野球好きでなくても何かが見つかる NYで知る人ぞ知る夢のベースボールショップ
野球そのものを愛する、オーナーの宝箱へようこそ
近くにユニオンスクエアがあり、ニューヨーク大学のキャンパスが広がる賑やかなエリアにあって、メインストリートから入った静かな通りにあるビルの一角。黒いファサードに筆記体で「Bergino」と書かれた、控えめな外観をたたえるベースボールショップがある。
「ベルジーノ ベースボール クラブハウス」は、オーナーのジェイ・ゴールドバーグ氏が15年にわたるスポーツエージェントとしてのキャリアと、その後のベースボールグッズの卸業を経て、2010年にオープンしたお店。3歳のときに初めて球場を訪れて以来、野球の虜になってしまったというジェイ氏。「ゲートに入って目の前に広がる球場を見たときの興奮を思い出させるようなショップを目指しています」と語る。
店内に入ってまず気づくのは、アメリカに数多あるベースボールショップのように、特定のチームや選手に偏った商品を置いていないこと。選手のジャージもなければ、サイングッズも見当たらない。また、その種類の豊富さが俄然目を引くオリジナル&ハンドメイドの野球ボールが20ドル前後かと思えば、実際に着用されたユニフォームの生地で作られた150ドルのお宝カフスまで、商品のプライスレンジも広く、中には数ドルで購入できるものも。「この手作りのボールはショップを持つ以前はサックスフィフスアベニューなどの有名デパートやミュージアムショップなどでも人気商品だったんですが、意外にも男性へのギフトを求める女性に好評で。僕は野球というスポーツそのものを愛しているので、子供から大人まで、野球を愛するすべての人に楽しんでもらえるショップを目指しています」。
なお、アメリカ国内はもちろん、海外からもさまざまな人が訪れるNYのショップには多様性が求められるというスタンスも、この店がローカルチームの応援グッズを置くような類いの店と一線を画している理由だ。とにかく間口を広く、一方で足しげく通って来るリピーターのためにも定番アイテム以外はこまめに商品を入れ替え、新鮮さを提供する。また野球の試合が常に流れているテレビの前、商品が陳列されているベンチはときに、お客様のための観戦スペースにも早変わり。買い物に訪れなくても気軽に野球の話をしに立ち寄るゲストも少なくない。
口コミで地図を頼りにやってくる客が多いことから、「どうやってうちの店を見つけてくれたの?」とよく声をかけるというジェイ氏。でも、そのやりとりには、予想されがちな野球好きが熱弁をふるう姿はない。彼の語り口は相手を圧倒することなく、たとえ野球に興味がなくても臆することなく訪れることができる気がするのはひとえに、彼の人柄によるところも大きい。
ちなみに、取材の際に店にやってきたお客様で、人気の野球ボールを何個か購入したツーリストらしき男性がいた。レジの段階になって、すぐ脇の壁にディスプレイされていたオリジナルのバッグタグにふと目を留めた彼に差し出された紙袋の持ち手には、”PLAY BALL”と刺繍された、まさに彼が一瞬関心を持ったバッグタグ! 驚く男性に「これはギフトですよ」と告げつつ”野球って素晴らしいものですよ”と言わんばかりに微笑んだジェイ氏。
そんなワンシーンまでも、野球への愛がたっぷり詰まった店である。
ベルジーノ ベースボール クラブハウス