合羽橋屈指のモダンな料理道具店で ニッポンの良品探し
今、エクスプローラー魂のある男たちが集う、東東京で
新たな発見にワクワクさせられる合羽橋の老舗を発見
釣りに欠かせない出刃の品揃えも圧巻。釜浅商店で取り扱う包丁は、多くの携わっているすべての職人に敬意を表し無名品。経験豊かな案内人が、最適な包丁選びをサポートしてくれる。包丁:4寸 ¥6,300~ 5寸 ¥7,600~
合羽橋の料理道具専門店とは思えぬ贅沢な空間ディスプレイ。包丁は一面がまな板になったカウンターでじっくりと手にとって吟味できる。
中華鍋でも有名な神奈川・横浜の山田工業所の打ち出しのフライパンは、独特の凹凸も美しい。フライパン:厚さ2.3mm、直径18cm ¥2,430~ :厚さ3.2mm、直径18cm ¥3,940~
四代目の熊澤大介さん。インテリア業界での経験を経て、家業である釜浅商店入社。2004年より代表取締役に。熊澤さんはじめすべてのスタッフが、客と道具の幸福な出会いの橋渡しをする料理道具の案内人。そんな温かい触れ合いも、下町の買い物ならではの楽しみ。
今、東京の東側に新しい風が吹き始めている。ぽつりぽつりと増え始めたギャラリー、デザイナーたちが集うオフィス群など、今や最先端のカルチャー発信地として注目を集めるのが、日本橋から東に広がるいわゆる「下町」エリア。”素人お断り”的な少々閉鎖的なイメージのあった合羽橋商店街もまた例外ではない。今やプロの料理人だけでなく、一般人や観光客も多く足を運ぶ、料理雑貨の一大ワンダーランド。ここは都会のトレジャーハンティングには、もってこいのスポットなのだ。
その料理雑貨の問屋が軒を連ねる合羽橋にあって、モノトーンのグラフィカルなのれんがはためき、どこかモダンな匂いと洗練を醸す佇まいがひと際目を引く店舗、それがこの春大規模なリニューアルを図った「釜浅商店」。通常、合羽橋の料理道具専門店いえば、商品がこれでもかと所狭しと置かれ、人がすれ違うのもやっとというのが通例だけれど、ここは調理器具がまるでインテリアのショールームのようにゆったり整然とディスプレイされ、それがなんとも美しい。創業は明治41年、100年以上の歴史を誇る、この道具街を牽引してきた老舗中の老舗。店の四代目・熊澤大介氏はこう語る。「昔は、合羽橋でしか手に入らないものがたくさんありました。でも、時代は変わり、今では地方のホームセンターやインターネットで、業務用のレアなアイテムも簡単に手に入ってしまう。そんな中で、合羽橋も変わっていかなくてはと考えました。もちろん私たちのメインのお客さんはプロの料理人ですが、一般の人もぜひ足を運んでほしい。来て、見て、手にとって、その先に広がる奥深い道具の世界に触れてほしいんです」
そんな釜浅商店では、男心をくすぐるこだわりの調理器具やアウトドアにももってこいのアイテムも多く揃う。1000点を上回る品揃えを誇る大阪・堺の包丁や、岩手・盛岡の南部鉄器、神奈川・横浜の打ち出しのフライパンなど、どれも道具を知り尽くした店の審美眼で選び抜かれた逸品ばかり。職人の丹念な仕事によって生み出されるこれらの道具は、使い勝手や旨さを引き出す構造を備えた機能美はもちろん、何よりその造形美が見事だ。「丁寧に仕上げられた南部鉄器は、鉄分補給に優れていたり、まろやかで美味しいお湯を沸かせたり、ゆっくり火を伝えて料理を美味しくしたり。打ち出しのフライパンはその凹凸が油馴染みをよくしたり……。美しいものを作ろうとして出来たのではなく、機能を追求して行ったら美しいものが出来上がった。ここに来てもらえれば “本物は美しい”ということが分かっていただけると思います。それからこれらのアイテムは用途も幅広い。特に南部鉄器は、ご飯を炊いたり、シチューを煮たり、アクアパッツァを作ったり、その汎用性の高さも魅力です」
もちろん、一生ものの道具は手入れも必要。「鉄器はさびてしまうので水気は残さないこと。それから鉄器もフライパンも洗剤を使わず、油を馴染ませ皮膜をつくってあげることが大切です。手間はかかりますが、その分愛着が沸くし、道具は使うほどにその愛情に応えてくれる。道具は使い捨てるものではなく、育てるものだと思うのです」。
良い道具には、良い”理(ことわり)”がある。日本の伝統というべき “良理道具”を伝えていくという使命。釜浅商店の理念は、日本人のアイデンティティを模索する現代人の心に深く響く。
釜浅商店