Interview

2022.05.12

Jeepが広告賞を受賞!審査員のコシノヒロコ氏にたずねた選考理由とJeepのエピソード

『Real Tabi with Jeep~Jeepと行く、日本の「こころ」を探る旅、奄美大島編』が、ナショナル ジオグラフィック日本版広告賞の審査員特別賞を受賞。審査員メンバーの世界的ファッションデザイナー、コシノヒロコ氏にその選考理由とJeepのエピソード、ファッションやアートへの思いをたずねた。

Real Tabi』(ナショナル ジオグラフィック日本版とJeepのコラボレーション企画)で取り上げた『Real Tabi with Jeep~Jeepと行く、日本の「こころ」を探る旅、奄美大島編』が、ナショナル ジオグラフィック日本版広告賞の審査員特別賞を受賞した。これを記念し、審査メンバーのコシノヒロコ氏に選考理由をインタビュー。思いがけず聞くことができたJeepのエピソードと併せ、ファッションとアートの第一線で活躍するそのスピリットの一端をお伝えする。

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▲コシノヒロコ氏。

コシノヒロコ氏のギャラリーがある兵庫県芦屋市へ

招かれたのは、国内屈指の高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市に建つ『KH GALLERY』。建築家の安藤忠雄氏が手掛けたかつての自宅を、KHのイニシャルが示す通りコシノヒロコ氏の作品を披露するため改装した美術館だ。それはアートにふさわしいという他にない空間で、以前はここに暮らしがあったと想像できないことが最初の驚きだった。そして、展示作品にはつい先日と言っていい2022年に描かれた絵画がいくつもあったこと。これはプロフィールで知った1937年生まれに鑑みた驚きだが、今も創造の発露が絶え間なく示されている事実を知って唸ってしまった。

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その中の1枚、実際には4枚を組み合わせた大判の、バレエダンサーの様々な姿を描いた作品の前にコシノヒロコ氏が立ったとき、不思議なことが起きた。それまではキャンバスの中で各々ポーズを取ったまま静止していたダンサーが動き出したのである。実際に彼女たちが動くはずはなく、そのための仕掛けも具わっていないから錯覚に過ぎないのだが、まるで絵が喜んでいるように見えたとご本人に告げたら、特段気にも留めない様子で微笑みながらこう応じた。

「そんなこともあるのかしらね」

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改めてあらゆる経緯を説明する。ナショナル ジオグラフィック日本版とJeepのコラボレーションで進められている『Real Tabi』が2021年に奄美大島を取材したことをきっかけに、世界自然遺産に登録された島にクラウドファンディングを通じたEV充電スタンド設置プロジェクトを立ち上げた。実際に設置されるまでの模様を伝えた記事が、今回で27回目になるナショナル ジオグラフィック日本版広告賞の審査員特別賞を受賞。その審査員のお一人がコシノヒロコ氏だった。

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コシノヒロコ氏は、もはや説明するまでもない世界的ファッションデザイナーのコシノ三姉妹の長女で、70年代末から名だたるショーで活躍。音楽やアートとのコラボレーションにも積極的に挑みつつ、“国際的スポーツ祭典”では長きに渡り日本代表チームのユニフォームデザインを担当。一方で、幼少期は服より先に絵画に興味を持ち、「絵を描けるなら」と決めてファッションデザイナーになったほど、つまりは生粋のアーティストだ。
その人に、件の広告賞でなぜ『Real Tabi』を、ひいてはなぜJeepを選んだかを聞かせていただくため芦屋を訪れた。ちなみにコシノヒロコ氏は、自身の名を冠したファッションブランドの本拠地である東京と、『KH GALLERY』の他にアトリエもある芦屋を毎週往復する生活を40年続けているそうだ。「会うだけなら東京でも」と互いに笑ったが、自身の分身たる作品の前だからこそ思い出してもらえたエピソードもあったのではないかと、後にここまで来た意味を悟ることになる。

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「衣服は人を包む身体建築」
人にいちばん近い環境は服がつくっている

「広告は商品を売るためのものだけれど、物より企業の考え方が表現されていたところに感銘を受けました」

こちらの主題である選考理由をたずねると、淀みない言葉が次々に発せられた。

「クラウドファンディングを利用しながら消費者をも巻き込んでいく取り組みは、時代に即しているという以上に、新しい文化を動かしていく力になると思います。(『ジープ レネゲード フォーバイイー(Jeep Renegade 4xe)』を始めとする)クルマの電動化はSDGsの観点でも注目されていますが、企業の企画の成果を世の中に還元する、その思いを次世代の人々につなげていこうとするJeepの発想が素晴らしい。効果的で好意的な広告手法でした。今後はJeepも電気で走るというのもおもしろいですよね」

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以上のような賛辞を頂戴したところで、おそらく他でも審査を依頼されるだろうと思い、対象が何であれ選考する際の基本姿勢を聞いてみた。

「美しいものに敏感になっている私の生活の中で何が響いてくるか、常に感性を張り巡らせているんですね。というのは、既存の常識の外から新しい美しさを発見するのがデザイナー。それを生きる希望に形づくるのがデザイナーの仕事だからです」

その観点にJeepが響いた?

「世の中が混沌とするほど、人は楽しく豊かに生きていきたいと願うものですからね。この時代は環境がキーワードになっていますが、見落とされがちなのは、人にいちばん近い環境は服がつくっているという事実です」

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インタビューを終えてから、同席したプレスの方から見せてもらった作品集に「衣服は人を包む身体建築だと思う」という言葉が記されていた。

「服がつくる環境をその人らしさ、または人間性と言い換えればわかりやすいかもしれません。その流れで言えば、たぶん誰でも人間性を高めたいと願っている。つまりは良い環境を整えたいと思う。それを人は服を着ることで毎日のように行っているわけだから、服を着て出かけた先でも同じように行えたら、おのずと環境はよくなっていくと思いませんか? 結局は一人ひとりの考え方なんですよね。Jeepの広告は、どちらかと言えば小さな一歩に見えるけれど、環境問題を抱えた社会で大事なことを一人ひとりに向けてしっかり伝える姿勢が感じられたのです」

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