Interview

2012.08.28

BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ

世界チャンピオンにも輝いた
池田貴広さんの取り組み

  • main1115 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ
    池田さん自身が「オリジナルの技のなかでも最高の技と認める『IKE Spin』。
  • main297 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ
    小径のタイヤと低いサドル位置が特徴のBMX。池田さんの場合、演技のため、サドルの先端がカットしてある。
  • main387 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ
    「BMXと出会ったことでなにかに夢中になることのすばらしさを知った」という池田さん。

sub126 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ

BMXの特徴のひとつである「ジャイロブレーキ」。これによりブレーキケーブルが絡むことなく、フロントホイールを回転させることができる。

sub225 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ

こちらもオリジナルの『Ninja Jump』。

sub325 BMXで知った「夢中になること」のすばらしさ

14歳からBMXを始めてから通算5台目となる現在のバイク。ビビッドなレッドのフレームが目を引く。

の上では“秋”とはいえ、真夏となんら変わらない太陽が容赦なく照りつける2012年8月某日。ビビッドなレッドのフレームが天上の太陽と同じくらいまぶしいBMXにまたがったプロライダーの池田貴広さんは、「じゃあいいですか?」というなり、愛用のバイクを文字通り地平と直角方向に立てると、続けざまにリアのタイヤ1本で超高速スピンを始めた。

目の前で繰り広げられるダイナミックな大技に唖然としていると、すぐ脇のスケートパークでスケートボードに興じていた子どもたちからは歓声の声が次々に上がった。曰く「すげぇー!」「かっこいいっー!!」。「これ『IKE Spin』っていうんですけど、いまもってるオリジナルの技の中では最高レベルの技なんです」と池田さん。サドルを支えるシートポストに右足を、そして浮かした前輪に左足を置いて勢い良くスピンするこの技。当然、スピンのスピードもハンパなく、最高記録は1分間に89回転で、現在ギネスブックに申請中だという。ちなみに池田さんはすでにギネスブック記録の保持者で、2011年11月に達成したその時の記録が59回転/分というから、自己最高記録を大幅に更新したカタチだ。

BMXとは、Bicycle Motocrossの略(X=cross)で、1970年代初頭のアメリカ・カリフォルニアが発祥といわれる、小径タイヤの自転車をつかった競技。池田さんは14歳のときこのBMXに出会い、以来たゆまずこの競技を続けている。

「当時はまだBMXをやる人は少なかったんですが、たまたま練習している人を見かけて『かっこいいなぁー』と思い、僕も始めましたと池田さん。それまで「なにかに夢中になることは特別なかったという池田さんだが、BMXにはとことんハマり、練習漬けの毎日。多い日には8時間くらい一気に練習することもある。その甲斐あってか、ついには2010年、スペインで開催された世界選手権で優勝し、ワールドチャンピオンの栄誉を手にした。

冒頭のIKE Spinもそうだが、すべてはオリジナルのアクロバティックな技で構成されるBMXの演技。さぞかし生まれつき運動神経が優れているのだろうと聞いてみると、、、「特別良くはなかったですね。小さいころにサッカーとかやってましたけど、いつも2軍でした」と笑う。

その言葉をすんなり受け止めて良いのか悩む(?)ほどの豪快かつ大胆なパフォーマンスを次々と繰り出す池田さん。その証拠にあのシルク・ドゥ・ソレイユのディレクターも、池田さんのオリジナリティ溢れるスキルに感動するあまり「自転車をつかったパフォーマンスをやるときはぜひ!」とオファーを出したほど。

「オリジナルの技は、IKE SpinやNinja Jumpなど全部で20くらいあります。技を作るときは、フィギュアスケートやブレイクダンス、体操などの異種競技をみて、その要素をどう自転車に生かすか考えることもありますね。いまはロンドン五輪で見た体操の鞍馬をどうにか取り込めないか考案中です。」

実は現在、現役の大学生。2013年には卒業となるが、その後はBMX1本で生きていく決意はすでに固まっている。

「競技のほかにも、子ども向けのワークショップやスクールを開催してBMXの魅力をより多くの人に伝えていきたいと思っています。なにより僕自身、夢中になるものが特になかった子どもでしたが、BMXと出会って、何かに一生懸命取り組む、夢中になることのすばらしさを知ることができました。それを多くの子どもたちにも伝えたい」

そう淡々と語る池田さんだったが、その目には熱意と決意、そして揺るぎない自信が見て取れた気がした。

池田貴広さんオフィシャルウェブサイト

http://www.takahiroikeda.com/

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