これまでを超えるエキサイティングなデザインを ~Jeep インテリアデザインディレクター クリス・ベンジャミン氏特別インタビュー~

JeepコマンダーとJeepグランドチェロキーが同時発表された国立科学博物館でのプレスカンファレンスに合わせて来日した、Jeep インテリアデザインディレクターのクリス・ベンジャミン氏を直撃。我々のJeepをデザインするリーダーに、デザイナーの真髄をたずねた。

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▲クリス・ベンジャミン氏

アートは大人になるために必要不可欠なものだった

──初めに、デザイナーになったきっかけを教えてください。

ベンジャミン氏:クルマを好んで描いていたアート好きの子ども時代にさかのぼりますが、さすがに幼いときは、今のようなクリエイティブな仕事に就くとは思っていませんでした。ただし、アートは大人になるために必要不可欠なものだったと言っていいかもしれません。子どもの頃に暮らしていたのは治安が悪い場所でした。ここから抜け出すには何かを身に付けなければならず、そこで私は興味があったアートを熱心に学びました。幸運だったのは、通った公立学校にアートプログラムが用意されていたことです。絵画、写真、石版画などを通じて、包括的な美術教育を受けることができました。また、子どもだった私に強烈なインスピレーションを与えてくれた教師との出会いもラッキーでした。

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──どんなひらめきを授けてくれたのですか?

ベンジャミン氏:その教師は、他と違うことに目を向けなさいとよく言っていました。それに関連して強く覚えているのは、14歳の頃の宿題です。水滴を描くというテーマでした。宿題は後日壁に張り出されましたが、多くは青色の水玉が描かれていたんですね。水には青の共通イメージがありますから、そのような結果になるのは至って自然でしょう。ですが私は、自宅の浴室のカウンターに現れた水滴に注目し、その水滴にだけ色をつけた作品を提出しました。そこだけ違ったように見えたので、そのような描写となったのです。ところが驚いたことに、私の絵だけが表彰されました。後に明かされたのですが、教師の目的は上手に描く技術以上に観察眼の育成だったのです。それに叶った絵を描けて、うれしかったというより楽になれました。

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▲幼少期のベンジャミン氏が描いたクルマの絵

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──アートに自信が持てたのでは?

ベンジャミン氏:素晴らしい経験になりました。ですがアートでは食べていけないと思っていましたから、高校ではデザインにフォーカスし、最終的に工業デザインを専攻しました。その頃は、ただクリエイティブが好きでやっていた感じです。何かを創り出すことで人によろこびを与えられると知るのは、もう少し先になってからの話です。

──それはいつですか?

ベンジャミン氏:大学に入学してからですね。高校時代の親友二人からデトロイトにアートスクールがあると聞かされ、彼らとともに進学しました。そのキャンパスでカーデザインが学べることを知るのです。実はそれまで、クルマのデザインが仕事になるなんて思っていませんでした。子ども時代からクルマが好きで絵を描いてきたのに。これは運命だと感じ、またたくさん勉強して、卒業後は世界各国の自動車メーカーでデザイナーとして働けるようになりました。Jeepと関われたのは2013年からです。

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Jeepで表現したいのはワクワクする衝動、
そしてカスタマーにサプライズを与え続けること

──現在のインテリアデザインディレクターという立場では、どのようなことをされるのですか?

ベンジャミン氏:デザインチームを統括する役職なので、デザイナーたちとレビューを行うのが主な仕事です。これはなかなかクールなプロセスです。

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──ご自身がデザイン画を描くような機会はありますか?

ベンジャミン氏:シニアになれば自らドローイングする機会は減ります。あるいは、自分から描くこともしません。なぜなら、私たちのデザインチームには優れたスキルがあり、メンバーそれぞれが何をすべきか理解しているからです。また、デザイナーを成長させるのもディレクターの務めなので、私は彼らのアイデアに対してフィードバックをするだけです。とは言え私自身も、最新の3Dモデリングツールを使いこなせるスキルは身に付けているんですよ。チームと意見交換する際に必要ですから。そう言えば先週のオンラインミーティングでは、3Dモデリングを見ながらその場で私が小さなスケッチを描きました。今はその程度ですね。

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──デザインを行う上ではどんな心掛けが大切だと考えますか?

ベンジャミン氏:ひたすら多くのものを見て、繰り返し潜在意識に落とし込むこと。現在は目にした光景をスマホで簡単に撮れますから、具体的な資料として記録することは私の日課になっています。そうした様々な情報の中から重要なインスピレーションを受けるわけですけれど、そのインスピレーション自体も含め、詳しく観察することがもっとも大事です。観察がクリエイティブの動機と言ってもいいでしょう。

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──14歳の宿題が表彰された理由そのままに?

ベンジャミン氏:そうですね。ですから若いデザイナーにアドバイスするとしたら、次の3つを伝えたいです。自分の目でとらえて観察すること。常に好奇心を発動できるオープン・マインドであること。そして、夢を見ること。

──夢とは?

ベンジャミン氏:言葉ではすべてを説明できませんが、人間として未来に何を求めるかを常に思い描く、ということでしょうか。私たちがクルマをデザインするのは、自分のためではありません。次世代の人々に向けて、よい感触を提供するのが目的です。そしてもっとも重要なのは、カスタマーにサプライズを与え続けることです。

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──Jeepではどんなサプライズを見せてもらえますか? 

ベンジャミン氏:クルマは移動の道具ですが、必要だからと買うものにはワクワクしませんよね。私たちがJeepで表現したいのは、そんなワクワクする衝動です。それが何なのかを検証するときに欠かせないのは、Jeepを欲する人々の情熱を分かち合うこと。それを基に5年先、10年先のクルマを考える。現時点の合格点を超えて、将来の変化を予測しながら。

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▲『ジープ コマンダー(Jeep Commander)

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▲『ジープ グランドチェロキー (Jeep Grand Cherokee)

──今後のJeepデザインはどのような方向に向かいますか?

ベンジャミン氏:現在のJeepは、限界を突破している最中です。たとえば新型のグランドチェロキーでは、新たなプレミアム感を表現しました。インテリアで言えば、クロームとレザーの新鮮な組み合わせによって、カスタマーが将来に望む世界観が創造できたと自負しています。私にとってデザインは、人生を表現する手段です。同時にデザイナーとしては、使う人のライフスタイルによい影響を与え、体験を深めるものを提供したいと願っています。Jeepは今後も、これまでを超えるエキサイティングなデザインをお見せしていきます。

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▲Photo:安井 宏充(Weekend.)

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■今回のインタビューの様子を動画でもご覧いただけます。

Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土

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