新型Jeep Compass Limited試乗インプレッション 〜悪路だけじゃない、高速移動もお手の物〜
Jeep Compass Limited(ジープ コンパス リミテッド)がマイナーチェンジを受け、新型へ移行。ACC(アクティブクルーズコントロール)の装備、安全運転支援システムでLKA(レーンキープアシスト)が搭載されるなど、より快適となった新型Compassで往復1,700kmにもおよぶロングドライブへ!モータージャーナリストの内田俊一氏による長距離インプレッションをお届けします。
我々、モータージャーナリストも人の子だ。気になるクルマの試乗となると、心ときめき、どこか遠くへ行きたくなるもの。最近マイナーチェンジした『ジープ コンパス リミテッド(Jeep Compass Limited)』となればなおさらだ。インテリアが大幅に変更され、印象が大きく変わったことだけでなく、目に見えないいくつもの改良があるようだ。きっとオーナーはこれに乗って街中だけでなくキャンプなどのアウトドアにもお出かけすることだろう。そこへ行くためには高速道路などを使い、長距離を走ることがあるかもしれない。そこで今回は、岩手は一関にある『館ヶ森アーク牧場』を目指してドライブに出かけることにした。
魅力的なインテリア
『館ヶ森アーク牧場』は観光牧場であると同時に、広大な自然あふれる敷地にはさまざまな動物が飼育されており、お花畑が広がる夢のような場所だ。過去に一度だけ訪ねたことがあり、その景観や経営方針に感銘を受けたことから、今回の目的地に選んだ。もちろん、そこで採れたて新鮮なお肉や野菜も食べられるので、それも今回の大きな目的ではある。
東京から東北道一ノ関インターまでおよそ400km、そこで1泊して翌日『館ヶ森アーク牧場』を訪問し、その足で気仙沼を周って1泊してから帰京という合計1,700kmの旅程を組んだ。
さて、コンパスを受け取って、まずはクルマの周りを1周してから乗り込んだ。その時に外観とは違い、インテリアがマイナーチェンジ前と大きく違っていることに驚いた。これまでのコンパスのインテリアはそれぞれの機能が独立することで力強さを表現していたが、新型では横基調でクロームラインに囲まれ、ソフトパッドで覆われたボルスターと呼ばれるインパネデザインは、広々と感じさせるとともに上質さを表現。まるで2クラスは上のSUVのような表情で、“ちょっと良いクルマ”に乗っているという気持ちにさせてくれる。
もうひとつ、嬉しいことがあった。Jeepオーナーならお気づきかもしれないが、ドアの閉まり音だ。ガシャリという硬質で剛性感を伴うこの音は、ボディがしっかりしていることや守られているという安心感を醸し出しており、まさにJeepならではと感じた。
操作類を確認し、電動のパワーシートでドライビングポジションを合わせ、スタートストップボタンを押すことで2.4リッター タイガーシャーク マルチエア2直列4気筒エンジンは軽々と目覚めた。
しっかりとした形のセレクターでDを選び、軽くアクセルを踏み込むと、電動式のパーキングブレーキはスムーズに解除され、軽快にコンパスは一路一関を目指してスタートした。
高速移動は得意中の得意
私が住むのは東京都八王子なので、近場の圏央道高尾山インターから久喜白岡JCTで東北道に入り、あとはひたすら一関ICを目指してアクセルを踏み続ける。といっても、実はそんなことはなく、今回のマイナーチェンジでACC(アクティブクルーズコントロール)が装備されたので、ステアリングにあるスイッチを操作し積極的にそれを使用。法定速度に速度設定し、淡々と東北道を北上していった。
もうひとつ、安全運転支援システムでLKA(レーンキープアシスト)も搭載された。車線から逸脱しそうになると、警告を発するもので、コンパスの場合はステアリングにバイブレーションが発生し、それでも操作がない場合はステアリングにトルクがかかり元の車線に戻そうとするものだ。バイブレーションとステアリング操作は設定によって選択ができ、デフォルトは両方オン。今回の高速移動ではバイブレーションのみとした。その理由はコンパスがどの程度の直進安定性があるかを試すために、バイブレーションのみにしていたところ、非常に直進安定性が高かったため設定はそのままにし、軽くステアリングを握ってリラックスした移動を楽しんだのである。
それにしてもコンパスリミテッドの高速移動の楽なことは特筆すべきことだ。シートは疲れを誘発することもなく、前述のように直進安定性は高い。活発なエンジンとそれに合わせたセッティングのトランスミッションはACC使用時も、速度をキープしようと積極的にシフトダウンし、たとえ上り坂であっても軽々とクルマを引っ張り上げるので、軽快な気分で走り切ってしまった。その結果、往復とも高速では一度も休憩はしなかったことを思い返すと、いかに高速移動に伴う疲れがなかったかがよくわかるというものだ。
持続可能な農業スタイルを多くの人に体験してもらいたい
一関で宿泊した翌日、幸いにも快晴に恵まれ一般道をのんびりと走りながら『館ヶ森アーク牧場』を目指す。
『館ヶ森アーク牧場』との出会いは、数年前にさかのぼる。たまたま手にした豚肉がここの商品で、それを食べた瞬間、豚の臭みもなく、脂身のしつこさがない代わりに甘みがたっぷりと口の中に広がり、本当に感動したことをいまでも覚えている。少し調べてみると、“食はいのち”という理念のもとに、自分たちの家族に安心して食べさせられるものを作れば、どんなお客様にも自信を持って勧められるものが作れるはずというコンセプトを掲げていることを知り、ぜひ改めて訪ねてみたいと思っていたのだ。
『館ヶ森アーク牧場』は1992年にオープンした広大な敷地を誇る自然豊かな牧場で、その面積はおよそ100ヘクタールもあるそうだ。養豚のほか、ニワトリや小麦、野菜、花などを育てている。季節によってはラベンダーが一面に咲き誇り、それはもう夢のような世界が広がる魅力的な場所である。
先ほどは観光牧場と紹介したが、「私たちがやっているのは農業なのです」とお話するのは、今回案内をしていただいた館ヶ森アーク牧場総務部主任の小松仁さんだ。「ここの農業をお客様に見てもらい、せっかくなのでここで作ったものを自分たちの手で採取して、自分たちの手で食べてもらいたいという思いを持っています」と語る。
ここではいわゆる“循環型農業”を取り入れている。これは、畜産や農業、家庭などで出る排泄物や廃棄物を肥料に利用したり、農業で出るゴミを循環利用したりすることで持続可能な農業を成り立たせる取り組みだ。さらに、ハムやソーセージを加工する工房も備わっており、そのほとんどがここで完結するように作られている。
一方で、観光としての側面を持たせている理由にも思いがある。「小さいお子様を連れて遊びに来て、お花を見たり動物を見たりして楽しいねとまずは感じてもらいたいのです。小さい頃にアーク牧場に行ったことがあるお子様が、大きくなって結婚して子どもができて、その子どもが食べるものに気を使うようになった時に、そういえばアーク牧場はこういうコンセプトでやっていたと後で気づいてもらうということでも全然構わないですし、そこが大事だと思っています。そこでまずは自然を楽しんで、ゆったりリラックスしてもらいたい。我々はよく癒しの空間という言葉を使うのですが、館ヶ森アーク牧場に来て癒されて帰ってもらえれば嬉しいのです」
そこで『館ヶ森アーク牧場』ではさまざまなイベントを開催している。たとえば、お客さんと羊が走る“メーメーダービー”や、ラベンダー畑で紫色に染まる“ハーブフェスタ”(6月から7月)、豚を丸焼きにし、岩手が誇る南部鉄器で作った2メートルのジャンボ鍋を使ったホルモン鍋もふるまわれる。また、この地域では“いものこ鍋”という風習があるそうで、それを収穫祭にこの大鍋でふるまわれるイベントもあるという。
そのほかにも、実際に自分の手で鶏の卵を収穫したり、採れたての野菜、作りたての生ソーセージを味わえる世界一の朝食会など、多種多様なイベントを通して、『館ヶ森アーク牧場』の魅力を伝えている。
(現在コロナ禍のため、いくつものイベントが中止になることも考えられるので、ぜひホームページでご確認いただきたい)
実際に『自然食レストランティルズ』でお昼をいただいたのだが、牧場産のおいしい豚肉をはじめ、朝どりたまご、フレッシュ野菜、手づくりパンのほかに、ここでしか食べられないバターなど、しめて料金2,000円が、まさに嘘のようなご馳走だった。ちなみに、いわて地産地消レストラン二ツ星に認定されているそうだ。
敷地内を周ってみると、緑が眩しくいたるところに遊具があったり、眺めのよいところには見晴らし台があり、のんびりと過ごしたりすることも楽しそうだ。また、BBQテラスやレストランも併設され、ここでしか食べられない逸品も多数用意されているので、再訪したくなること請け合いである。
館ヶ森アーク牧場を存分に楽しんだこの日は、気仙沼まで足を延ばし一泊。気仙沼大島を巡り、かつお祭りを堪能したあと、美味しい牛乳を入手してから再び高速を使って帰京した。
トータル1,700kmの旅は無事に終わった。まさに飽食三昧であったが、その間、「あ〜、疲れたな」とか、「運転が面倒だ」と思ったことは一度もなかった。その理由は、新しくなったインパネ周りの広々感や上質感が気分を落ち着けてくれたこと。そして、高速移動時の快適な乗り心地と、安定指向のハンドリング、ちょっとしたワインディングでも重心の高さを感じさせず、すいすいとドライブを楽しめるさまは、まさにクルーザーのような性格を表している。そう、Jeepが悪路のみに強いというのは遠い昔のお話なのである。
※取材協力:館ヶ森アーク牧場(特別許可を得て車両を乗り入れ撮影しています)
今回使用したクルマ
『Jeep Compass Limited(ジープ コンパス リミテッド)』
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ジープフリーコール 0120-712-812(9:00~21:00、無休)
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【Information】
館ヶ森アーク牧場
住所:〒029-3311
岩手県一関市藤沢町黄海衣井沢山9-15
TEL:0191-63-5100
URL:https://www.arkfarm.co.jp/
Text,photos:内田俊一