人と人、人とモノをつなぎ 地域のものづくりを活性化させる

日本国中を歩き回り、作家と直接会い
実際使ってみて積み重ねた「目利き」の技

  • main184 人と人、人とモノをつなぎ 地域のものづくりを活性化させる
    日野さんの書庫。産地に出向いた時にも古本屋に行き、
    その土地の産業やものづくりにまつわる本を買い求める。
    本棚のデザインはLUFTの真喜志奈美さんが手掛けた。
  • main269 人と人、人とモノをつなぎ 地域のものづくりを活性化させる
    左の鉄瓶は岩手県の工業試験場がデザインしたもの、
    右の煎じ土瓶は伊賀のやまほん陶房のもの。
  • main362 人と人、人とモノをつなぎ 地域のものづくりを活性化させる
    自分で使ってみて本当に優れたものを買う。
    そうして日野さんの食器棚には優秀な器たちが残る。

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自ら買い集めた茶器でお茶を愉しみながら、器の魅力について語ってくれた日野さん。

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左は手触りがいい伊賀の長谷製陶のカップ、右は淡路島で作陶する斉藤幸代さんの小皿。

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新潟県燕三条で金物の製造卸業を営むカラサワの排水キャップ。

る時は日本のクラフトの目利きとして、さまざまなインテリアショップと作り手をとしてつなぐ「一人問屋、クラフトバイヤー」。そしてある時は、地方の産地に出向き作り手たちの指導をし、職人とマーケットをつなぐ「一人コンサルタント」。またまたある時は、地方の優れた名品や知られざる産業を紹介し、地方と大勢の人たちをつなぐ「一人クラフト広報」。日野明子さんは、今日も西へ東へ産地を歩き、その小さな体でパワフルに動き、日本のクラフツマンシップを支えている。

日野さんの仕事を紹介するにあたり、秋岡芳夫さんの存在を忘れてはならない。秋岡芳夫さんは、現在目黒区美術館で一大回顧展が開催されているデザイナーである。ラジオや、学研の科学・学習の付録デザイン、三菱のユニ鉛筆といった工業デザインの良品をたくさん世に生み出し、日本の高度成長を支えていたが、70年代の非常に早い時期から大量生産・大量消費に疑問を投げ掛け「消費者をやめて愛用者になろう!」を合言葉にグループモノ・モノを設立。縁のあった地方のクラフトをサポートする仕事に従事し、普及に努めた。

「大学で秋岡先生の授業を受けられたことは、私にとって非常に大きかった。授業の一環として、築地にある鍛冶屋さんに連れていってもらったり、当時クラフトに力を入れていた西武のJCや松屋のクラフトマンハウス、丸善のクラフト・センター・ジャパンといったところを巡ったり。また卒業論文では熊本のい草について、現地まで出向いて調べたり。実際にモノが作られている現場を見ること、現場で話を聞くこと、それは当時から今もまったく変わりませんね」

卒業後は松屋の商事会社で、フィンランドのイッタラの営業を担当し、インテリアショップとのネットワークを広げると同時に、休日を利用して積極的に地方に出向き、日本の産地を巡った。その後独立し、「一人問屋」で「企画屋」のスタジオ木瓜をスタートさせる。

「初めてもらった仕事が、リビング・デザイン・センター・オゾンの展覧会でした。50人のデザイナーのお茶わんを並べたいというお題がきて、仕事もなく時間だけはある状態でしたので、時間をフル活用して50人お声掛けをさせていただきました。出張費は自腹だったんですが、出来る限り現地に出向いて作家さんと直接お話するよう心掛けました」

そのようにして企画展を担当したり、百貨店やインテリアショップへの営業をしたりしながら、地方の産地へと足を運ぶ。繰り返し通うことで関係が深まり、自然と様々な相談を持ちかけられるようになり、地場産業のアドバイザーを務めるようになる。また、足で稼いだ豊富な知識は文筆の仕事にも生かされている。

目利きは一日にして成らず。日野さんのスタイルは、とにかく現場主義である。どんなに本で知識を貯めても、ものづくりは現場を見ないことには始まらない。個人の作家はもちろん、地場産業センターや工業・窯業・木工の技術センターなどに顔を出し、製造の工程を学び、本当によいと思った製品を取り扱い、紹介していく。アトリエのカレンダーには、びっしりと地方出張の予定が書き込まれていた。

日野さんが、ここ一年くらいハマっているという製品を見せていただいた。それは、流し台のシンクに置くステンレスの排水キャップである。

「これは、新潟の燕三条の地場産業センターで何気なく購入したものなんですが、使ってみたらすごくよかった。従来のゴム製のもののように水あかがついたりしないし、排水溝にものも落ちにくい、そして水が流れているところもすごく美しい。ステンレス製なので手入れもすごく楽。デザイン的にもすごくよく考えられたものだと思います」

人を楽しませるための装飾ではなく機能を究極に突き詰め、地場産業として継続的に流通させるための効率化を考慮した一切ムダのないデザイン。日々使う道具としての用の美が、そこにあった。日本全国を渡り歩き、星の数ほどのクラフトを見てきた日野さんに、クラフトバイヤーとしての目利きのコツは?と尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「どんなに美しいものでも、私が扱っているのは日々の生活道具です。ですので、まずは”長く使える”ことが重要ですね。あとは、ものとの出合い方も大切。作家さんから作り方や素材の話を伺ったり、作る工程を聞いてそこに共感したものには愛着が湧きますね。それは、職人が手作りしているからいいというのではなく、機械を使って工場で作られているものも同じです。工業製品であっても、工場の管理体制や作り手によって仕上がりはまったく違いますから。そう言いつつも、先ほどの排水キャップのように、まったくの予備知識なく”いい!”と思える、もの自体にパワーがある製品もあります」

日野明子

1967年生まれ。共立女子大学で秋岡芳夫氏のゼミを受ける。卒業後は松屋商事株式会社(1998年解散)に入社しものづくりを扱う営業を担当。1999年に独立し、スタジオ木瓜を開始。『つくる人』、『つくる現場』、『もの』と『使う現場』の間に立ち、クラフトバイヤー、問屋、アドバイザー。

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