Renegade 4xeで世界自然遺産の奄美大島へ
彼女の決心を支えたものは海ではなく山にあった
島ではもう一人、2020年から奄美大島で暮らし始めたというプロSUPサーファーの佐藤優夏さんにも会った。彼女には、移住者の視点で島の魅力を語ってもらおうと思った。
しかし、青と白のコントラストが鮮やかな海岸でSUPを操る姿は景色に馴染み過ぎていた。移住2年目という情報は嘘と告げられたほうが納得するほどに。そして彼女自身もこんなことを口にするのである。
「最初は練習拠点として奄美大島に来たのだけど、今となってはSUPのポジションは三番目くらい……」
東京都あきる野市出身。山や川で育った少女は元来の身体能力の高さに磨きをかけ、中高はバスケットボール。東京女子体育大学ではラクロスで活躍した。マリンスポーツへの興味は大学在学中に芽生え、まずはサーフィンを。当時流行し始めたSUPとはハワイ旅行で出会い、その半年後に出場した2015年の全日本選手権では総合準優勝を収めてしまう。
「ハワイで乗せてもらったのがたまたまレース用で、それが自分に合ったことと、SUP人口が少ないときだったので、あれはただラッキーだっただけ」と謙遜するが、翌年から2年連続で全日本を制覇。2018年以降は海外に進出し大きな試合で結果を残すと、国内のマリンスポーツ界でその名を知らぬ者はいない有名アスリートになった。ちなみに前出のアマニコガイドサービスの白畑さんも、彼女の存在をよく知っているという。
「奄美大島は、スポンサー関係の方の紹介で2019年に初めて来ました。SUPの環境として最高だっただけでなく、誰も私を知らない場所だったのもよかったんです。その頃は、もし移住するならオーストラリアと思っていたんですけどね」
当時の佐藤さんには、2020年に世界ナンバーワンとなって引退するプランがあった。それだけに2020年1月に再訪した奄美大島での合宿は、かつてないほど気合いに満ちていた。ところが世界中がコロナ禍に飲み込まれ、大会はすべて中止に。地元に戻っても仕方ないと考えた佐藤さんは島に留まるのだが、彼女の決心を支えたものは海ではなく山にあった。
となりの集落で借りた農地で将来はサトウキビを育てたい
「1日来なかっただけで、キュウリがこんなにおっきくなってる!」
島北部の用(よう)集落の自宅からクルマで約10分。「大家のおじちゃんが快く貸してくれた」というレネゲード2台分の畑に入ったとたん、海にいたときよりも大きく感じられた笑顔を見せた。夏野菜がたわわに実った農地は、昨年から佐藤さんが手をかけているという。
「ずっと農業をやりたかったんです。都会の人はオーガニックに興味があったという風に見てくれますが、自分自身は小麦アレルギーがあっただけ。それよりもこの島では、自分で育てた野菜を食べるのが自然で、特別なことをやっている意識は今もないんです。土がよくて雨も降るから、化学肥料を使わなくても立派に育つ。そういう場所。それをオーガニックというなら、島の人全員がそうだと思う」
畑のすぐ上で数ヶ月前から飼い始めたニワトリが、今朝初めて一個の卵を産んでくれたことを重大ニュースのように話してくれた。その様子を眺めながら、一つの確信をもった。佐藤さんは島に呼ばれた人なのだと。
思いがけない停滞からの定住には、SUPの実力者ゆえリゾートホテルや他村からインストラクターの要望があったことや、相棒たる愛犬・マックスと暮らす上で必要だった一軒家が見つかったという生活条件の整いが救いになった。それらは増加傾向の移住希望者が望む要件でもあるようだが、佐藤さんがここに招かれたのは、特に農業という土地に根差した作業に自ら手を差し出した意志が強く関わっている、という他にないと思う。
「呼ばれた感覚は私にもあります。目に見えない力があるというか、ここで暮らそうと思ったとたん、いろんなことが次々にいいほうへ転びましたから。だからこそ、ここで果たす自分の役割もあると思うし、それはまずSUPで示していくんでしょうね。ただ、競技は2021年に狙っている大きな大会で終了。ワールドツアーにも出ません。もうSUPは、自分の中で一番じゃなくなっちゃいました」
では、現在の佐藤さんの中で頂点にあるものとは?
「すでにとなりの集落で借りた一反の農地で、将来はウギ、サトウキビを育てたい。そこまでやれるようになったら、きっと完全に島の人たちに認められますから。永住する気、満々ですよ」
Epilogue:朝と夕に降る雨。その恩恵に感謝する人々
世界自然遺産の登録に鑑みれば、奄美大島は今後さらに、エコシステムなどといった用語と共に語られる機会が増えていくに違いない。
そうした言葉が意味するものが奄美大島に存在しているのも事実だろう。島という限定された範囲であればなおさら、生態系の在り様や循環の様式が見えやすくもなるはずだ。
ただ、奄美大島で実感したのは、語るよりは感じることに意味があるという、強いて言えば旅の基本だった。環境への配慮を忘れないレネゲード 4xeが諭してくれたのも、そういうことだった気がする。
島のどこかで朝と夕に必ず降る雨。その恩恵に感謝しながら暮らす人々。今は率直に、あの大粒の雫の暖かさにもう一度触れてみたいと思っている。
今回使用したクルマ
『ジープ レネゲード トレイルホーク フォーバイイー(Jeep Renegade Trailhawk 4xe)』
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【PROFILE】
佐藤優夏
ダイビングインストラクターとして活動していた2014年にSUPと出合う。15年の全日本選手権で総合準優勝すると、16年は国内主要大会をほぼ総なめにし、17年も圧勝で全日本選手権を制した。プロとなった後は海外大会に参戦。APPワールドツアー・ドイツ大会では、ロングディスタンスで海外試合初の表彰台となる3位に入り、総合4位。ISA世界戦手権でもスプリントで4位に食い込み、初めて表彰台に立った。
【Information】
アマニコガイドサービス
奄美大島の大自然の中でマングローブ,SUP,Eバイク,船釣り等のツアーが体験できるガイドサービス。
住所:鹿児島県奄美市名瀬朝仁町11-2
TEL:0997-58-7879
URL:https://www.amami-occ.com/
Text:田村 十七男
Photo:大石 隼土