Made in U.S.A.のスリーピングバッグ、ウエスタンマウンテニアリングを通じて知るアメリカンプロダクトのスピリット

1970年以来、カリフォルニア州サンノゼで最高級スリーピングバッグをつくり続けるウエスタンマウンテニアリング。世界屈指のアメリカンブランドたるJeepにも受け継がれているMade in U.S.A.のものづくりスピリットに、アウトドアファン垂涎のブランドを通じて触れてみた。

1970年以来のMade in U.S.A.

たとえば、Jeepや『ラングラー(Wrangler)』は知っていても、よりオフロード機能を充実させたルビコンまでは聞き及んでいない場合があるように、それぞれのジャンル/フィールドには、知る人ぞ知る孤高のプロダクトが控えている。スリーピングバッグで言えば、ウエスタンマウンテニアリングがそれに当たるだろう。

アメリカ西海岸のカリフォルニア州サンノゼで暮らしていた二人の若き登山家が、“自分たちが欲しい、妥協なき最高品質のスリーピングバッグ”をつくるため、1970年の創立から今日までMade in U.S.A.を堅守しているのがウエスタンマウンテニアリングだ。

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▲写真協力:株式会社ロストアロー

本題に入る前に、このブランドを語るのにふさわしい人物を紹介する。『OSPREY』や『Black Diamond』など世界各国のアウトドアブランド製品を輸入販売する株式会社ロストアローでウエスタンマウンテニアリングを担当している山本哲也氏だ。言うまでもなく業務の一環で、自社工場を持つサンノゼと直接コンタクトを取る機会は日本の誰よりも多いが、語り部としてのふさわしさはそれだけに留まらない。

山本氏は、高校卒業後に6年間のアメリカ留学生活を過ごす中で、元来のアウトドア趣味を彼の地で謳歌した人物なのである。そしてまた当人曰く「48歳という世代的にも」様々なアメリカンプロダクトに興味を持って留学に臨んだという。メーカーの人間ではないという理由でプロフィール撮影を固辞されたが、今もっともハマっている趣味がサーフィンというだけあって、年齢を感じさせない爽快な印象の人物であることは伝えておきたい。

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ブランドに反映されるアメリカの広さ

アウトドアを完全な趣味としていた頃の山本氏にとってウエスタンマウンテニアリングは、高級かつ高価ゆえ自分には手の届かないブランドという印象があった。ちなみに、使用温度域マイナス40度とされている厳冬地用現行モデル『バイソンゴアウィンドストッパー』の日本価格は税込145,420円である。

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▲『バイソンゴアウィンドストッパー』¥ 145,420(税込)(写真協力:株式会社ロストアロー)

「私がウエスタンマウンテニアリングに直に触れたのは、ロストアローがこのブランドの輸入代理を始めた2010年でした。そこで感じたのは、以前当社で扱っていたフェザードフレンズとのコンセプトの違いでした」

1972年にシアトルで創業した『フェザードフレンズ』は、ウエスタンマウンテニアリングと同じくスリービングバッグとクロージングを提供するブランドだ。
「フェザードフレンズは、内部から押し返されるくらいダウンをぎっしり詰め込むのが特徴で、ウエスタンマウンテニアリングはそこまでダウンを詰めずとも、優れた生地との融合で機能性を高めようとする設計でした」

先に挙げた厳冬地モデルに使用されるゴアウィンドストッパーは、湿気や結露から内部のダウンを守る、ウエスタンマウンテニアリングの特徴的な生地でもある。

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▲優れた耐水性を持ち、結露に強く高水準の保温性が持続する「ゴア®ウィンドストッパー®」(写真協力:株式会社ロストアロー)

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▲ロック機能付きスライダーを2つ装備したコイルジッパーは噛んでしまった時にも生地を傷めにくい。

「ただしこの違いには、地政学的な意味合いが含まれていると思いました。フェザードフレンズのある太平洋岸北西部のシアトルは、ゴールドラッシュ時代にアラスカへ向かう人たちが防寒具を仕入れた街なので、歴史的に分厚い服が求められてきたようです。対するサンノゼは、東に行けばクライマーやハイカーの聖地として有名なヨセミテ国立公園がありますが、この一帯は比較的標高が低く、アラスカほどの防寒は求められません。ですから各々の違いは単純な優劣ではなく、その土地の人々が希望するものをつくってきたという実直さの表れと言っていいでしょう。両者のコンセプトに触れて、改めてアメリカの広さを実感しました」

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▲写真協力:株式会社ロストアロー

30年以上も持っているスリーピングバッグがいくつもある

10年を越える担当期間の中でウエスタンマウンテニアリングの変化をたずねたら、苦笑が返ってきた。理由はこうだ。その決して短くない時間の中で、スリーピングバッグで10種程度。ウェア類に至っては片手で数えられるほどしか新製品をつくっていないから。かと思えば創立50周年の2020年には、いきなり2種のスリーピングバッグを発表したりもするらしい。

「ある時、なぜ新製品が少ないかを現地の責任者にたずねたら、すでに完成しているし流行り廃りも関係ないから、これでいいのだと。そうは言いつつ、同じ型でも細部のアップデートは常に行っているし、より良い生地を世界中で求め続けているんです。産地名は表記されませんが、日本製の良質な生地も使われています」

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▲2020年にウエスタンマウンテニアリングは創業50周年を迎えた。その際の特別限定仕様のタグ。

山本氏がもっとも感動したのは、撥水ダウンの使用に関する回答を耳にしたときだったという。撥水ダウンとは、水に濡れると保温性能を低下させるダウンに文字通りの撥水加工を施すもの。多くのメーカーが採用しているが、ウエスタンマウンテニアリングには一向にその気配がないそうだ。

「ダウンとは水鳥の羽で、そもそも撥水性が高いのだから、ウエスタンマウンテニアリングで使っている加工の確かな東ヨーロッパ産ダウンであれば問題はない。何よりウエスタンマウンテニアリングには、30年以上も持っているスリーピングバッグがいくつもある。なのにここ5年、10年の技術を導入する必要があるのか? これまたそうは言いつつも撥水ダウンのテストはしているのですが、この話を聞いてさらに“こんな凄いブランドはない”と驚きました」

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▲ウエスタンマウンテニアリングは東ヨーロッパに独自の仕入先を持ち、親鳥を飼育する農場から羽毛を調達している。(写真協力:株式会社ロストアロー)

エピソードをもう一つ。ダウン製品には国際基準によるスペック表記がなされるが、ウエスタンマウンテニアリングはスリーピングバッグにロフトという数値を明記している。いわばスリーピングバッグの全高で、数値が高いほど使用温度域が低くなり、ざっくり言えば暖かい。ウエスタンマウンテニアリングを一度でも試した者は、稀に見るロフトの高さを理由に他を使えなくなると語るそうだ。

「他社がロフトを表記していないので、この数値による比較はできません。ただ、ウエスタンマウンテニアリングはロフトを重視しており、それを愛好者の方々が口コミで広めてくれる。ありがたいことですね」

それはその通りだろう。しかし比較できない数値を提供する愛しいまでの愚直な姿勢に、今度はこちらが苦笑を浮かべてしまった。

次ページ:【ウエスタンマウンテニアリングの変わらぬ信念とは】

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