誰をも笑顔にしてしまうオフロードドライビング・レッスン『Jeep Adventure Academy 2023』フルレポート。開校2回目は本格オフロードコースに挑戦!
2023年7月16日(日)、富士山を見上げる山梨県南都留郡の富士ヶ嶺オフロードで、Jeepオーナーが“マイJeep”でチャレンジする『Jeep Adventure Academy 2023』が開校。国内初だった昨年と同様、今回もJeepの“絶対的信頼感”に満ちたオフロードスペックが参加者を笑顔にするアカデミーとなった。
「実はかなり難しいコースなんです」
昨年の新潟に続く『Jeep Adventure Academy 2023』。前回と趣を異にしているのは、関東有数のオフロード専門コースを持つ「富士ヶ嶺オフロード」を舞台に選んだところだ。それに付随して今回は、よりオフロードの走破性が高い『ジープ ラングラー(Jeep Wrangler)』限定となった。
遠くは北陸や近畿から駆け付けたラングラーの総台数は45台。内訳は、ロングボディのアンリミテッド/JKが3台、JLが27台。ショートボディのJLが2台。ルビコンのロングが10台。ショートが3台。オフロード最強スペックのルビコンが3割近いのは、今回の舞台にふさわしい傾向と言えるだろう。
それらを午前25台、午後20台に分け、さらに5組のグループを構成し、グループ単位で順次3つの走行講座を受講した。
各組共通で最初に受けたのは、こちらも3部構成の座学。コース概要と走行の注意点。ラングラーのスペック基礎講座。そして前回も講師となった『BFGoodrich Tires』の成瀬朋伸氏によるタイヤの種類と説明。成瀬氏の講座内容は別ページで詳しく紹介しているので、ぜひ参照していただきたい。
その成瀬氏が走行前に行ったタイヤチェックが、少しだけ参加者をざわつかせた。オフロード走行に長けたマッドテレーンタイヤを標準装備するルビコンと、任意でタイヤを換えた車両以外に対して、オーナーの了承を取った上で空気圧を下げるサービスを実施した。
半数以上のラングラーが履くタイヤは、高速走行にも性能を振り分けているので、土をつかみにくいトレッドパターンになっている。ゆえに成瀬氏のサービスは、空気圧を下げ接地面を増やすことでグリップ力を増すための措置なのだが、それでなくてもオフロードビギナーが多い会だ。「このタイヤで大丈夫だろうか?」とささやかな不安を抱いた参加者は少なくなかったらしい。
「実はクルマが優れているので、今日のような乾いた路面なら、いわゆるノーマルタイヤでもかなり走れるんです」
そんな頼もしいコメントを聞かせてくれたのは、座学でコース概要と走行の注意点を担当した飯島浩二氏だ。Jeepオーナーの飯島氏は、長年Jeepイベントのメインインストラクターを務め、なおかつ富士ヶ嶺オフロードを知り尽くしているエキスパート・ドライバーでもある。
「座学でも説明しましたが、このコースは溶岩由来の軽石でできています。とても滑りやすいので、LOWギア設定は当然として、可能な限りスピードを落とし、タイヤをしっかりグリップさせて走らせるテクニックが求められます。毎日コンディションが変わるので、実はかなり難しいコースなんですよ」
そう言って笑った飯島氏は、参加者を安心させるためか、座学では「実はかなり難しい」と伝えなかった。さて、先導走行役も請け負ったエキスパートには、どんな企みがあったのだろう。
アカデミーの伝統になりつつある家族同乗とドライバーチェンジ
参加者自らハンドルを握って走行講座を受けるコースは2つ。おおむね平地をベースにしたマイルドコースには、大きなコブが連続するモーグルと、最大斜度20度を超えるバンクを備えたカーブ。さらにHDC(ヒルディセントコントロール/Jeep 4×4システムに組み込まれた、ハンドル操作に集中できるオフロード用クルーズコントロール的な車体制御装置)の使用を求められる通称バケツの大穴が控えていた。
「クルマがユラユラ大揺れしたのが楽しかった」と満面の笑みで感想を話してくれたのは、リアシートでモーグルを体験した男の子。バケツ通過後、嬉々としながら「フロントウィンドウに地面と空しか見えないなんて!」とつぶやいたドライバー多数。HDCのスイッチを始めてオンにしたという参加者も圧倒的に多かった。それにしても、マイルドとは名ばかりの、かなりエキサイティングな設定だった。
別コースの名称はハードコース。その命名理由は想像しやすい。山中に潜む様々なセクションを巡るための外周路を利用したこちらは、コースインと同時に壁のような上り坂が立ちはだかる。斜度23度のアップヒル。できれば一気に駆け上がりたいところだが、座学での説明通り、滑りやすい路面に対してはスピードを抑え、タイヤをグリップさせながら走らなければならない。
どんな心境かと、初めてトライするドライバーに話しかけると、後席から「大丈夫!」と大声で応じて来たのが子どもたち。一人かと思ったら入れ違いに二人三人と顔を出してきたり。そうした家族同乗のままオフロードコースを走るのも、もはやこのアカデミーの伝統になりつつある。また、2周目になると親から子、あるいは夫から妻へとドライバーチェンジするのも同様に。
「ほら、みんな後ろをついてこられるでしょ」
ハンドルを握りながら楽しげに話したのは、ハードコースを先導走行中の飯島氏だ。外側を走ればすべてバンクとなる外周路のカーブで、講師はあえて外側にラングラーを運び、大きく傾きながら走行する手本を後続車に示していた。
「僕が運転しているアンリミテッドはノーマルタイヤです。それでもこれだけ走れるとわかれば、皆さん安心しますよね」
言われて振り返れば、続くラングラーは同じラインで侵入して来る。見る限り、何の迷いもないままに。よくよく考えれば、これはとんでもないことかもしれない。
3つ目の走行講座は、インストラクターがドライブするJeepに同乗するイントラTAXI。「自分ではとても行けそうにない」セクションに入り込むことで、前回も好評だったカリキュラムだ。体験後の感想でもっとも多かったのは「テーマパークのアトラクションみたい」。確かに、2つのコースより前後左右の揺れ幅が増す個所ばかりなので、より興奮度が高まるのだろう。しかし、そこを走破するのは誰もが愛車としているJeepだ。前回のアカデミーにも参加したというオーナーは、こんな意欲を口にした。「次の次くらいは、自分のラングラーで挑んでみたいです」
参加者のリアルボイス。「今度は西日本でも」
ここで、7月の強い日差しの中でも取材に応じてくれた参加者のリアルな言葉を紹介したい。
●3回目があれば、また必ず!
野田康隆さん、弥琴さん/ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ(Jeep Wrangler Unlimited Sahara)80thアニバーサリーエディション
昨年参加したアカデミーが想像以上に楽しかったので、今回もすぐに予約して富山から駆け付けました。前回よりコースが広くて本格的だったのがうれしいです。初めてのマイカーがレネゲードだったのですが、ラングラーに乗り換えてよかったと、今日ほど思った日はありません。3回目があれば、また必ず夫婦で参加します!
●やっぱりJeepはスゴい
ヒガシノユウキファミリー/ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン(Jeep Wrangler Unlimited Rubicon)
納車されて3カ月。Jeepのオフロード性能を確かめるため、家族と一緒に大阪から来ました。走り出す前はちょっと怖かったのですが、運転しているうちにどんどん楽しくなって、最後には余裕まで生まれて、やっぱりJeepはスゴいなあと感動しました。また参加したいですが、今度は西日本で開催してもらえればと。
●また走りに来たい
石田英一さん、理江子さん/ジープ ラングラー アンリミテッド サハラ(Jeep Wrangler Unlimited Sahara)
夫婦共々サーフィンが趣味で、国産ワンボックスを乗り継いだ末ラングラーにたどり着きました。ロングボードを室内に積めないのが唯一の難点ですが、前回抽選に外れたアカデミーに参加できたので、やっぱりJeepにしてよかったですね。このコース、個人的にまた走りに来たいと思ったほど楽しかったです。
●娘たちと6時間かけて来てよかった
井上美幸さん、楓華さん、彩羽さん/ジープ ラングラー ブラック&タン(Jeep Wrangler Black & Tan)
限定車のショートボディを選んだのは、こういうオフロードコースを走りたかったから。でも、実際に走るのは今回が初めてです。娘たちと6時間かけて兵庫から来てよかった。めっちゃドキドキして楽しかったです。参加者の皆さんも親切でフレンドリー。Jeepの集まりの雰囲気を感じられたのもよかったです。
実際に走ったからこそ皆の笑顔に共感できる
午前組と午後組は、地元で人気のハンバーガー店『SUGEEZ(スージーズ)』のハンバーガーランチを境に交代。約3時間のアカデミーは、いずれも閉校式を経て修了した。
その場に立ち会ったStellantisジャパン代表取締役社長の打越 晋氏は、参加者に次のようなメッセージを贈った。
「皆さんの素敵な笑顔を見て、私もうれしく思いました。Stellantisジャパンは一般的にインポーターと呼ばれますが、私たちは単に輸入して終わる会社ではありません。このようにJeepのポテンシャルを体感していただくのが使命だと思っています。皆さんに楽しんでいただけるイベントを今後もどんどん行っていきます」
閉会式では、打越氏が一人ひとりに修了証を授与。そこでユニークな光景が展開した。誰が促すでもなく自然発生的に、参加者と打越氏の記念撮影が始まったのである。その瞬間の打越氏の心情を、後のインタビューで明かしてもらった。
「驚きました。こんなことがあるんだと思って。それはやはり、凄そうだけれど怖くはない安全なコース設定の中で、同乗された方を含め皆さんが『Wow』と楽しめた感動の余波なのでしょう。Jeepのオフロードスペックは昨年も、そして今回のアカデミーも自分で実際に走って味わっていますから、皆さんの気持ちはよくわかります。だからこそ笑顔に共感できるのです。こうしたイベント、広げていきます。そしてすべての場所に飛んでいきたいと思っています」
やはり、笑顔だ。まだ開校2回目とは言え、それはこのアカデミーのシンボルと言えるだろう。もちろん、参加者の笑顔の中心にいるのはJeepだが、しかし本格コースでこそ引き出されるオフロード性能だけが人々の瞳に輝きを灯すのだろうか?
必ずしもそうではないと思う。2度のアカデミーで痛感しているのは、参加者自身がJeepに対する信頼感を再発見できた驚きだ。普段の使い方では知り得なかった潜在能力を、何より自分の手で引き出せた事実。その経験は自信となり、自然と笑顔を育んでいく。いくら指導者がいるとは言え、その後それぞれの自宅まで乗って帰る愛車で20度を超える上り坂やバンクに踏み込むなんて、絶対的な信頼なくしてできるものではない。安全領域内であれ非日常的な行為を楽しむクレイジーを体感したら、誰であれ笑わずにはいられないだろう。
もしこの話が観念的すぎると感じたなら、ぜひ今後の『Jeep Adventure Academy』に参加してほしい。こんなレポートすら忘れて笑顔を浮かべている自分自身と対面するに違いないから。
■今回のイベントの様子を動画でもご覧いただけます。
Text:田村 十七男
Photos:安井 宏充(Weekend.)