霊峰・富士に抱かれた、 美しき霧の高原
身もココロも振り回されることすら
気持ちよく感じてしまうアウトドアの聖地
富士山の西麓、朝霧高原。裾野までの稜線が美しい富士の姿を背景に、夏には青々と茂る草原に風が渡り、秋には一面のススキが黄金色の絨毯のように輝く。標高約1,000メートル。季節だけでなく、日々の天候の差も著しい朝霧高原は、その名のとおり朝霧の立つ地として名が高い。晴れていれば富士の背後から昇る、神々しい朝日を拝むことができるが、乳白色に立ちこめる霧は容易にそれを許してくれないのだという。
「だからこそ朝、テントを出た時に富士山と対峙した瞬間の感慨は圧倒的なんです」と話すのは竹下充さん。アウトドアスタイル誌『GO OUT』編集長として、日本各地のキャンプ場をよく知る彼にとって特別な場所が、その朝霧高原なのだという。
霊場とも言われるこの地のアウトドスポットとしての歴史は古く、遡れば鎌倉時代に、源頼朝が「巻狩」なる大狩猟大会を催したという。1970年代には3万人以上もが集い、国際的なボーイスカウトのキャンプ大会が日本で初めて開催されている。アクセスの良さや自然と調和したほど良い周辺環境から、いまや屈指のキャンプ地として大規模なキャンプイベントや各種フェスティバルの開催も多い。
竹下さんがこの地に出会ったのも「朝霧ジャム」という野外音楽フェスティバルだった。友人に誘われていった初めての“フェス”。大自然の開放感も音も熱気も最高潮なうえ、集まった観客がまとうファッションのなんと面白いこと。短パンにスパッツ、柄に柄を合わせ、色モノに色モノを重ねる……。当時、原宿でも見ないような独特なアウトドアスタイルに完全に魅せられた。その体験をきっかけに「アウトドア」と「ファッション」をキーワードにした『GO OUT』の創刊を決意したという。以来、年十数回もキャンプを張る生活。様々なアウトドア体験を経たいま、「道具さえあれば日常の中に非日常を簡単に取り入れられる」のがキャンプの醍醐味だと、竹下さんは感じている。
「現代では、アウトドアギアも進化していて、それほど高価でなくても、機能性の高いものはたくさんあります。そういったものを利用することで、割と容易にその“日常と非日常のあいだ”を行き来できるのも魅力ですね」
2012年4月には、朝霧高原のふもとっぱらキャンプ場で「GO OUT JAMBOREE 2012」を開催した。8回目を迎える恒例の主催イベントは今回、「自分たちでも驚いたくらい」スケールアップ。4,200人もの参加者と、約50のブランドブースが広大なキャンプ場を色とりどりに埋め尽くした。
全3日間中、2日目昼までは煙るような雨。ぬかるみに立ち往生するクルマもちらほらあるところに、突風まで吹いてテントも吹き飛ばされる始末。それが2日目夜には一転して、無数の星がまばたく感嘆の夜空が、視界の続く限り広がった。まだ寒さの残るなか、マットを出して寝転び、壮大な夜空のスペクタクルをただ呆然と眺める。そして明くる朝。色づきはじめた東の空に浮かぶ富士山のシルエット、ほどなくして稜線からこぼれる黄金の陽光が、最初は山肌を、続いてキャンプ場全体を、刻一刻とその範囲を押し広げるように照らしていった。
一瞬ごとに荘厳なスケールで移りゆく自然を生身で感じられる場所。日常に非日常を潜り込ませ、キャンプの醍醐味を思う存分満喫することができる聖地がこの朝霧高原なのだ。「身も心も振り回されることさえ気持ちよく感じてしまうこの場所に、来るたびにより惹かれていくんです」
GO OUT
ふもっとぱらキャンプ場