Food

2012.06.06

手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン

身もココロも振り回されることすら
気持ちよく感じてしまうアウトドアの聖地

  • main158 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン
    アンチョビのゆでたまごのタルティーヌ(¥1,400)。
    アンチョビの塩味と酸味の効いたケッパーがアクセントに。
  • main243 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン
    床素材を壁に使用するなど、ユニークな空間遣い。フランスの60年代の書類棚がほどよい存在感。
    椅子はマーガレット・ハウエル(右)と北欧の作家もの(手前)を使用。
  • main339 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン
    併設のTARUI BAKERY。
    味わい深いハード系のパンから、ブラウニーやバナナケーキ、バタークッキーなどのスイーツもおいしい。
  • main422 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン
    テラス席から見た、コーヒースタンドとレストラン。グリーンと木目、黒がベースのリラックスできる空間だ。

sub1_thumb43 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン

クラシックな鉄鍋を使ったマウンテンディッシュ TURK鴨(もも)(¥2,300)。鴨のコンフィに野菜のトマト煮込みを添えている。野菜のローストもシャキシャキ。グラスワインは¥650から。

sub2_thumb40 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン

タルイベーカリーのパン。黒い陶器のバターケースは日本の作家さんにお願いした特注品。欲しがる客が後を絶たないのだそう。

sub3_thumb36 手作りのラフさが居心地のよさに新時代のベーカリーレストラン

LIFE Son店主の相場さん(左)と、タルイベーカリーの樽井さん(右)。LIFEがルヴァンにパンをお願いしていた関係で知り合うようになったのだとか。

2012年でオープンから10年目という、地元に愛されてきた代々木八幡のカフェ「LIFE」。その二号店が同じ代々木エリア・参宮橋にオープンした。その名も「LIFE Son」。レストランにベーカリーが併設されており、コーヒースタンドは夜にはワインスタンドに変身と、4通りの楽しみ方ができる。

「LIFEはあくまでもカフェだったけど、今回はレストラン。料理にもっと向き合いたいと思ったのと、今まで自分がLIFEを通して体験したことを活かした空間を作りたかったんです」とオーナーの相場正一郎さん。

相場さんはその昔、伊・トスカーナのリストランテで修行していた経験を持つ。「父が山登りが好きで、小さい頃からよく連れて行ってもらいました。トスカーナにも遊びに来て、アルプス山脈を一緒に登ったりして。そのときに山小屋のレストランで出てきた料理というのが、シンプルな肉料理とパンだった。楽しくて幸せな山小屋のワンシーンと一緒に、記憶が鮮烈に残っているんです。その時の“山料理”のイメージがこの店のベースとなっています」。

また驚かされるのは、一つひとつの素材に対するシェフの想いの強さ。忙しい合間をぬって、日本各地の生産者の元を訪ね歩いたり、魚の目利きに至っては、再オープン前に魚市場で働きながら勉強する徹底ぶりだ。

クラシックな製法で作られるドイツのターク社のフライパンでサーブされる鴨や豚、牛肉、仔羊のローストは、素材のよさを味わう、素朴だがガツンと脳裏に響く料理。LIFEの人気メニューである、イノシシのラグーソースやトマトとローズマリーを使ったパスタ類に加え、アーモンドやパンをアクセントにした特製ラザニアがメニューに並ぶ。そして、隣の「タルイ・ベーカリー」の焼きたてのパンが食べられるという最高の贅沢。天然酵母の田舎パンで知られる「ルヴァン」で8年修行した樽井勇人さんの店とあって、ハード系のバゲットやカンパーニュといった、味わい深いパンが店内に並び、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。そんな絶品パンを使った、数種類のタルティーヌやリボリータ(パンのスープ)、アクアコッタ(パンのトマトグラタン)などの、“ブレッド・デッシュ”が充実しているのも、LIFE Sonならでは。「日本ではあまり浸透してないですが、タルティーヌはヨーロッパではとてもポピュラー。生ハムとモッツァレラ、アンチョビやゆで卵、イチジクとリコッタチーズがカンパーニュに載っているスタイルですが、ビールやワインにもぴったりなんです」と相場さん。

内装の基本ベースやコーヒースタンドなどのアイデアは、カフェの「Tas Yard」 や「BE A GOOD NEIGHBOR Coffee kiosk」という話題の店を手がける、ランドスケーププロダクツの中原慎一郎さんに依頼。床素材をそのまま壁に使用したり、壁をペイントしたり、板を貼ったりなど、店作りにはスタッフ総出で参加したという。「プロにお願いするとすごくきれいに仕上げてくれるんですけど、それは僕たちのスタイルじゃなかった。自分たちでできることはやって、ちょっと失敗しちゃってもいいじゃんって」。

テーブルは元LIFEスタッフである家具職人にお願いし、陶器のバターケースや料理のプレートなども納得のいくものをカスタムメイドした。相場さんを中心に、LIFEを愛する人たちの思いが集結した場所。だからこそ、スタイリッシュでありながらも、人の温かみを感じさせるアットホームな居心地のよさなのだ。

コーヒーを飲みにくるのもよし、朝食用のパンを買いにくるもよし、気のおける仲間とランチやディナーを食べにくるのもいい。それぞれが飾らず、自由に楽しめる空間。お店のメイキングフィルムの上映会とアイリッシュ音楽のイベントを企画するなど、今後、カルチャー的なイベントも発信していきたいと相場さん。代々木エリア住民でなくても、通いたくなる。

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