Drive

2013.03.08

映画&クルマ好きの理想郷?ドライブイン・シアターの魅力を再発見

アカデミー賞2部門を制覇したタランティーノ監督の最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』も要チェック!

映画&クルマ好きの理想郷=ドライブイン・シアターとは?

クルマは映画に欠かせない名脇役でありながら、時に主人公ともなる。近年再び注目を浴びている「ドライブイン・シアター」は、映画とクルマ両方を愛する者にとってひとつの理想郷かもしれない。
ドライブイン・シアターとは、文字通りクルマに乗ったまま映画を鑑賞できる上映施設。巨大な駐車場にスクリーンを設置し、音声は車載ラジオを介して受信する。その歴史は古く、米国ニュージャージー州カムデンで化学工場を経営していたリチャード・ホリングスヘッド・ジュニアが、1932年に発明。ペンソーケンのアドミラル・ウィルソン通りに開業した世界初のドライブイン・シアターはわずか3年で閉館してしまうが、このアイディアを全米の都市が引き継ぐことになる。

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多くのドライブイン・シアターが小型遊園地を併設し、映画の上映できない日中でも様々なイベントが催されていた。

Photo:MO – Carthage, 66 Drive-In Theatre By openroads.com
http://www.flickr.com/photos/openroadscom/5525125807/

ドライブイン・シアターの栄枯盛衰と、残された可能性

第二次大戦後、全米で100軒程度しかなかったドライブイン・シアターは爆発的に流行し、ピーク時の50年代〜60年代にはおよそ5,000軒にまで急増した。その理由は自家用車を持つ家庭が増えたことと、ベビー・ブーム、および住宅地の郊外化などが挙げられる。ドライブイン・シアターなら赤ん坊の泣き声が周囲に迷惑をかけることがないし、子どもたちを留守番させる必要もない。ベビー・シッターを雇う経済的余裕のない家族にとっては、実に安価で魅力的な娯楽となったのだ。

ところが、上映時間の制約と悪天候の影響も大きいドライブイン・シアターは、地価の上昇も重なり経営が悪化。カラーテレビやビデオレコーダーの普及、さらにレンタルビデオ店が登場したことでその需要は著しく低下していく。日本でも1981年に千葉県船橋市で最初のドライブイン・シアターが誕生し、およそ10年間で全国20か所以上の施設がオープンしたものの、シネコンの増加やアイドリング・ストップの推進で徐々に衰退。最後の砦となったドライブインシアター大磯が2010年10月11日をもって営業を終了し、国内のドライブイン・シアターはすべて閉鎖された。

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現在は廃墟と化しているドライブイン・シアターが大半だが、当時を懐しんで訪れる人も後を絶たない。

Photo:Bel-Air Drive-In Theater By “Caveman Chuck” Coker
http://www.flickr.com/photos/caveman_92223/3952559750/

現在のドライブイン・シアターは、映画よりも昔を懐かしむための場所となっており、閉館したシアター跡地はフリーマーケットなどの会場に使われることも多い。だが可能性も残されていて、映画ファンが有志を募って簡易的なドライブイン・シアターを作ったり、ヨーロッパではボンネットにプロジェクターを搭載した電気自動車の実用化も進められている。壁をスクリーンに見立て、スマートフォンで操作。いつでもどこでもマイ・シアターが楽しめるというものだ。映画ファンのドライバーにとっては、自分の愛車こそが最高のエグゼクティブ・シート。ドライブイン・シアターの未来は決して暗くない。

祝・オスカー受賞!
ドライブの後はタランティーノ最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』をチェック

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左:タランティーノとの2度目のタッグで、またしてもアカデミー賞助演男優賞を獲得したクリストフ・ヴァルツ。
右:主人公ジャンゴを演じるジェイミー・フォックス。

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極悪非道の農場主カルヴィン・キャンディに扮するレオナルド・ディカプリオ。

さて最後に、クエンティン・タランティーノ監督の最新作をご紹介しよう。タランティーノといえば、4人の女のコが殺人鬼に立ち向かうカー・アクション映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』を制作したほどのクルマ好きとして知られるが、今作『ジャンゴ 繋がれざる者』では自身初の西部劇に挑戦。未だ奴隷制度がはびこる1859年のアメリカ南部を舞台に、賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)と黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が出会い、生き別れとなったジャンゴの妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を取り戻すというラヴ・ストーリーでもある。

日本時間2月25日に開催された米アカデミー賞では、脚本賞と助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)の2部門を制覇。前作『イングロリアス・バスターズ』でも同賞を獲得し、タランティーノとは2度目のタッグとなる今作でもオスカーを受賞したヴァルツの怪演は言わずもがな、初めての悪役カルヴィン・キャンディを楽しそうに演じるレオナルド・ディカプリオ、タランティーノ作品の常連ことサミュエル・L・ジャクソン、そして豪華なカメオ出演陣も見逃せない。ドライブ・デートの後は、ゆっくりと名画を楽しもう。

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