会いしたときには、確かにそんな話はなかったんです。そもそも結婚も、35歳くらいのAssHに任せる気でいましたから。直感的でしたね。短い交際期間で結婚を決めたのは。一人ではなくなることで、たとえばギターを弾く時間が短くなるんじゃないかとか、男としてしっかり家庭を守れるのかとか、いろいろ考えました。けれど何事もやってみないとわからないです。さほど時間が経っていませんが、結婚で得た責任感と家族がいる安心感は、すべてにおいて良い方向に作用する確信があります。生まれ育った東京から湘南に移り住んだのも直感でした。ラングラーでたまたま訪れて、あまりの雰囲気の良さにここしかないと思って。ありのままでいられる場所なんですよね」
人として充実している感がありありと伝わってきた。富士山を眺めるだけの姿に深みが増したように見えたのは、それが理由だったのかもしれない。
重大トピックはまだある。2023年11月、リットーミュージックから『ギターを始めた君に必要なこと 「表現者」として生きるための感性』を出版。以前から演奏動画を配信しているのでレッスン主体かと思いきや、ほぼ全篇に渡りAssHの人生観が綴られているのである。音楽関連でこんな本を出せる潔さに驚いた。
「出版社の方が僕のオンラインサロンのメンバーだったことが始まりでした。ギタリストとして需要が高いのは教則本なんですけれど、そのテンプレートにハマるのが嫌だったというか。それよりも矛盾を覚えたのは、どう伝えても僕の音は再現できないことでした。音には人が出ます。だから教則本通りに弾いて僕の音を出そうとするよりも、それぞれみんなの音を出してほしい。その個性に誇りを持ってほしい。そんな思いを一度まとめてみたくて、文字を読んでもらう本にしました」
新たな武器を手に、さらなる幸福のステージへ
ギタリストとしてのレベルアップ。結婚による人生のステージチェンジ。そして出版という新たなチャレンジ。そうした機会を得られるのは、何よりも人のおかげだという。謙虚な言動は、取り巻く環境が大きく変わっても違いのない、前回と同じAssHのままだった。
「20歳の頃は全財産30円で路上ライブをやって、明日がどうなるかわからなくてもプロになる自覚だけで突き進んで……。振り返れば20代は、ひたすら自分からアクションを起こす10年だった気がします。ただ、どれも自分が選んだものだった。ラングラーもそうです。憧れのクルマに乗れるギタリスト像を示したいところもあってラングラーを買ったら、こうしてインタビューをしてもらえることになった。とにかく自分から動き出し、それが他者に刺さるものであれば誰かが手を差し伸べてくれる。それを、ある意味では体現できたことで30歳を迎えられた気がしています。すべてに感謝ですね」
そんな彼に新たな武器が携えられた。イメージカラーの白をまとった2本のギブソン・レスポール。素人目には差異を見出すのは難しいが、1本にはP-90、もう1本にはハムバッカーという異なるピックアップが搭載され、それぞれが独特のサウンドを放つ。いずれもブランドの最高峰に位置するギブソン・カスタムショップが企画・製作。先述のマーフィー・ラボのアルティザン(職人)が科学的検証に基づく最新技術を駆使したエイジングを施した、ギブソンがAssHの活動をサポートするためにつくったオリジナルモデルだ。
「とある現場でギブソンのカスタムショップ担当の方から、AssH の新しいギターだよと手渡されて、本当にびっくりしました。これも長く弾けるならと頑張って買ったES-335がつないでくれた縁ですね。AIさんのサポートをするタイミングで買ったレスポールもそうだけど、今のギブソンは凄いですよ。この白い2本も細かい調整を先送りですぐにステージで使えましたから。新しい武器を手に、今後はソロ活動にも力を入れていきたいです」
手元に来て間もないはずの白いレスポールがよく似合っていた。それはおそらく、音楽好きが憧れるギターヒーローにとって不可欠な要素なのだろう。さらに彼は、直感を信じ人の支えに感謝する生き様を、音に留まらず言葉でも表現できる能力を自著で披露した。それがこの1年半のもっとも大きな進化だとしたら、目の前にいるAssHはすでに新世代のギターヒーローに到達しているのかもしれない――。
などという昂る推察を伝えても、彼は相変わらず落ち着いた雰囲気のまま、こんなことを言うのである。
「湘南に移り住み、大事な人と過ごす時間が増えたら、ますます“お金ノットイコール幸せ”になりました。この感覚は持ち物にも通じます。自分で選んだより良い物を少なく持って死ぬほど使うほうがいい。ジープも最新型は素晴らしいけれど、今は自分のラングラーを限界まで乗ってみたい。JLからJKに戻ると、やっぱりホッとしますから」
今回使用したクルマ
『ジープ ラングラー ルビコン4xe (Jeep Wrangler Rubicon 4xe)』
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ジープ フリーコール 0120-712-812(9:00~21:00、無休)
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Text:田村 十七男
Photos:Masato Yokoyama