【Jeep×House】Jeepが考える家~新しい発想で住宅デザインを提案する『Dolive』と、Jeepと共に生きる家について語り合う~
RealStyle初の家をテーマにした異業種コラボレーショントーク。参加したのは、新しい発想で住宅デザインを提案する『Dolive』を主宰する林哲平氏と、Jeepのクリエイティブに長年携わっているアートディレクターの小泉貴之氏。そして、Stellantisジャパン株式会社 Jeepブランドマネージャーの新海宏樹氏。誰の人生にとっても重要な住まいを、Jeepの存在価値と照らし合わせて自由に語り合った。
DoliveがJeepとのコラボを求めた理由
「本物志向が強い方に支持されているブランド」
林:まずは、Jeepとコラボしてみたかった理由からお話しましょう。ひとつは、僕自身が純粋にJeepに憧れたど真ん中の世代だったということ。それと、本物志向が強い方に支持されているブランドだと思ったこと。このあたりのJeepの魅力をまだ言語化できていないのですが、お二人からいろいろお聞きしたいなというのも、今回の目的だったりします。
新海:何からお話しましょうか。歴史だけでも相当にボリュームがありますよ。
林:我々の『Dolive』には、建築物の正面デザインを意味するファサードから家をもっと自由に考える、通称「ファサケン!」と呼ぶ企画がありまして、やっぱりJeepも外観コンセプトが気になってしまいます! 改めて教えてもらえますか?
新海:エクステリアの代表的なアイコンは、7本の溝を持つセブン・スロットグリルと、台形ホイールアーチです。いずれもJeepの祖となった軍用車のウィリスから継承した、今も全ラインナップで踏襲している歴史的意匠です。
林:Jeepファンはそのヒストリーを知っているんでしょうね。
新海:出自に向けた理解は深いと思います。台形ホイールアーチに関しては、どんな場所でもタイヤ交換やタイヤチェーンの脱着がスムーズに行えるよう設計された、合理性を重視したデザインです。
小泉:Jeepのデザインは、なるべくしてこうなったと言っていいでしょう。そのフォルムは、どんな時代でも人の心に訴えるものがある。林さんが直感的にJeepから感じ取ったのは、そういう部分かもしれませんね。
新海:本物志向という言葉がありましたが、Jeepを選ぶ方はクルマに対する憧れと同等以上に、「私にはJeepでやりたいことがある」という明確なビジョンをお持ちですね。我々には、それを叶えている稀有なプロダクトという自負があります。
林:なるほど。となると、やはりアクティブなオーナーが多いのでしょうか?
新海:全般的にアウトドア好きは間違いないところですが、1年中キャンプをしているわけではなく、週末にオフへ切り替え、レジャーやスポーツ観戦、あるいはショッピングに出かけるオーナーが中心です。30~40代がオーナー層のコアですから、家族と共にやりたいことを叶えてくれる、常に生活に寄り添ってくれる“相棒”と表現される方が多いようです。
林:すべて納得です。家族をキーワードにしても、家とクルマの親和性が高いことは皆さんのご理解を得られると思いますが、これまでの住宅にはその親和性を具体的に表現できるアイデアが乏しかった。そこで僕らは家のプロダクト化を推進しました。これは、家であっても所有より楽しく使うことにステータスを感じるべき、という考えに基づいています。Jeepがそうであるように、優れたプロダクトは素晴らしい生活を実現させる力を秘めていますからね。Jeepのコンセプトを改めて聞かせていただき、僕らのコンセプトとの共通点が多くて、間違ってなかったんだなと感じました。
Jeepが考えた家のコンセプト
「どこにでも行ける車といつまでも寄り添う家」
小泉:ここで、「Jeepと考える家」を提案させていただきます。考え方の軸に置いたのは、「どこにでも行ける車といつまでも寄り添う家」。構造上の核をそれ一つでも独立可能なユニットとし、ユニットを連結させることで住空間の拡張と縮小ができるアイデアにしました。
新海:ライフステージによって家族構成は変化しますからね。
小泉:結婚したばかりなら最小限のユニット構成で。子どもが産まれたら、当初の構成を生かしつつ一つのユニットだけ大きなものに換えてもいい。子どもが大人になり結婚し、二世帯住宅とするならさらにユニットを増加。親だけが住むことになるなら、それまでのユニットを子ども夫婦に譲るなどして構成自体をコンパクトにできます。
林:ユニット型、すごくいいです。特に二世帯住宅は、一つの家に3LDKを二つ押し込む無理な設計が多いですからね。そういうリフォームは施工も大変だし、将来的に次世代へ譲るのも難しい。持続可能性とは真逆です。それだけにユニット型はJeepならではの合理性が感じられます。
小泉:資材関連もエコでサステナブルなものを選びたいですね。
新海:そもそもユニットの継承が家族間のサステナビリティになると思いますよ。
林:意外と無視されてきたのですが、注文住宅は端材が出やすいんです。強引なデザインにするほど資材の無駄が発生する。であれば、家の形は長方形か正方形に統一していいと思います。
小泉:このスクエアなユニットにも、内部に仕切りを設けません。基本的には箱の提供に留め、ユニットの組み合わせ方も含めて住む人の生活に合わせてもらいたいです。それによって本質的な意味合いでの、暮らしに寄り添った家がつくれると思います。
林:クルマがそうですもんね。室内という箱の中では運転席だけ位置が決まっていて、それ以外はどう使ってもいい。そこに個性が表れる。
小泉:ユニット型にしたもう一つの理由は、住みたい場所にユニットを建てられることです。それこそJeepでなければ行けないような山の上や海外線であるとか。どこにでも行けるクルマが場所に縛れるのは何か違うだろうと思いました。
林:いやもう、完璧ですね!
DoliveとJeepの結論
「クルマと家の親和性を軸に生活の在り方を見つめ直す」
新海:「Jeepと考える家」を検討してみて、林さんが家のプロダクト化を進める理由が何となくわかってきました。
林:家のプロダクト化は、日本の住宅業界の古い考えに向けた問題提起なのです。たとえば僕らが家をプロダクト化したいというと、工務店さんはあまり良い顔をしません。とは言え、今のままだと時代にあった提案なんてできないですよねと返す他にありません。
新海:家を建ててくれるのが工務店であっても、ですか?
林:工務店の提案は、施工事例をもとにしたものが多く、実はそこまで個々のデザイン力があるわけではないんです。家の躯体を組み上げるプロであることは事実なのですが、デザインを意識したプロダクトを生み出すことがなかなか難しく、だから過去の事例を参考資料として提示するしかないんです。
小泉:なるほど。
林:建築家と呼ばれる人たちも似たようなところがあって、彼らは自分がつくりたいオンリーワンを優先させがちなんですね。その熱意がユーザーの幸福につながるかと言えば、やはり僕は疑問に感じます。そうして、個性的と言えば聞こえがいいまちまちのファサードを備えた家が建ち並ぶと、どうなると思いますか?
新海:不揃いな街並み?
林:日本には、致命的に景観を損なった住宅地があまりに多いんです。
小泉:確かに、空港間近の飛行機から街並みを見下ろすと、日本と海外の違いに衝撃を受けることがありますね。
林:ある程度のルールを介して一軒単位のファサードを整えることは、街づくりにとって不可欠な要素のはずです。だからこそ家は、少なくとも外観だけは統一可能なプロダクトにすべきじゃないかと考えます。トレンドが変わるたび建て替えるのはどうかと思うし、それに日本の住宅の上物は15年もしたら価値ゼロになりますからね。一方でヴィンテージのJeepなら、場合によっては新車より高価で取り引きされるじゃないですか。なぜ家はクルマのようならないのか、住宅業界にいながら不思議でなりません。
新海:ただ、家を持つというのは人生の一大事ですし、わからないことも多いから人任せになるのも無理はないと思うのですが。
林:今の住宅業界で圧倒的に不足しているのは、クリエイティブな提案ができる人物です。とても重要な点は、どんな家を建てるかより、どんな暮らしをしたいか、それをオーナーと共に考え形にすることができる力です。ともすれば、建築のプロが建築目線で考えるなんかより、新海さんや小泉さんがデザインや暮らし方の観点からクリエイティブディレクションしたほうがよっぽどいいですよ。「Jeepと考えた家」という提案で、ガレージ云々ではなく、人に寄り添うというJeepが愛される理由をコンセプトに掲げてくださる方が、これからの家づくりには必要なのです。
新海:林さんとお話する機会を得て、クルマと家の親和性を軸に生活の在り方を見つめ直す大事さを再認識できました。ありがとうございます。
林:こちらこそ勉強になりました。Jeepとなら、ユーザーを笑顔にする家を考えていけそうです。
Doliveでも3人の対談を掲載。Jeepが考える家について深掘りしました。また、DoliveとJeepが考えた家のCG動画も掲載。ディテールまでこだわったJeepのCGハウスを解説しています。
▼ファサケン!
https://dolive.media/395/
▼CG解説記事
https://dolive.media/398/
Text:田村 十七男
Photos:浦 将志