最大7人乗車が可能な新型グランドチェロキーLに最速試乗。オンラインカンファレンスで発表された重要トピックスを独自検証!
3列シート採用で話題を呼んでいる新型グランドチェロキーL。国内に導入された2グレード、リミテッドとサミット リザーブに試乗できる機会を得て、2021年末のオンラインカンファレスで発表された重要なトピックスを軸に独自検証してみた。
エクステリア:“長い”が“長すぎない”のがポイント
ついに日本の道を走り出した新型グランドチェロキーL。今回試乗が叶ったのは、ブライトホワイトをまとった『ジープ グランドチェロキー L リミテッド(Jeep Grand Cherokee L Limited)』と、パルティックグレーメタリックの『ジープ グランドチェロキー L サミットリザーブ(Jeep Grand Cherokee L Summit Reserve)』。
国内に導入される二つのグレードには相応の価格差があるが、モノコックから刷新され顔つきも変わった両者の外観上の差異は比較的小さいものと言っていい。要点は二つ。ボディカラーはいずれもシングルトーンが基本だが、試乗したサミット リザーブのパルティックグレーメタリックに限りルーフが色違いの2トーンが用意される。加えてホイールは、リミテッドが18インチ。サミット リザーブが21インチ仕様となる。
さて、新型グランドチェロキーLを目の当たりにする上でもっとも気になったのはサイズ感だ。2021年末に開催されたオンラインカンファレンスで、Jeepエクステリアデザインのディレクターであるマーク・アレン氏は、「長すぎないように見えること」を課題にしたと語った。
果たして実物の印象は、正直なところ長いという他にない。先代最長のサミットを320㎜超えた5,200㎜の全長は、数値以上の存在感を覚えさせた。しかし、決して冗長ではない。なぜなら、ただのストレッチバージョンではないからだ。新型グランドチェロキーLは、当初から3列シートを内包するためのデザインが行われた。その計画性は均整がとれたサイドビューのシルエットを見ればわかる。あるいは、「長いクルマ」と親しみを込めて呼ばれそうな個性を備えたと言ってもいいだろう。
そこでマーク・アレン氏の言葉を振り返る。彼は「長すぎないように」と言った。一方で実物を目にした感想は「長い」である。その違いが一つのポイントだ。見え方は個人の主観によるけれど、個人的にはアレン氏が伝えたかったことがよくわかった。
3列シート:すべてのレイアウトが絶妙
もう一つの重要トピックは3列シートだ。新たな設定によって、リミテッドは2列目を3人掛けベンチシートとして最大7名。サミット リザーブは同じく2列目に2脚の独立したキャプテンシートを備えて最大6名乗車となった。いずれにせよ、運転席から振り返っても、3列目の最後席から前方を臨んでも空間の広さを感じる。すべてのシートが人で埋まる様子を想像して、何だかワクワクした。
Jeep初の3列目シート。腰を下ろした感触は、悪くないというより予想以上によかった。列に関係なく各シートは、余計なクッションを省いたやや硬めで、3列目のシートは2列目と同等の座り心地。リアタイヤの真上あたりに位置するが、都内を走る限り突き上げに苛まれることはなかった。シートバックにリクライニング機能はないものの、前後にスライドする2列目シートの位置を調整すれば、身長175㎝のテスターでも十分なレッグスペースが確保できた。また、ボディの側面に肘を置けるスペースがあるので体を縮ませる必要もない。総じて言えるのは、補助的な装備ではないということだ。
2列目以降3列目のシートは、簡単な操作で折り畳むことができる。すべてを倒せばフルフラットとなり、ロングボディならではの約2,400ℓのラゲッジスペースが生まれる。
ちなみにサミット リザーブの2列目キャプテンシート。試乗した者全員が口にしたのは「いい!」だった。サミット リザーブに限らずリミテッドもシートは総革で、座り心地・肌触り共に好印象。にもかかわらずキャプテンシートが高評価だったのは、何はともあれ独立していることに心を奪われたことが一つ。さらには、3列目が着目されがちながら、リミテッドを含み2列目シートのレイアウトが絶妙なのかもしれない。
再びオンラインカンファレンスに戻ると、Jeepインテリアデザインチームがインテリアデザインのキーイメージとしたのは、「滝のように流れる」だった。これは、ドライバーの目の前に広がるダッシュボードと、室内最後部の3列シートが醸し出すダイナミックな落差を評したものだ。となれば、前後の滝が流れ落ちた水が安定する場所が2列目シートということになる。その位置を綿密に計算したからこそ2列目の何とも言えない安堵感が生まれたのだろうか。ここはロングドライブの機会に座席を変えながら、改めて検証してみたいところだ。
シート関連の最後に、3列目に座った者だけが発見できるサプライズを紹介しておく。進行方向右側のウィンドウ下部に、新型グランドチェロキーのデザインスケッチと思しきシルエットがプリントされている。しかも、やがて登場するであろうショートモデルとLが2台そろって。左側のウィンドウにも別のシルエットが存在するが、そちらは皆さんの試乗機会に確認してほしい。
ドライビングフィール:「驚くほど静かで軽やか」
今回の試乗でラッキーだったのは、先代グランドチェロキーのオーナーがハンドルを握ってくれたことだった。走り出した瞬間、彼はこう言った。
「室内は驚くほど静かになったし、何よりエンジンが軽やか!」
実は先代と新型のエンジンは、3.6ℓV6型6気筒の同型式。にもかかわらずフィーリングと静粛性に好意的な変化が見られたのは、モノコック刷新に伴ったエンジン搭載位置の最適化が功を奏した結果だろう。
「フロントアクスルをエンジン架台に直付けすることでNVH(振動や騒音など乗員が不快に感じる要素)を低減。エンジンの位置=重心も下がったことで運動性能も上がっている」と説明したのは、プレスカンファレンスに登場したチーフ・エンジニアのフィル・グレイド氏だった。その苦心の結実を先代オーナーが体感としたと聞けば、エンジニアチームも喜ぶに違いない。
一方でグレイド氏が悲願とした前後マルチリンクサスペンションへの改定効果は、今回の試乗で確認できなかった。そもそもグランドチェロキーは、舗装路ないしは高速移動を得意とする足回りを有しているので、街乗りレベルでわかるような極端な変化はないのかもしれない。長距離ドライブ、またはオフロード走行で改定の真価が判明するだろうから、その際にも先代オーナーを誘って意見を聞くことにする。
サスペンションに関して一つ。リミテッドは一般的なコイルを緩衝材に用い、サミット リザーブは“クォドラリフト エアサスペンション”を装備している。2台を乗りくらべてわかることだが、サミット リザーブのエアサスは、リミテッドの上に薄くて柔らかい絨毯を敷いたような感覚を与えてくれる。だが、街乗りレベルで大差があるようには思えない。ただしエアサスに備わっている車高調整機能は、最低地上高にゆとりが欲しい悪路走行だけでなく、人の乗り降りなどでも便利なのでチョイスに迷うだろう。
その他、先進のセーフティ&セキュリティシステムを始めとする新装備は数多くあるのだが、今回の試乗だけでは時間が足らず、チェックが行き届かなかった点をお詫びする。あえて追記するとすれば、サミット リザーブのファムカメラ(10.25インチマルチビューディスプレイに表示されるアプリの名称。カタログではインテリア リアフェイシングカメラ)は、2列目シート以降の様子をモニターできるので、たとえばチャイルドシートに乗せた子どもの様子をうかがう際に重宝するのではないだろうか。
同じくサミット リザーブのマッキントッシュ・プレミアムサウンドシステムが素晴らしい。室内に配置された18基のスピーカーと10インチサブウーハーが奏でる音は、静粛性が高まった室内に心地よく響き渡る。なおかつマッキントッシュのアイコンでもある「ブルーアイズメーター」がディスプレイに表示されるので、オーディオファンも歓喜の声を上げるに違いない。
とりもなおさず、最速試乗を謳いながら新型グランドチェロキーLの多くを体験できないままでいるのは何とも口惜しい限りだ。新型が開けた世界があまりに広いということでお許しいただきたい。そしてまた別の機会に、新型グランドチェロキーLが拓いた未知の地平に挑みたいと思っている。
今回使用したクルマ
『ジープ グランドチェロキー L サミットリザーブ(Jeep Grand Cherokee L Summit Reserve)』
『ジープ グランドチェロキー L リミテッド(Jeep Grand Cherokee L Limited)』
商品に関するお問い合わせは、Stellantisジャパン株式会社まで。
ジープフリーコール 0120-712-812
https://www.jeep-japan.com/
Text:田村 十七男
Photos:安井 宏充(Weekend.)