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2022.07.14

Jeepオフィシャルタイヤサプライヤーに聞く、Jeepの特徴を生かすタイヤ基礎知識

Jeepらしさを引き立てるパーツの一つがタイヤ。「できれば、よりタフでゴツいものに換えてみたい」と思っているオーナーも多いはず。しかし、Jeep本来の性能を損なわないためにも、オフロード向けタイヤの基礎知識は知っておきたい。そこで、2022年5月末に開催された『Jeep Adventure Academy 2022 Basic Class』で参加者にタイヤレクチャーを行った『BFGoodrich』ブランドマネージャー、成瀬朋伸氏をキャッチアップ。Jeepに最適なタイヤ選びのポイントをたずねた。

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▲『BFGoodrich』のブランドマネージャー、成瀬朋伸氏。

Jeepにマッチするタイヤ3種

1870年にオハイオ州で設立された『BFGoodrich』は、米国初の自動車用空気入りタイヤやラジアルタイヤ等を発表した歴史を持つ、生粋のアメリカンタイヤブランドだ。同胞のJeepとも長い付き合いがあり、現在もオフィシャルタイヤを提供し続けている。
まずは、件の『Jeep Adventure Academy 2022 Basic Class』に成瀬朋伸氏が持ち込んだタイヤを元に、Jeepにマッチする3種のタイヤを紹介する。

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オフロード走行に特化したMT(マッドテレーン)
<MUD-TERRAIN T/A KM3>*純正装着はKM2

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『BFGoodrich』のラインナップの中で、もっともオフロード性能を重視したモデル。『ジープ ラングラー アンリミテッド ルビコン(Jeep Wrangler Unlimited Rubicon)』、『ジープ グラディエーター ルビコン(Jeep Gladiator Rubicon)』の純正タイヤに採用。

オフロード寄りオールラウンダーのAT(オールテレーン)
<ALL TERRAIN T/A KO2>

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見た目はゴツいが、オフロードからオンロードまで幅広い対応力を発揮する。

舗装路を重視しつつオフロードの匂いがする新製品
<TRAIL-TERRAIN T/A>

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オンロード寄りながら、キャンプ場の砂利道なども走れるよう設計された、2022年春発売のニューカマー。『ジープ レネゲード(Jeep Renegade)』や『ジープ コンパス(Jeep Compass)』に最適だという。

オフロードタイヤはブロックで泥や岩をつかむ!

ここに挙げたタイヤの接地面=ブロックパターンを見ればわかるように、タイヤのオフロード性能はブロック一つずつの大きさ、つまり泥や岩をつかむ溝の深さで変わってくる。従ってオフロード性能の高さはMT(マッドテレーン)、AT(オールテレーン)、TT(トレールテレーン)の順になる。
さらに着目すべきは、接地面から側面へかけて=ショルダー部のブロックパターンだ。3種のタイヤいずれもサイドウォールまでブロックパターンが伸びているが、これまたMT、AT、TTの順で深く刻まれている。成瀬氏によれば、ショルダー部の“一かき”がオフロード脱出能力に大きく関わるそうで、岩場走行を好むアメリカでは、このショルダー部のブロックが不可欠だという。

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「オフロード性能を重視すれば、MT、AT、TTの順番になりますし、見た目のタフさでも同じ流れになります。ただし、ブロックパターンの溝が深くなれば、オンロードでの走行音は大きくなります。標準仕様のATを装着しているラングラー・オーナーの方でMTを履いてみたい方は、その点をお忘れなく」

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では、実際にMTが標準タイヤのラングラー・ルビコン オーナーは、オンロードでのタイヤノイズが気になっているのだろうか。そのあたりを『Jeep Adventure Academy 2022 Basic Class』の参加者にたずね歩いてみたが、おおむね「気にならない」という返答だった。言わずもがな、ルビコンを選ぶオーナーであれば標準装備のMTタイヤに惹かれたところがあるだろうし、ましてや愛車の欠点を語ったりしないのだろう。
しかし読者の中には、以前MTを装着した際、深溝ならではのノイズやゴロゴロする感触が気になった方がいるかもしれない(筆者もその一人)。そんな特徴は、現在のオフロード系タイヤでは解消されているのだろうか?

「一言で言えば、ブロック剛性やゴムに使われているコンパウンドの結合力など、タイヤ自体の性能が格段に向上していますから、MTもATもかつてよりロードノイズが下がっています。ですが、最新モデルであってもATからMTに換えれば相応に音は大きくなると、そこはタイヤの特性としてご理解いただければと思います」

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MTとATはトラック用タイヤ?

タイヤには様々な種類があるが、「これは知っておいてほしい」と成瀬氏が言ったのは、タイヤの分類や要件に関わる話だ。

「MTとATは、アメリカのタイヤ規格(TRA)で定められているPとLTの分類で、LTに属しています。Pはパッセンジャーの頭文字。LTはライトトラックの頭文字です。アメリカには日本のような車検制度がないため、車の特性に応じて、どちらのタイプを装着するかわかるようになっています。LT規格のタイヤは構造自体が乗用車用とは異なっています。LTはより高荷重に耐えられるようにタイヤの骨格である内部構造がより頑丈な作りになっています。更にオフロード走行時の耐久性を確保するためにゴムも肉厚です。結果、タイヤ自体は相対的に重くなりますが、乗用車用より強いのは間違いありません。一方で最新のTTは、骨組みは乗用車規格ですがゴムの肉厚を増しているので、多少の岩があるキャンプサイトなどでも安心してお使いいただけます」

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更に最近のタイヤトレンドの注目は、山の頂を象った図柄の3PMSF(3ピークマウンテン・スノーフレーク)マーク。

「国際基準で定められたシビアスノー要件を示す印です。日本の本格的な冬(凍結路)にはスタッドレスタイヤが必要ですが、旅の途中、高速道路などで突然の雪にみまわれた場合、高い雪上性能を有する3PMSFマークがついたタイヤであれば、一定の雪上性能を満たしているのでひとまず帰ってくることができます。『BFGoodrich』のATとTTには、このマークがついています」

オフロード向けタイヤの交換時期は?

元よりタフな印象があるオフロード向けタイヤは、乗用車用より長持ちするように思える。成瀬氏から教えてもらった構造上の強さを知ればなおさらだ。「必ずしもそうでは……」というのが成瀬氏のアドバイスである。

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「乗用車用に対してオフロード用タイヤの耐久性が高いのは確かです。ただし、溝が深いので減り具合がわかりづらく、換え時が定めにくいかもしれません。私がご提案する交換タイミングは、車検2回ごとです。やはりゴムというのは性質上の劣化が避けられず、溝が深くてもやがて表面にはひび割れが起きる可能性があります。何よりゴム自体のしなやかさが減ると、雨などで路面温度が下がった場合に滑りやすくなります。ですから表面の摩耗具合だけにとらわれず、4~5年で新品に交換することをお勧めします」

「Jeepの性能を長く楽しんでもらえるタイヤ選びを」

最後に、成瀬氏からJeepオーナーに向けたメッセージを紹介する。

「我々が望むのは、Jeepというクルマの“どこにでも行ける”性能を、長く楽しんでもらえるタイヤ選びをしていただきたいということです。逆に望まないのは、流行や見た目だけでタイヤを選んだ結果、クルマ自体を嫌いになってしまうことです。チョイスの方法としては、まずそれぞれのタイヤの特徴を知っていただくのが一番。そして、Jeepはフェンダーアーチが広いですから装着できるタイヤの幅が広く、また『BFGoodrich』も豊富なサイズを用意していますが、設計上のベストが計算された純正サイズを基準にしていただければと思います。

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以上の話と矛盾させるつもりはありませんが、タイヤというのはもっとも取っ掛かりやすい上に、ベースパッケージを生かしつつ楽しめるチューニングパーツでもあります。あるいは、タイヤを換えるだけでライフスタイルまで変えられる可能性を秘めていると思っています。これを機会に、これまで以上にタイヤに関心を持っていただけたら幸いですね」

実は成瀬さんには、最初に意地悪な質問をした。タイヤがなければクルマは走れないと思っているのではないかと。これに対して成瀬さんは、「クルマの性能に対して出しゃばらない存在」という言動を最後まで崩さなかった。それがタイヤサプライヤーのプライドなのだろう。我々は、そんな誇り高きタイヤがあるからこそJeepを楽しめるという認識を、少なくとも成瀬氏が呼びかけた関心をより高めるべきと思った。

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Text:田村 十七男
Photos:望月 勇輝

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