Interview

2012.11.14

海が導いてくれた、 刺激と冒険に満ちたライフスタイル

俳優、そしてプロサーファー。多彩な顔を操り、
刺激と可能性を追い求める生き方に迫る

  • main198 海が導いてくれた、 刺激と冒険に満ちたライフスタイル
    子どものときから親しんだ地元のビーチにて、リラックスした表情を浮かべる。この日は台風からのうねりが届いたから「朝からずっと海に入っていました」
  • main283 海が導いてくれた、 刺激と冒険に満ちたライフスタイル
    鎌倉の「MiD TiDE」では中村さんが手がけるブランド「MAGIC NUMBER」ほか、マリブのサーファーが始めた「Freedom Artist」、レザーの「Bellroy」、サングラスの「CRAP」などのブランドを厳選して展開。
  • main376 海が導いてくれた、 刺激と冒険に満ちたライフスタイル
    奥には駒沢のカフェ「nico」のコーヒー(1杯¥500)が楽しめるラウンジ風のコーナーも。横山泰介さんのオリジナル・プリント、サーフィン雑誌や写真集などを飾って。
  • main441 海が導いてくれた、 刺激と冒険に満ちたライフスタイル
    中村さんがディレクションする「MAGIC NUMBER」のボーダー×フリースのパーカ(¥8,800)。

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大好きな「nico」のコーヒーを片手に。

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「MID TIDE」で取り扱うセクターのスケートボード(各¥16,800)。

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オープン予定の「H.L.N.A SKATEPARK」完成予想図。富士山を眺めながら滑れるランプやレール、パークの一画にはステージも設置。雑誌『BLUE』11月号(ネコ・パブリッシング、11/10発売)より。イラスト:樋口篤郎

から歩いてほんの数分、鎌倉市材木座の住宅街の一画。俳優、そしてプロサーファーの中村竜さんが自らのショップをここにオープンさせたのは、2011年の夏の終わりのこと。

「ブランド自体は5年くらいやっているけれど、自分にとっては初めてのショップ。だからどうしても、生まれ育った鎌倉にこだわりたくて」

兄と2人で、2ヶ月かけて徹底的に手を入れた。天井を剥がし、床を張り、仕切り壁を新たに作り細部にまでこだわって完成した自慢の空間。ここでは中村さんがディレクションを手がけるブランド「MAGIC NUMBER」を中心に、海外の友達が扱っているブランドを織り交ぜながら、アクティブなライフスタイルを展開している。といっても、いわゆる「セレクトショップ」ではない。店内を飾るのは、たとえば親交のある写真家にしてサーフィン界の重鎮、横山泰介さんが撮ったジャック・マイヨールのポートレートや、知人が始めた雑誌『THE SURFER’S JOURNAL』など。店内で提供しているのは駒沢のカフェ「nico」のコーヒーだ。オーナーは中村さんの波乗り友達で、ペインティング&写真でコラボする仲でもあるのだとか。そう、ここは人とサーフ&スケート・カルチャー、そしてファッションをつなぐハブの役割を果たす空間なのだ。

現在こそプロサーファー、俳優、ブランド・ディレクター、ショップ・オーナーと多彩な顔を自在に操る中村さんだが、「若い頃はサーフィンとそれ以外のことをコントロールできなくなって苦しくなったこともありました」と話す。

「俳優の仕事も大好きで始めたのに、その時はそれ以上に波乗りをしたい気持ちが強くて。結果、自分の気持ちがうまく切り替えられなくなって、俳優の仕事をお休みすることにしたんです」

その間、世界中のあらゆる海に波乗りに出かけた。旅先で出会った新しい友人やカルチャーは中村さんにとって次なるステージの礎となり、約10年に渡った「ブランク」の期間を「刺激」という言葉で彩ってくれた。

「死ぬほどサーフィンをして『やり尽くした感』もあります。プロとはいえ、自分にとってのサーフィンは仕事じゃなくて自分を満たし幸せにしてくれるもの。素直にそう思えるようになって、サーフィンと仕事の切り替えが楽にできるようになった」

日々、世界のサーフィンやスケートのシーンを数多く体験するなかで、そうしたカルチャーをより発展させ、またその環境を次世代に継承するための取り組みに思いを馳せるようになったという。

「自分は今まで好きなサーフィンを散々、やらせてもらいました。今度は昔の僕みたいな子どもたちを支援していきたい。海外のようにサーフィンやスケボーで生きていけるというシステムを、日本で構築するというのが今の目標です」

お台場ダイバーシティにオープンした「H.L.N.A ZONE」と、その屋上にオープン予定の「SKATE PARK」はそうした中村さんの想いが結実したものだ。特に「SKATE PARK」を作るにあたってはスケート・カルチャーの本場であるアメリカ西海岸を訪ね、北はオレゴンから南はサンディエゴまで、コーストラインにあるパークを軒並み視察した。

「実際にパークに入って、それを作った人に会って。みんなスケートへの情熱がすごくピュアなんですね。こういうパークが欲しいとイメージして、それを実際のものに落とし込む。そういうエネルギーをもらいました」

それを受けて現在、建設中のパーク。見どころは?

「とにかく眺望が素晴らしい。東京タワーにレインボーブリッジ、東京を代表するランドマークと、富士山を一望しながらスケートできます。海外の友人にも見せましたが、こんなに気持ちのいいパークはお目にかかったことがないと言われました。特におすすめは日暮れ頃。茜色に染まる東京の空を堪能してほしい」

一方、「H.L.N.A ZONE」はサーフィンやスケートのカルチャーとそれに熱中する若者たちをサポートしたいというH.L.N.Aのコンセプトに共感してくれたブランドが、ダイバーシティ5階に集結。アクションスポーツをファッション、音楽、アートと絡めて、自分たちらしくエディットした世界観をフロア全体で発信していくという。

そんな充実した日々のさなか、最近では復活した俳優業にも手応えを感じている。もともと演技には定評があったが、2011年はNHKの朝の連続ドラマ「おひさま」への出演をきっかけに、ドラマ「私が恋愛できない理由」(フジテレビ系)に出演、そしてこのほど大河ドラマ「平清盛」への出演も決定。「平清盛」では源頼朝が初めて挙兵し討ち取ったといわれる武将、山木兼隆(平兼隆)役を演じる。

「しばらく俳優の仕事から離れていたし、サーフィンと違って撮影の現場はチームワークが重要です。いまは少し慣れたけど、始めのころはそりゃあ緊張しました(笑)。よく、新しいことに挑戦するのは怖くないのか聞かれるんですが、波以外、何かを怖いと思ったことはないんです。大きな波は確かに怖い。でも、なぜ怖いのか、サイズなのか。サイズだったら、なぜこのサイズは怖いのか。そうやって自分の内面と向きあいながら波乗りをするんです。禅問答のようなものなんですが、そうすることで怖いという気持ちがなくなる。内面を見つめること、それが恐怖やネガティブなものを追いやってくれるんですね」

のびのびと新しいことに挑戦し続ける中村さんのライフスタイル。「自分のやりたいことだけをやって生きていきたい」という自由と冒険に満ちたそれを支えるのは、海が育んでくれた内省のひとときなのかもしれない。

RYU NAKAMURA

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