Outdoor

2012.07.02

アウトドア=「現代の野点」! スタイリスト流、粋な外遊びの極意

いつか「北野大茶湯」のような茶フェスを開きたい
和の外遊びに傾倒するスタイリストの新たな提案

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    火のついた薪(型クッション)に、お気に入りの吹き竹で空気を送る(フリをする)岡部さん
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    普段、キャンプやピクニックに活躍している私物を広げ、どんな空間を作るか思案中。
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    ショップの顔とも言える店舗正面のディスプレイではフェス仕様のコーディネートを披露。

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お気に入りのキッチンツールは籠にまとめて。籠を留めるバンドはブラックダイヤモンドのもの。ハイテク×アナログの合わせ技だ。

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出来上がったのは和の道具使いが印象的なテントサイトの風景。

ウトドアのエッセンスを取り入れたスタイリングや空間ディレクションなどで、独自の世界感を繰り広げるスタイリストの岡部文彦さん。東急プラザ表参道原宿店4階にある「HUMOR SHOP by A-net」にて、メンズ&レディスのウエアを絡め、「都会の中のアウトドア生活」をテーマにしたショップ・イン・ショップを手がけると聞いて、そのスタイリングの現場にお邪魔した。
「アウトドアといっても多摩川でナイトピクニックとか、気軽なキャンプがメインで……。どちらかと言えば、マニアックな道具が大好きなギアオタクです」

岡部さんがアウトドアにはまったのは今から十数年前、友人たちと楽しんでいた「車中泊の旅」がきっかけだった。年に一度、年末年始の恒例行事として行われていたこの旅では、車一台で四国を一周したり、出雲大社から鳥取砂丘、琵琶湖から伊勢神宮など、気になるところへ自由気ままに出かけたという。「なるべく人がいなくて景色のいいところを見つけたら、そこでキャンプするみたいにステイしてました。居心地のいい車中泊ポイントを探すのはなかなか難しくて、でもそれが旅の楽しみの一つでもありました」

「行き先を決めて走り出す。景色のいいところを見つけが今夜の宿です。道の駅じゃなくてあえて橋の下とかね、居心地のいい車中泊ポイントを探すのが旅の楽しみでした」

「自分好みの景色を切り取り、そこでのんびり過ごす」という外遊びの醍醐味は、この時に確立された技らしい。アウトドアでは当たり前のセオリーのようだが、ロープで仕切られたキャンプ場でキャンプをするだけでは、「自分なりの景色を切り取る」感覚は理解できないのではないだろうか。

そんな話をしながらも、アウトドア用ロープやら大小さまざまの籠やらを駆使して岡部さんが作った「都会の中のキャンプ」的空間には、空を飛ぶワシ(のリアルなぬいぐるみ)あり、ソロテントの前には焚き火(型クッション)あり。出来上がりは写真をご覧頂くとして、テントの中にあるのは花を飾った魚籠と……茶道具?
「遠くに瞬くビルの灯りを肴に、おいしいお茶をいただく。『都会の中のアウトドア』というお題に対してそんな提案がしたくて、テントの中を茶室に見立ててみました」

茶道とアウトドアは通じている、これが岡部さんの持論。ソースは漫画『へうげもの』だ。出世と物、二つの欲のはざまで葛藤する戦国武将、古田織部の生き様を描いた作品で、岡部さんが器や民芸品にハマるきっかけにもなった、いわばバイブルである。

「たとえば豊臣秀吉が千利休らとともに北野天満宮で開いた北野大茶湯(きたのだいさのえ)、あれは日本で開かれた初めてのフェスだったんじゃないかって思うんですよね。屋外に茶室を持ち込んで、お気に入りの道具を使い野点で茶を振る舞う行為は、なんだ、茶会って現代のアウトドアと同じじゃないか。そう考えたら、美の空間を極める茶道が身近に感じられました」

器を巡って一国一城を争う、戦国武将たちの「道楽至上主義」ともいえる姿に粋を感じるとともに、日本人的感性に貫かれたアウトドアの楽しみ方は岡部さんの外遊び観にも大きな影響を与えた。「じゃあ、現代版の野点をキャンプやピクニックに取り入れてみたらどうだろう?」と。

こうして岡部さんのアウトドア道具に加わったのが各種お茶道具や大小さまざまな籠、民芸品など和の小物たち。スタイリストの観点からも、機能的なアウトドアギア民藝のアイテムは親和性が高いと感じている。

「例えば文庫籠には細かいキッチンツールや壊れやすいものをまとめて収納する。シュロの入れ物は携帯用の米櫃として利用する。軽くて丈夫だし、何よりも屋外の風景にしっくり馴染む」

岡部さんにとってのキャンプはいわば男の「ままごと」だ。ままごとを楽しむには機能と使い勝手に裏打ちされた、男心をくすぐるギアと、山や海、川、あるいは橋のたもとなど自分好みのランドスケープが欠かせない。そしてこれら要素が揃ったとき、ままごとは「粋な外遊び」に変わるのかもしれない。

「茶会だって、周囲の風景を借景して野点を楽しんできましたし、外遊び=ランドスケープを楽しむと言っても過言ではありません。そのひとときをどんな風景を切り取って過ごすのか、自分にとってはギア選びと同じくらい大切な要素です」

そんな岡部さんが最近気になる外遊びといえば、ずばり「アーバンアウトドア」。たとえば北の丸公園から自宅まで、クルマやバスが通らない道を選んで歩いてみる。可能なら、途中でステルスキャンプを試みる。都会も山間も、「自分で選んだ景色を眺めて過ごすひとときの濃密さは変わらないんだ」と気づきがあった。

「歩いてみて初めてわかるんです。多摩川の川縁から眺める都会のビル群だって北アルプスの稜線と同じくらい美しくて、それこそ一大ランドスケープなんだって」

HUMOR SHOP by A-net

http://www.a-net.com/hmr

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