Jeepが広告賞を受賞!審査員のコシノヒロコ氏にたずねた選考理由とJeepのエピソード
「Jeepじゃなければダメ」
言葉の一つ一つに深い説得力を感じるのは、膨大な経験と実績を有しながらも過去にとらわれない現役のトップランナーだからこそだと感じ入った。半ば予想した通りに圧倒されながら、いよいよJeepそのものに関する印象をたずねる時間がやってきた。事前に調べた範囲でコシノヒロコ氏とクルマの接点はあまりに薄かったから、あるいは空振りに終わる質問になるかもしれないと覚悟はしていた。ところが……。
「ずいぶん前、蓼科の別荘でパートナーと過ごしたときはJeepが頑張ってくれたんですよ。山の中で材木を引いたりしてね。林業のような使い方でしたけれど、どこでも入っていけるでしょう。本当に賢く立派に働いてくれました」
Jeepとのリアルな思い出があるんですね?
「いろんなところに行けるという点では、これもかなり昔の話ですけれど、アフガニスタンでは凄い戦力でしたよ。写真家に付き添った旅で、首都のカブールから入って大仏で有名なバーミヤーンまで行きました。まだ破壊されていない頃。まさに道なき道を走るんだけど、倒木なんか簡単に乗り越えてくれて、Jeepじゃなければダメだって何度も思いました。あれは有り難かったです。乗り心地はよくなかったけれど。それはでこぼこ道だったせいかしらね(笑)」
Jeepに乗った経験があるというのはまったくの予想外だった。他の話題でもそうだったが、Jeepの話になるとことさらチャーミングさが増して、聞いているこちらまで心が躍り出すような気分になった。たとえば描き手が目の前に立ったバレエダンサーたちのように。
これから何をしたいですかと最後にたずねたら、「いろいろやっちゃったしねぇ」とまた笑った。
「仕事に関しては、デジタルの世界でもファッションを広めていく取り組みを広げていきます。アートも含めて全体的なところでは、次の世代の人たちがより良く生きるための豊かさを触発してあげられるような何かを伝える準備に入らなければと思っています。限りある人生、何をやるべきか考える時期ですしね。でも、忙しい。仕事もあるし絵も描きたいし、友達とゴルフもしたいし。やらなきゃいけないことだらけですよ」
ご多忙とは存じますが、今度は審査ではなくJeepとの楽しいコラボレーションなどをご一考願えればと思うのですが、いかがでしょう。
(この記事の制作中に、コシノヒロコ氏と共にナショナル ジオグラフィック日本版広告賞の審査員を務め、Jeepを推してくださった柳生博氏が永眠されました。ご冥福をお祈り申し上げます)
Text:田村 十七男
Photos:Masato Yokoyama