最高の技術とホスピタリティで シューリペアの新境地を拓く
靴修理の新たなスタイルに挑戦し続けるパイオニア
「紳士のたしなみ」「持ち主以上にその人を表す」「ファッションの基本中の基本」……。数あるファッションアイテムのなかでも、これほど人を魅了し、愛され、よく語られるのは靴ぐらいのものではないだろうか。
とはいえ、靴が日本で現在のような地位を獲得し、こまめに手入れをして長年つきあっていけるアイテムだと認知されるようになったのは比較的最近のこと。中川一康さんが靴修理を始め、「UNION WORKS」という自身のお店を立ち上げたきっかけも、そこにあったという。
「僕がこの仕事を志した20年前、市場には良い靴が出回っているのに、それに見合った修理をしてくれる店がありませんでした。デパートの片隅や商店街の修理店しかなくて、とても安心して任せられそうになかった。靴好きとして、そこに疑問を感じたのが最初でした」
ところが当時、日本にはヨーロッパ製の靴を修理するためのパーツすらない状況。そこで靴作りの総本山ともいえるイギリスにまで足を運び、靴作りや修理のパーツ専門店をまわって揃えていったのだとか。
「輸入してみたものの、どうやって装着するのかわからないパーツもありました。そういうものは次に渡英したときに靴工場を見学させてもらって、自分なりに取り入れていきました」
そうした靴への愛情と、ひたむきな努力で着実に顧客を増やし、2004年には青山に路面店をオープン。アパレルショップかと見紛うような趣のある内外観で、従来の靴修理店のイメージを大きく塗り替えた。
「靴の修理は技術が一番なのはもちろんですが、僕はそれを象徴するような雰囲気も重要だと思っています。お客様に安心して任せていただき、僕らが最高のパーツとできる限りの技術を尽くして応えることで、修理が終わったときに驚いてもらいたい。一流のサービスを提供する場だからこそ、外装にもインテリアにもこだわりました。それに、既存の靴修理のイメージを変えたいという思いもありましたね」
その後も2009年にはイギリスの名門靴メーカー「トリッカーズ」のオリジナルモデルを発売、2011年6月には銀座に路面店をオープンするなど、快進撃を続ける中川さん。その先に見据えているのは、どんなものなのだろうか?
「UNION WORKSの最終的な目標は、最初に工場で作られたときと同じ状態に修理すること。20人いるスタッフがそれぞれの得意分野を担当することで、僕ひとりで始めたときより確実に修理のクオリティは上がっていますが、まだまだ(オリジナルには)及びません。だけど、日々少しずつステップアップしている手応えはあります。スタッフと修理をした靴を見ては『よりノーザンプトン製に近づいたね』(注:ノーザンプトンは靴の聖地とも呼ばれ、老舗の靴メーカーが密集するイギリスの地名)なんて冗談を言い合っては、その日が来るのを夢見ています」
UNON WORKS