Jeepと親和性が高いブランドを扱うアメア スポーツ ジャパンが挑む“国内ガチンコ勝負”とは?
サロモンやアトミック等々、Jeepファンにも馴染み深いアウトドアブランドを国内展開するアメア スポーツ ジャパンの代表取締役社長・岸野博氏に、同じ会社内で競合するブランドを競わせ育てる“アスレティックな戦術”をたずねた。さらに同社が扱う4ブランドから、Jeepファンにお勧めのスペシャルアイテムを紹介してもらった。
競合ブランドを同時展開する日本法人
まず、もろもろの経緯をご理解いただくために相関図から紹介する。
このRealStyleに何度もご登場いただいているプロスキーヤーの佐々木明さんと、小野塚彩那さんの愛車が、『ジープ グランド チェロキー(Jeep Grand Cherokee)』。そして、佐々木さんのスキーがサロモン(Salomon)。小野塚さんはアトミック(Atomic)。そのサロモンとアトミックを日本で展開しているのが、アメア スポーツ ジャパン。同社はまた、アトミックやサロモンのロゴを記したグランドチェロキーをプロモーションカーにして全国のイベントを駆け回っており、実はJeepとも直接的な縁が深い。
「それよりも、競合するサロモンとアトミックを同じ会社で展開しているとは?」
スキーブランドに詳しい方なら、そんな疑問を抱くかもしれない。この辺りも説明しておく。
アメア スポーツ ジャパンは、フィンランドに本社を置くアメア スポーツ コーポレーションの日本法人。親元の企業は、工業系製造業として1950年に創業以降、様々な業種やブランドとの統合で成長と拡大を図ってきた。70年代に入るとスポーツ事業にも手を広げ、野球、テニス、ゴルフの用品で有名なアメリカのウイルソンや、オーストリアのウィンタースポーツ用品メーカーのアトミックなどを続々と傘下に配し、2002年に現在の社名に改めた。
そうした本社の意向に人生を翻弄されたのが、他ならぬ現アメア スポーツ ジャパン代表取締役社長の岸野博氏なのである。
サロモンなんて3日でつぶれる!?
群馬県水上生まれ。子供の頃からのスキー好きで、大学時代に出場した全国学生岩岳スキー大会では、エントリー3種目中2種目で優勝するほどの実力を身につけた。
「ですが、学生の大会で勝った程度では、全日本選手権や世界大会に出るというその先がなかったんですね。しかもスキーに明け暮れていたものだから、まともな就職活動もしていませんでした。ただ、幸いなことに時代はスキーバブルの真っただ中だったので、スキーを履いているだけで仕事にありつけたのです」
大学卒業後、アルバイトの形で入ったのが、後に振り返れば運命とも言えるサロモンだった。しかし当時は後進ブランドだったがゆえ、歯がゆい思いを何度も経験したという。
「サロモンなんて3日でつぶれる。これは有名スキーブランドに入った先輩からの一言でした。レーシングサービスで大会に行っても居場所がなかった。すごく悔しかったけれど、むしろ闘志が沸いてきました。いつか必ず勝ってやるぞと」
サロモンの国内普及に努めること20年。トップブランドと戦えるポジションまで押し上げ、自らも営業部長となったところで、新たな挑戦を模索した。
90年代にアメア スポーツが統合したアトミック。日本での扱い先が変わるタイミングの2003年、岸野氏はアメア スポーツ ジャパンに入社する。担当したのは、さらなる国内認知向上をミッションとしたアトミック。サロモンでの成果を見込まれたのは言うまでもない。
「ところが、2006年にアメア スポーツがサロモンを買うんです。びっくりしましたね。驚きはそれだけにとどまりませんでした。当然ながら日本でもサロモン事業部が立ち上がるわけですが、当時の社長から事業部長になってほしいと……。それは筋が通らないと断りました。とは言え、サラリーマンとして社長に頭を下げられたら、それはねぇ。結局、いろいろ飲み込みながら辞令を承諾したものの、心境は複雑でしたよ。社内から裏切り者呼ばわりのメールが届きましたからね。あれは半ば本気だったんだろうなあ(笑)」
ブランド間競争から生まれる望外の喜び
アメア スポーツ ジャパンは現時点で6ブランドを扱っているが、やはりサロモンとアトミックには互いにライバル意識があるという。ブランドカラーに基づくことから青と赤の戦いと呼ばれる社内バトルに、岸野氏はこんな油を注いでいるそうだ。
「年に一度のゴルフ対抗戦は、事業部も契約選手もブランドで分けて、あえてガチンコ勝負をさせています。僕は抽選で引いてもらったほうに入ります。スキーヤーはゴルフが上手でね。この戦いは盛り上がりますよ」
そのあたり、自身が競技スキーヤーだったことが関係しているのだろうか?
「ビジネスも勝負事ですからね。自ら掲げた数字目標を達成することで信用を勝ち取る意外にないと思ってやってきました。ブランドが弱くなる外的要因を探せば、今年は雪が少ないとか、あるいはコロナのせいだとか、それらしい理由は見つかります。けれど、理由がどうあれ勝負には勝たなければならない。これは会社としてもブランドとしても、重要なモチベーションです。それからブランドに関しては、ある友人の言葉が胸に響いています。
すべて自分の子供と思いましょう。子供なら、出来の良し悪しがあってもみんなかわいく見えるからと。だから僕も、ブランド間ではあえて兄弟喧嘩をさせます。親なので最後の責任は取りますが、途中は見て見ぬふりを決めて」
まさに切磋琢磨。熾烈な社内競争には、望外の喜びも生まれるという。
「2021年3月に開催された全日本スキー技術選手権大会では、1位と4位にアトミック、2位と3位にサロモンの選手が入りました。各チームのお祝いに駆け付ける際には赤と青のジャケットを着替えましてね。その慌ただしさは至福という他にありませんでした」
Jeepに乗るアスリートに憧れるようにして……
いまだ止まぬコロナ過は、外出を控える層によってアメア スポーツ ジャパンにも影を落とした。しかしアウトドアスポーツはソーシャルディスタンスが取れることから、ウィズコロナを見据えて前進するという。それに伴うアメア スポーツ ジャパンの今後の方針を語ってもらった。
「アメア スポーツというのは屋根に過ぎず、支える柱となるのはあくまでブランドです。そして我々のブランドは、どれも各カテゴリーのベスト3に入っています。なぜなら、ユーザーが求めるクオリティとエッジのある個性を兼ね備えているからです。そこから生まれる“だから欲しい”というブランドイメージを崩してはならない。これに関しては、ジュニア世代の育成も大事だと思っています。子供たちにとって夢のないブランドは残れません。“あれに乗ったら上手になれるんだ”“勝ったら乗れるんだ”と憧れてもらうこと。サロモンやアトミックは現在も勝利に不可欠な品質を提供していますが、それをジュニア世代に伝えていく努力を惜しんではいけませんね。アークテリクスもまた、これを着ていれば山では困ることがないというレベルまで徹底的な製品開発を行っています。スントは今年で85年、スポーツウォッチとして最も信頼のあるブランドです。本質を求めるユーザーに嘘は通用しませんから、どんなときも本物であり続けることが各ブランドにとって、もっとも大切です」
日本市場というワードが出たところでたずねたいのが、ジャパンの要望が本国の製品開発にどれほど反映されるかだ。
「日本の声は響いています。たとえばアトミックのデモ用スキーは、日本独自の基礎スキー競技のために開発され、他の国でもセカンドバージョンとして販売されています。それからウェアのカラーも、繊細な日本人の感覚を満足させられる注文をします。かつては海外ブランドというだけで売れましたが、もうそんな時代ではありません。妥協のない交渉を行います」
最後に、Jeepとの関係についてうかがった。
「我々が扱うアウトドアのブランドは、どれもクルマとの親和性が高いんです。フィールドへ向かうのにクルマは不可欠な存在ですから。その縁を確かなものとして広めてくれているのが、Jeepに乗っている佐々木明さんや小野塚彩那さん。そして3月の大会で優勝した武田竜さんです」
武田竜さんは、先の全日本スキー技術選手権大会で総合優勝を果たしたアトミック契約の選手であり、グランドチェロキーのオーナーでもある。
「彼らはJeepであちこちに出掛けて活動している様子をSNSで報告してくれますが、あれはブランドにとってリアルな姿です。彼らに憧れるようにして、アウトドアやクルマを楽しむ人が増えてほしいと思います。ウチにはバンのプロモーションカーもありますが、誰もがそれとは別に3台所有しているグランドチェロキーに乗りたがりますよ。移動が楽な上に荷物が積める。何より除雪されていない朝のゲレンデに乗り込んだとき、4WDの機能と車高の高さに心から感心します」
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