Jeep初のPHEV、Renegade 4xe日本上陸!~電動化でより鮮明になったJeepの意志と決意~
4xe(フォーバイイー)と呼ばれる新たなラインに沿った『Jeep Renegade Limited 4xe』と『Jeep Renegade Trailhawk 4xe』の試乗会が開催。時代の要請とも言える電動化ですら犠牲にしなかったJeepの“あるべき姿”とは?ライターの田村十七男氏がレポートする。
前輪はエンジン、後輪は電気モーターで駆動する4WD
2020年10月22日(木)から25日(日)に横浜ハンマーヘッドで行われたJeepのニューモデル、『Renegade 4xe(レネゲード フォーバイイー)』の試乗会が開催された。
今回、用意されたのは『Jeep Renegade Limited 4xe(ジープ レネゲード リミテッド フォーバイイー)』と『Jeep Renegade Trailhawk 4xe(ジープ レネゲード トレイルホーク フォーバイイー)』の2モデル。
Jeep史上初のPHEV(プラグインハイブリッドビークル)はことさら注目度が高く、会期中の4日間で45媒体が訪れ、Jeepの新たな電動化ラインをテストドライブした。
RealStyleもこの試乗会に参加。従来であればイベント全般のリポートを行うが、今回の新規追加モデルが興味深いという以上に、電動化への取り組み方があまりにもJeepらしく、僭越ながら一歩踏み込んだ報告をさせていただくことにした。
一つの結論から先に伝えるが、Renegade 4xeに触れて感じたのは、オフロード性能を犠牲にするくらいなら電動化しないというJeepの強い意志だった。それについてはホームページ上でも、または試乗会で配布された資料にも具体的な文言で記されてはいない。だが、この後で紹介するRenegade 4xeの特徴を知れば、言葉よりも明確なメッセージとしてJeepのambitionが伝わってくるに違いない。
Renegade 4xeの構成でもっともユニークなのは、既存のRenegadeに2基の電気モーターを追加し、その内の1基をリアアクスルに配置することで、前輪はガソリンエンジン、後輪は電気モーターで駆動する4WDとしたところだ。これによりFFのみだったLimitedは四輪駆動となり、Trailhawkはリアアクスルへの動力伝達に使っていたシャフトが取り払われた。さらに電動モーターは60psを発揮するので、1.3ℓターボエンジンのLimited 4xeが131ps+60psの191psへ。同型エンジンのTrailhawk 4xeも同じく179psから239psへとパワーが加算された。
もう一つ付け加えたいのは、PHEVに不可欠なバッテリーのレイアウトだ。Renegade 4xeに搭載されるのは、総電力量11.4kWhのバッテリー。外部電源(家庭用電源200Vでは約4時間でフル充電可能)で充電が可能で、これが相当に幅を利かす代物だ。既存モデルの電動化ではラゲッジスペース部分をバッテリー置き場とする例も見られるが、Jeepはこれを嫌った。なぜなら、たくさんの荷物を積んで出かけたいのがJeepオーナーたちの嗜好と悟っているからだ。そこでRenegade 4xeではバッテリーをリアシート下に置き、最大330ℓのラゲッジスペースを損なわない設計とした。これも「ファンをがっかりさせません」などとは謳っていない。ただ事実を記すのみである。
PHEVで期待すべきはJeepの4×4テクノロジーとのハイブリッド
PHEVでもっとも期待するのは燃費の向上だろう。先述の通り、電気モーターの追加で最高出力が増したものの、Renegade 4xeはできる限りエンジンを回さないモーターファーストに躾けられている。それは取りも直さず環境への配慮に他ならず、Jeep史上最高燃費の実現に貢献することになった。具体的な数字を記しておく。
Renegade Limited/14.3㎞/ℓ → Renegade Limited 4xe/17.3㎞/ℓ
Renegade Trailhawk/12.1㎞/ℓ → Renegade Trailhawk 4xe/16.0㎞ℓ
(いずれも市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的なWLTC モード値)
ここからはRenegade 4xeの主装備について話していく。モーターファーストとした4xeだが、ハイブリッドシステムの作動状況はシフトレバー前方に備えられた3つのモードセレクターで選択可能だ。HYBRIDは、エンジンと電気モーターをもっとも効率よく使い分ける始動時のデフォルトモード。これを選んでも十分な充電量がある場合はモーターが積極的に介入する。ELECTRICは、その名の通り電気のみで走る状態。このモードでは48㎞の平均航続が可能だという。E-SAVEはバッテリーの充電レベルを維持するモードだ。
シフトレバーの後方に置かれているのはeCoastingのスイッチ。減速および制動による運動エネルギーを回収しバッテリーパックに貯蔵する回生ブレーキの作動の強さを任意で変更できる。
これら電動化による装備と、Jeep特有の4×4テクノロジーの融合もRenegade 4xeの魅力だ。路面状況に合わせて最適な走行モードが選べるトラクションコントロールシステムのセレクテレインシステム。Jeepファンにはおなじみのデバイスが改良型の回転スイッチとともに搭載されている。選べるのは、4WD Lock、4WD Low、ヒルディセントコントロールの他に、Limited 4xeでAUTO、SPORT、SNOW、MUD&SAND。Trailhawk 4xeはこれにROCKが加わる。ちなみにSPORTは、スロットルレスポンスとステアリングをシャープにするものとしてRenegade 4xeに追加された新モードだ。
すべてを伝えきれないほどの新機軸を盛り込んだRenegade 4xeだが、視覚的にハイテク化が伝わるのは、ドライバーの目前に置かれた4xe専用フルカラー7インチマルチビューディスプレイと、インフォテイメント内に4xe専用ページを設けたコンソール上の8.4インチタッチパネルモニターだろう。
それから、ボディ各所に貼られたバッジのブルー。見慣れたロゴに差し込まれた青みは実に新鮮だった。
既存と未知の中で起きていることは別世界
目指すべき未来の姿として登場したRenegade 4xe。Jeepが培ってきた4×4テクノロジーを増幅させる形で電動化した新機種は、新たなオーナーたちの遊び方によって可能性の輪を広げ続けるに違いない。とは言えRenegade 4xeを手にするには初期投資が必要だ。
Renegade Limited/368万円 Renegade Limited 4xe/498万円
Renegade Trailhawk/393万円 Renegade Trailhawk 4xe/503万円
PHEVとなった各車は、既存モデルより100万円以上の価格をつけることになった。現時点では各種補助金制度によって30万円ほど安くなるが、ルックスが同じクルマを選ぶとなるとこの価格差は無視できないところだろう。
だが、既存と未知は違う。既存にはアイドリングストップシステムが備わっているが、一度走り出せば体に染みついたエンジンのサウンドやバイブレーションがよみがえる。対して未知は、一定の条件に達しない限り電気モーターが駆動するので無音に近い状態が長く続く。エンジンに切り替わっても静けさが保たれるように感じるのは、無音に引きずられる錯覚かもしれない。
しかし電気のパワーは相当で、高速道路で加速を試みるとモーターに背中を押されるような感覚を味わうことができる。なおかつ同じ車体なのにしっとりした乗り心地に変わっているのは、電動化によって約300㎏増した車重のおかげかもしれない。ゆえにあなたが街中で同じ形の既存と未知が走る姿を目撃しても、その中で起きていることは別世界と呼んでいいほどの差異が生じているのである。これは、今回の試乗会で双方に乗って実感した驚きだった。
この4xe、本国では『Jeep Wrangler(ジープ ラングラー)』による試作も行っているという。その話を聞いて、こんな思いを強くした。Jeepが標榜するのは“Go anywhere, do anything”つまり、“どこへでも行ける。何でもできる”となれば電動化であれ何であれ、JeepがJeepである限り、オフロード性能を犠牲にするくらいならどこへも行かないし、何もしないのだろう。そんな逆説的な決意もRenegade 4xeから感じ取れた。
価格差の話題から逸れてしまったが、もし既存と未知の選択で悩むなら、一度両者を乗りくらべてみてほしい。一般的に動力源に大きな変更があればラインナップを刷新するのが常だが、Renegadeはガソリン車とPHEVを併売し、既存を旧型とはしなかった。ということは当分の間、同型の差異を体感できるチャンスが続くのである。個人的な意見を述べさせてもらえば、Renegade 4xeに含まれるのは未来税だと思いたい。新しい何かを手に入れるために、それは払うべき意義があるものと捉えることができるのではないだろうか。
Jeep Renegade 4xe 試乗会ギャラリー
今回使用したクルマ
『Jeep Renegade Limited 4xe(ジープ レネゲード リミテッド フォーバイイー)』
『Jeep Renegade Trailhawk 4xe(ジープ レネゲード トレイルホーク フォーバイイー)』
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Text:田村 十七男
Photos:安井 宏充(Weekend.)