伝統にイノベーティブを加えて 陶芸に恩返しを
陶芸の新しい未来を求めて
東奔西走し続ける陶芸家
宝石のようにキラキラと輝くしなやかで繊細なアートピースや、流れるようなフォルムの美しさが印象的な日常使いの食器。独特な存在感を持って見る者に迫りくる作品を生み出し続けているのが、陶芸家の青木良太さん。大きな体制変化が長らくなかった陶芸の世界に、新風を吹き込んだといわれる若手作家である。
22歳で陶芸に出会い、24歳で陶芸家デビュー。そこから飛ぶ鳥を落とす勢いで現在の評価を手にした青木さん。だがそこに満足することなく、さらなる先を見つめた活動を続けている。
「僕が陶芸だけで食べていけるようになったのは、20代半ばのこと。そうなってみて強く思ったのが、陶芸に恩返しをしたいということでした。改めて自分にできることを考えたとき、約400年前の陶芸最盛期といわれる千利休の時代に比べて、徐々に廃れていっている(現代の)陶芸界を盛り上げていくことなんじゃないかと思ったんです。
それは作家を増やすこともそうだし、陶芸自体の認知度や人気を上げることもそう。世界的に見ても陶芸家の数が多く、親しまれている日本だからこそできることがあると話す。
「今はちょうど約30年ぶりといわれる陶芸復興期で、若手の作家たちが続々と登場しているタイミング。だから、引っ張っていかなきゃいけないという意識はすごくあります」
その気持ちの表われのひとつが、毎年夏に開催している『イケヤン☆』という若手陶芸家を集めたイベント。「全国の若手陶芸家たちが自分の作品のマグカップを持って集まるんです。それでお酒を飲む(笑)。だいたい200人ぐらいの陶芸家が全員でゲームしたり、腕相撲したり、盛り上がりますね。ただレクリエーションで交流を深めるだけじゃなくて、ギャラリストの方をゲストに招いて審査会を開き、新しい出会いや発表の場を作ったりもしています。
2012年で5回目を数えるこのイベント。昨年は、そこで親しくなった10人の作家で『イケヤン☆展』というグループ展を開催し、全国10カ所を回った。ほかにも卒業前に個展が決まる学生作家が出てくるなど、少しずつ活動の手応えを感じているという。
そして、もちろん自分自身の活動でもさらなる高みを目指している。来年を目処にNYにもアトリエを構え、現在の拠点である岐阜県土岐市と行き来しながら創作活動を展開する予定だとか。
「海外では、陶芸はアートだと捉えられていないことが多くて、クラフト的な扱いなんですよね。それが悔しくて。なんとかして地位を上げていきたいんです。現代アートの世界にアピールしていきたいと考えたときに、やっぱり日本から発信するのと、NYにアトリエを持って現地のコミュニティのなかで活動するのでは全然違う。根本的なところから陶芸の価値を上げていくためにも、NYにベースを持ちたいと思っています」
そしてもうひとつ。もっと別の角度から陶芸の魅力を広める試みも計画中だとか。「今はまだ言えないけど、世界中の陶芸家をつなげたり、陶芸に関心がない多くの人たちに陶芸をもっと身近に感じてもらえるような仕掛けを考えています。今年の秋ぐらいには形になるかな。日本だけじゃなくて世界中の人に陶芸のおもしろさを少しでも感じてもらって、新しいムーブメントを起こすことができればと思っています」
陶芸家も、陶芸好きな人も巻き込み、幸せにする青木さんの陶芸布教活動が本格的にスタートするのはいよいよこれから。でも彼が陶芸に恩返しできる日は、意外とすぐそこまできているのかもしれない。
青木良太Official Web Site