人気のコーヒースタンド紹介!
代々木公園沿いのLittle Nap COFFEE STANDが今話題!
オーナーバリスタの濱田大介さんにインタビュー。
コーヒーへのこだわりと魅力、そして車とコーヒーとの意外な繋がりを語る。
いまコーヒースタンドが急速に増えている。カフェやバールよりコンパクトながら、気軽に立ち寄れて、さっとコーヒーを飲める、またはテイクアウトできる場所。バリスタにとっては、コーヒーに集中できるアトリエのような空間だ。
代々木公園近くの閑静な住宅街に佇むLittle Nap COFFEE STANDは、2011年2月にオープンして以来、地域で暮らす人々や通勤途中の人々がふらっと立ち寄り、毎日多くの利用者で賑わっている。店内の窓越しに外の風景を眺めていると、コーヒーをテイクアウトして、車で目的地に向かう人の姿も珍しくない。コーヒーカルチャーを通じて街に新しい風景をつくり出す濱田大介氏(Little Nap COFFEE STANDオーナーバリスタ)に、コーヒーへの思い入れと魅力、そして車とコーヒーとの意外な接点を語っていただいた。
──Little Nap COFFEE STAND(以下リトルナップ)は山手通りから一本入った路地にありますけど、大小たくさんの公園がある地域だから、車で来店するお客さんも少なくなさそうですね。
基本的にコーヒーをパッとテイクアウトするドライバーのお客さんは多いですよ。やっぱり公園の利用者が多いから、公園の駐車場に車を止めて、散歩しながらコーヒーを買いに来たり、近所の人たちが帰りしなにフラッと立ち寄ったり、といった感じかな。
──ドライバーのお客さんには、どんなコーヒーをオススメしたいですか?
エスプレッソをお湯で割るアメリカーノという飲み物があって、お湯の代わりにドリップされたコーヒーで割る飲み物もあるんだけど、エスプレッソとドリップ、両方の旨味を感じられるし、少しカフェインがプラスされてパンチもある。ニューヨークなんかではそういったメニューを「レッドアイ」というんですね。要は、眠いけど仕事しなきゃいけない赤目のビジネスマンを覚醒させるのに、プレスコーヒーで落としたコーヒーにエスプレッソをワンショットしたものを出すんです。僕の場合は、ドリップで落としたコーヒーをエスプレッソで割って、それを「ジョイント」と呼んでいます。
──お店のメニューにはないコーヒーですよね。
そうですね。でもお客さんに「こういう感じのものを飲みたいんだけど」「カフェマキアートを、ジブラルタルをくれ」と言われたら、もちろん作りますよ。バリスタはバーテンダーと一緒なんです。コーヒーカルチャーを理解しているお客さんはメニューにないものをオーダーするし、僕としてはメニューにないものを作るのはウェルカムだけど、まずはウチの味を知ってもらいたい。それがあった上でのカスタマイズなんだよね。
車を運転している時間はすごくクリエイティブ
──ここ最近、ライフスタイルとしてコーヒーが多様化していますが、濱田さんにはそのムーブメントはどう映りますか?
より多くの人たちが利用できるようになって、コーヒーという一点に対する集中が見直されてきたし、バリスタやロースターがお客さんに味を合わせるというよりも、自分たちが出したい味を表現できるようになってきたというか。コマーシャル的なものというよりも、お店側がどうしたいのかという側面がすごく強くなった気がしますね。でも、流行りだけでは終わらせたくない。やっぱり「どういう人たちが表現したいのか」だから、いわゆるカルチャーになってほしい。僕の場合は、2011年のオープン当初から掲げている「公園の売店」というスタンスは変わっていないし、利用する人たちが作り手側のアイデンティティに共感できるかというのも面白いよね。
──日本国内だけでなく、世界中からリトルナップを訪れるお客さんも多いそうですね。
びっくりしますよね、どういうわけか情報を知るためのハブがあるらしく。ソーシャルネットワークから始まることもあるだろうけど、それこそエースホテル代表のアレックス・カルダーウッド、ストーンローゼスのイアン・ブラウンも来てくれて、みんなコーヒーが好きなんですよ。でも、美味しいコーヒーだけを求めているのではなくて、「誰がどうやって淹れているのか」という哲学みたいなものが重要になっている気がする。一つのものを大事に育てながら作ることの重要性は共通というか、時代の分岐点にもなっているんじゃないかな。食べるもの一つにしても、生産者や生産地に焦点が当たるようになったでしょう?だからインディペンデントに近くなったというか、大きな資本の中で出来上がるものだけじゃ満足できなくなっている。
──リトルナップの分店をVACANTでオープンしたり、BridgeやCOFFEE in the HOUSEといった店舗のプロデュースも手掛けていますが、濱田さんはどんなシーンでコーヒーやお店作りのアイデアを閃くのでしょうか?(※COFFEE in the HOUSEは現在閉店しました。)
実は結構、車の中が多いんですよ。2011年に店をオープンするまでの6年間はグランドチェロキーに乗っていたんだけど、買った当時は故郷の富山にいて、富山〜東京間の往復で車の利用が多かった。実は、僕は電車が苦手というのもあって、自分にとって車を運転している時間はすごくクリエイティブで、色々なことのイマジネーションを膨らませるために重要なんです。
エスプレッソマシーンと車は距離感がすごく近い
──コーヒーと車に接点があるとすれば、どんなものが挙げられますか?
僕はエスプレッソマシーンと車にものすごく近いものを感じていて。自分に合わせた車にカスタマイズするように、エスプレッソマシーンもそういったあしらえをするんですよ。マシーンにチャンネルを合わせるというよりも、自分の使い勝手にギアやハンドルを調整するというか。そういう意味では、車とは距離感がすごく近いんだよね。いま思い出したんだけど、エスプレッソマシーンのメンテナンス用に使っている工具はクライスラーのものだった(笑)。
──メンテナンスはコンスタントにやるのですか?
もちろん。エスプレッソマシーンはバリスタにとって要だから。エスプレッソマシーンはイタリア製が多いけど、ウチのはアメリカ製でハンドメイドなんです。一般的なのはコマーシャルマシンという安定して使えるタイプのものだけど、こいつは豆の特質やその日のコンディションに合わせて、コーヒーをカスタマイズできるんですよ。アナログとデジタルの要素が上手く融合している。でも逆に言うと、使いこなせないと暴れ馬になってしまう。いわゆる、公道をF1で走るようなものですね。味のバランスを調整できるかどうかがアナログとデジタルの大きな違いであって、車でいう1速2速みたいなギアチェンジも付いていて、エンジンも二つ付いているから、抽出する温度の調整が可能だし、コンピューターで抽出のタイミングを設定することも出来るんだけど、こいつは基本的に運転手というかバリスタが機械に合わせて抽出できる。天候、気温、湿度、全てに左右するし、その日に作った豆の調整によっても味は変わってくるから。
──自分がイメージしたものに辿り着くまでには、何度も試行錯誤を重ねるのでしょうね。
だから面白いんじゃない?誰でも簡単に美味しいコーヒーを作れるのであれば、それにこしたことはないんだろうけど、そうじゃないからこそ魅了される何かがあるのだろうし。エスプレッソマシーンも工具もずっと使っていると愛着が湧くし、大事にしようとする気持ちが出てくるでしょう?磨いたりもするしね。だから、車とすごく近い距離感があるんですよ。
今日も美味しいコーヒーと、その背景にあるクラフトマンシップに触れようと、国内外から多くの人々がLittleNap COFFEE STANDを訪ねている。コーヒーの背景を知る濱田氏が淹れるコーヒーは、ドライブの時間を豊かに彩るエッセンスとなることだろう。コーヒースタンドは、ドライブの新しいワンシーンもつくり出す。