秩父・長瀞の美しい紅葉を愛でながら 絶品かき氷を食べる幸せ
11月には足湯もオープン。進化するかき氷店「阿左美冷蔵」
秩父・長瀞にある天然氷のかき氷店「阿左美冷蔵」。夏は日本全国からかき氷目当てに客が押し寄せ、2時間待ちの長蛇の列となる人気店だ。
かき氷のシロップがかかっていない部分を一さじすくって口に入れると、綿あめの様にふわふわで、淡雪のようにしゅっと口の中で溶けて、この瞬間、今までのかき氷の概念が覆される。口に残る淡い甘さ。これが天然氷の自然の旨味なのだそうだ。
「阿左美冷蔵」は明治23年創業の老舗の氷屋。昭和30年代に電気冷蔵庫が普及し始めたことを皮切りに店の存続が厳しい状態にまで経営が落ち込み、平成4年、現在の5代目店主、阿左美哲男さんの代になって、かき氷店に転向。店を軌道に乗せるまで、試行錯誤の連続だったという。
「子どもころから天然氷を見て育っていますからね。私は20年間、サラリーマンで営業をやっていたんですが、いつか天然氷が再評価される時代がくるんじゃないかと、ずっと思っていましたね」と阿左美さん。
天然氷は、落葉広葉樹林に育まれた宝登山麓から湧き出た伏流水を、屋外のプールで冬の間に自然に凍らせて作る。凍らせている途中で雨や雪が降ってしまったら、氷がにごってしまうので、もう一度、やりなおさなければならなくなることも。氷の表面の枯れ葉などの不純物を取り除く作業など、透明度の高い氷ができるまでにかかる手間と時間は想像を絶する。
そんな丹誠込めて作られた天然氷のおいしさを堪能できるのが、お店の看板商品である「蔵元秘伝みつのかき氷」(¥1,000)だ。和三盆を煮詰めた秘伝みつは上品な甘さであっさり。一緒に運ばれる、ねっとりとした食感の抹茶餡や口がさっぱりする箸休めの梅干しを間にはさんだりして、味の変化も楽しい。天然氷とみつの甘さが絶妙なエレガントな氷菓子で、清少納言もお好きだったらしいというエピソードも妙に納得させられる。
季節のフルーツを使った果肉汁たっぷりの限定かき氷は、フルーツのフレッシュさが楽しめる逸品。たとえば、秋であれば桃やかきなどをジューサーなどで絞り、そのまま氷にかけるという贅沢さ。その他、いちごやみかんといった自家製シロップもすべて果汁100%無添加というこだわりよう。天然氷に加えて、シロップのおいしさにもここならではこそ、リピーターが後を絶たないのだろう。
「毎月1日にメニューを変えるんですが、僕自身がいろんなことに挑戦したい性格なので、ある日突然、新メニューが増えていたりします。常連さんの中には”メニュー全部制覇するぞ!”とおっしゃる方もいらっしゃいますが、多分、追いつかないでしょうね(笑)」という阿左美さんは、実は相当な趣味人。木版画作家として数々の賞を受賞し、世界で唯一の氷の版画家としても活躍。ジャズをこよなく愛し、春と秋には仲間たちともライブを開催している。
「”遊び”が大好きなんです。この店は僕の舞台、ステージですから、かき氷はもちろん、この空間をどのようにしたらお客様が楽しめるか、いつも考えていますね。ちょっとしたこともこだわりを持ってやっています」。
そんな阿左美さんの次なる挑戦は「足湯」。なんと店内に足湯スポットを作って、かき氷を食べたお客様が、ぬくぬくぽかぽかになって帰ってもらおうという試みだ。2011年11月1日オープン予定。秩父・長瀞で紅葉やライン下りを楽しんだ後は、こちらで絶品かき氷と足湯をぜひ堪能して欲しい。
阿左美冷蔵 金崎本店