ついにグランドチェロキー4xe上陸。試乗とともに現在のJeepの頂を体感する
3列シートのLから始まった、新型グランドチェロキーの段階的バリエーション公開。トリを務めるPHEVの4xeの国内上陸に合わせてさっそく試乗。Jeepのラインナップ最高峰の魅力に改めて迫った。
2ℓターボエンジンに2つの電気モーターを装備
3列シート仕様のLに続き、2022年10月に2列シート仕様/標準ボディの『ジープ グランドチェロキー (Jeep Grand Cherokee)』が国内で発表され、噂の的になっていた4xe(フォーバイイー)モデルがついに上陸した。プラグインハイブリッド、すなわちPHEVの国内導入は、『ジープ レネゲード (Jeep Renegade)』に続く2車種目。ラインナップの最小から最大へバトンがつながる形となった。
Jeepのロゴや、車名を示すバッジの縁が透明感のあるブルーに染められた『ジープ グランドチェロキー フォーバイイー(Jeep Grand Cherokee 4xe)』。まずは概要から紹介する。
ボディ構成は、先行上陸している2列シート仕様のグランドチェロキーと同一。エンジンも同じく、最大出力を272psとした1,995㏄の直列4気筒DOHCターボを採用。そこに、63psと145psの2つの電気モーターを装備。電気のみで約53km の走行が可能な、外部からも充電できるPHEVとした。
4xeのみに備わるドライブモードは全3種。燃費を最小限に抑えるよう設計されたHYBRID。電気モーターのみで走行するELECTRIC。バッテリーの充電レベルを維持するe-SAVE。モードの切り替えプッシュボタンは、ステアリングハンドルの右奥に置かれている。充電用コンセントは、左フロントフェンダー後方に配置。充電状況はダッシュボード上部のランプでも確認できる。
用意される4xeのグレードは、3列シートのLでも採用されているサミット リザーブとリミテッドの2種。価格は1,227万円と1,037万円。
以上の4xe特筆ポイントはおよそ内側なので、外見的にエンジンモデルと区別はつかない。サイズも全長が10㎜、リミテッドの方が短いだけだ。これも外からではわからない差異を一つ上げれば、エンジンモデルのリミテッドより車両重量が増している。リミテッドの2,070㎏に対し、リミテッド4xeが2,410㎏。サミットリザーブ4xeが2,510㎏。その分がPHEV化のリアルとなるが、バッテリー等の搭載によって居住空間やラゲッジスペースの広さが損なわれているわけではない。別の表現を用いれば、場所を取るはずのバッテリーをどこに収めたのかわからないほど巧みなPHEV化、と評してもいい。
ドライブインプレッション、4xeの加速感は?
グランドチェロキー4xeの上陸に伴った今回の試乗では、サミット リザーブ4xeとともにエンジンモデルのリミテッドも連れ出した。ごく短時間のドライブだったので多くは語れないが、気が付いた点をいくつか示す。
何はともあれ、標準ボディのグラチェロを待ち望んだファンが多かったと思う。4代目から10年ぶりのモデルチェンジが実施されたこの5代目は、3列シート仕様のLが先に発表されたことで、従来のグラチェロ好きをいささか戸惑わせたかもしれない。
そこで改めて、最新モデルの外観的特徴に焦点を合わせてみる。1962年に登場したSUVの祖と呼ぶべき『ジープ ワゴニア(Jeep Wagoneer)』にインスパイアされたという、ロングルーフ、ロングフード(ボンネット)、シャークノーズ。特に7スロットグリルを逆スラント化で表現した鼻っ柱を含め、顔つきはより攻撃的になった。
ボディは総じてサイズアップを果たしているが、全高のみ先代より10㎜ほど低くなったことで、全体的にはこれまで以上に巨大な塊が地を這うイメージが増している。その――スタイリッシュにブラッシュアップされているのでマッチョと呼ぶのは差し控えるが――塊感こそがグラチェロならではの魅力だ。それはまた、これまで受け継いできた標準ボディのほうがより顕著だと思う。
さて、ドライブインプレッション。最初に注目すべきは、どちらも同じエンジンを搭載している点だろう。過去には5ℓクラスのV8エンジンを積んだこともある現状2t越えの車体に、1,995㏄の直列4気筒DOHCターボエンジンは最適解なのか? その問いに、あくまで第一印象で答えさせてもらえば、軽やかなパワーの立ち上がりに不満は感じなかった。あるいはエンジン自体は相応に唸りを上げたのかもしれないが、静粛性を高めたニューシャシーにはほとんど響いてこなかった。
では、PHEVとエンジンモデルに違いはあるのか? これに関しては、加速において若干だがPHEVのほうが滑らかだった気がする。スピード自体は変わらないものの、野球やゴルフでよく言う球の回転数の多さによって、すぅっと伸びる感じというか。
一方、先に触れた車重がどれほどドライビングに影響を与えるかについては、正直なところ今回の試乗ではよくわからなかった。340~440㎏の差がハンドリングに何かしらのサインを示すとは思うが、PHEVがもったりした動きを見せたわけでもない。ただ、車重が増せばおのずと燃費に関わってくる。しかし、電気モーターのサポートを受ければ総合的な低燃費と環境への配慮につながるのがPHEV化のメリットだとすれば、このあたりは2車種のオーナーによる日常走行のデータ、または肉声を待って判断したいところだ。
PHEVであろうとJeepはJeepのまま
「世界的なエレクトリックSUVブランドとして主導的な地位を確立するため(中略)2030年までにアメリカの新車販売の50%を、そしてヨーロッパで販売する100% の製品をバッテリーエレクトリック(BEV)に」
これは、Jeepが2022年9月に発表したプレスリリースだ。それに先駆けたブランドの中長期的な指針に則って、まずはレネゲード。そしてグランドチェロキーにPHEVが追加された。また、ホームページ上ではラングラー ルビコン4xeがすでに顔を出し、3月18日(土)から本格的に発売フェアが開始する。
説明するまでもなく、気候変動やSDGs等々、様々な社会課題に直面する中で、クルマにも変革が求められている。その過程でハイブリッドカーやPHEV、あるいは電気自動車の開発と普及が進められているのが今日の状況だ。
それが避け難い時代の流れであることは誰もが承知している。だから我慢をしなければならないのか。だからJeepもPHEV化を急ぐのかと言えば、そうではないと思う。たとえば新しいグランドチェロキーが何を我慢しているかというと、そんな個所はほぼ見つからない。この地上のどこへでも走っていける4輪駆動を軸とした走破性はさらにバージョンアップしているし、ましてやJeepラインナップの西の横綱たる都会的なスタイルは新たなイメージで表情されている。要するに、時代の要請を受けようとも、JeepはJeepのままだ。グランドチェロキー4xeで真に着目すべきポイントはそこではないだろうか。
というような大上段の構えから、いきなり稚拙な話になることを謝りたい。個人的にグラチェロには、日の当たる場所で爽快な汗をかきながら走るラングラーとは対照的な、それとなく翳(かげ)りを帯びたダークヒーロー的な雰囲気を持ち続けてほしいと思っている。強いて挙げれば、クリストファー・ノーランが監督したバットマン三部作のような。重要なのは“スマート”さだ。いかに鍛え上げようと、どんな場所でも疾走できる身軽さを常に磨き上げている。そんな印象は最新のグランドチェロキーにも、もちろんPHEVにも感じ取れた。
気付けば、ラインナップ最高峰にしてロングと標準の二つのボディ。さらにエンジンとPHEVを交えて計5種類ものバリエーションが選べるようになったグランドチェロキー。できればそのすべてを試して、現在のJeepの頂を体感してほしい。
今回使用したクルマ
『ジープ グランドチェロキー サミット リザーブ フォーバイイー(Jeep Grand Cherokee Summit Reserve 4xe)』
『ジープ グランドチェロキー リミテッド (Jeep Grand Cherokee Limited)』
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Text:田村 十七男
Photos:安井 宏充(Weekend.)