The Future of Freedom 〜本物の自由を見つけた者たちの言葉〜〈Vol.7 BUSINESS〉伊達美和子

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世界が“無視できない”東京の作り方

11年ぶりのフルモデルチェンジが話題を呼ぶ『All-New Jeep® Wrangler』。Jeep® の歴史を培ってきたこの一台と同じく、揺るぎない信念を持つプロフェッショナルの7人が、進化の先に辿り着いた自らの本物の自由を語るスペシャルインタビュー企画の第7弾のジャンルは〈BUISINESS〉。語るのは、森トラスト・ホテルズ&リゾーツ株式会社代表取締役社長・伊達美和子。
森トラストは、『コンラッド東京』や『シャングリ・ラ ホテル 東京』『ウェスティンホテル仙台』など、全国に100近くのホテルやオフィスビルの開発を手掛けてきた日本有数の不動産ディベロッパーだ。
2016年にその2代目社長に就任した伊達美和子氏は、海外からホテルブランド誘致を繰り返し、ラグジュアリーホテルを日本に浸透させるため奮闘してきた。常に世界を相手に建物をつくり、街を育ててきた伊達氏が見据える、2020年以降の東京、日本とは。

“グローバルスタンダード”が存在しなかった東京

『コンラッド東京』のオープンは2005年ですが、計画が立ち上がったのは2000年頃。当時、東京には外資系のラグジュアリーホテルはほとんど存在せず、ランクやクオリティの点で、他の海外の都市に匹敵するホテルが足りていませんでした。
だから海外のエグゼクティブがやって来ないし、海外のテナントが日本にヘッドクオーターを置こうという話にもならない。富裕層が、同じアジアでもシンガポールや香港に流れてしまっていたのも道理です。

▲聖心女子大学、慶応義塾大学大学院修了後、1998年森ビル開発(現:森トラスト)に入社し、2016年より現職。多数の不動産開発を統括する傍ら、ホテル事業を積極的に推進。様々な外資系ブランドホテルを誘致し、都心及び地方・リゾートにおけるホテル・観光産業の活性化に尽力する。2020年には東京都港区に東京ワールドゲートを開業予定。

東京都心が競うべきは、国内のほかの都市ではなく、海外の都市。ドメスティックなエリアではなく、インターナショナルな場所だと示すためにも、海外のホテルブランドを東京に誘致したかったのです。
ロンドンやニューヨークのような国際的な都市に東京が対抗するには、グローバルスタンダードのホテルが必要だという考えです。
そこで私たちは、『コンラッド東京』のあとにも、2009年には『シャングリ・ラ ホテル 東京』をオープンさせるなど、ハイスペックなホテルとオフィスを提供してきました。
結果、それまでスルーしていたエグゼクティブたちが、東京という都市に目を向ける機会を作ることができました。

▲東京湾を一望できる『シャングリ・ラ ホテル 東京』の客室。シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツの日本初のホテルだ

私たちがディベロッパーとして最重要視しているのは“ロケーション”です。いい場所を確保して、建てる物を間違えなければ、多少のブレはあったとしても、一定の範囲内に収まります。
逆にバブル期においては、本来、オフィス立地ではないところにオフィスを建てたり、リゾート地にホテルを作りすぎてしまったりしたことにより、大きな反動が起こりました。
ただし、間違ったものを建ててしまっても、そこがポテンシャルのある土地であれば、持ち主が体力のあるプレイヤーに変わり、存分に活用されることによって復活することもあります。
ですから、その土地の現在だけでなく、地歴もまた重要だと考えます。地歴からすると、もっとポテンシャルがあるはずなのに、その力が発揮されていない。そんな場合は、どうすれば本来の力を引き出すことができるかを考え、実行していくのが私たちの仕事です。

“土地のポテンシャルを引き出す”という仕事

たとえば京都の嵐山で2015年にオープンさせた『翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都』。もともとは明治期の歴史的建造物を利用したホテルでしたが、経営破綻したあと、海外の方が別荘として買おうとしていました。
しかし、それでは地域の観光資源が失われてしまうので、「ぜひ森トラストで再生してほしい」というお話になりました。

ですが、当時の嵐山はタレントショップやお土産屋の増加、日帰り観光客の増加など、周辺の環境は必ずしもよくありませんでした。それでも、元をたどれば嵐山は貴族の別荘地だった場所。ホテルがあった土地もかつての離宮の一部でした。
また、古い建物になればなるほど、どの方角に向けて、どのように建てるのがベストか考え抜かれているものです。ですから、以前の建物を極力残して活用し、新たに宿泊棟を設けました。規制もあり、部屋は39室のみのホテルです。
通常、その部屋数では外資系ホテルが参入することはありません。しかし、海外のグローバルブランドにとっても京都は魅力的な土地であり、かつ、翠嵐の立地はとても特徴的で、日本的な風情を存分に感じられる場所です。
この地に適したブランドを持つ『マリオット・インターナショナル(当時はスターウッドホテル&リゾート)』にお声がけしたところ、「ぜひやりたい」という返事をいただきました。

▲『翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都』の客室。全39室のうち、17室には天然温泉が楽しめる露天風呂がある。

ラグジュアリーな外資系ブランドでありながら、旅館のようなスタイルの『翠嵐』の誕生は、海外の富裕層に強烈なインパクトを与えました。実際に『翠嵐』は、昨年、米国の著名旅行誌の読者投票で、日本で1位、世界で6位にランクされています。
「嵐山はとても魅力的な宿泊地である」という認識が根付き、地域全体が活性化したのです。
実は、翠嵐の土地を購入したのは2011年の秋口でした。東日本大震災のあと、京都ですら外国人観光客がほとんどいなくなり、国内全体でホテルの需要が今後どうなるかわからなかった時期です。
極めて悪いタイミングでしたが、むしろだからこそ、リスクを取ってでも「新規でホテルを建てる」という計画を世の中に打ち上げるべきだと私たちは考えました。
嵐山の地歴から考えて勝算はありましたし、私たちが仙台にホテルとオフィスを持ち、みずからが被災したことも、その判断を後押ししました。東京では「仙台は壊滅状態だ」というような報道がなされていましたが、震災の直撃を受けつつも、私たちの建物は無事で、仙台も都市としての機能を維持していたのです。
でも、口で言うだけでは安全だと信じてもらえない。観光客を安心させ、日本に戻ってくる環境を作らなければ、東京も、他の地域も含め、日本の観光産業が危ぶまれると強く感じました。だからこそ、このタイミングで新しいホテルを建設することを決断し、発表したのです。

もちろん、パッションを持ってはいますが、当社の経営理念として、“選択と集中”“ウォームハートとクールヘッド”というものがあります。土地購入の最終判断自体は冷静に下しています。
プロジェクトは何年もの時間をかけて進めますし、できあがった建物は何十年と使うものです。「やりたい」という初期衝動だけで、ディベロッパーとして間違った一歩を踏み出すわけにはいきません。
個々に見ると魅力的な提案はいくらでもあります。しかし、個別の最適だけを見ていると、トータルで矛盾が発生することがあるからです。無理に進めたところで、結果として破綻することも少なくありません。
社長という立場にある以上、常に冷静に、ほかの社員たちよりも一歩引いて判断することを心がけています。

未来のイノベーション集積地“ゴッドバレー”が誕生する

私の社長就任を期に、訪日客の増加を追い風にして、森トラストが日本の国際化と地方創生への起爆剤となれるよう「Advance2027」という中長期ビジョンを掲げました。
幸いなことに、不動産事業、ホテル&リゾート事業、投資事業のいずれも好調で、「2027年までに」と掲げた目標を今年度中に達成する見込みです。
この3月にはシリコンバレーのオフィスビルを購入しましたが、日本企業によるシリコンバレーでの不動産投資としては最大規模のものです。
海外で不動産投資を積極的に行うことで、グローバル化の推進、そして海外事業から得られた知見やネットワークによって、国内事業をさらに発展させていくことを狙っています。
東京オリンピックを間近に控えた2020年3月には、虎ノ門に『東京ワールドゲート』が竣工する予定です。ここには日本初進出となるホテルブランド『エディション』とオフィスフロアが入ります。
近年、ライフスタイルホテルが注目を集めていますが、エディションは言うなれば“ラグジュアリーライフスタイルホテル”。ラグジュアリーとライフスタイル、両者をいいとこ取りをした存在です。
そして、オフィスフロアのうち半数は、“オフィス”という言葉から連想されがちな内装を打ち破り、もっと自由なレイアウトができるように配慮した「クリエイティブフロア」になっています。
入居する個々の企業の生産性を高めるだけでなく、フロア全体で創造性を高める専用の共用部デザインや、オープンイノベーションを想定した柔軟かつ最適なセキュリティ計画など、ほかには見られない独特の構想を盛り込みました。

▲2020年3月に竣工する「東京ワールドゲート」の外観イメージ。

実は『エディション』もまた、“ソーシャライジング”というコンセプトを持っています。
宿泊するお客様のためだけではなく、地域の方も日常的にホテルを活用し、ワールドトラベラーともコミュニケーションが取れるように、ロビーはロビー、レストランはレストランと、明確に区切るのではなく、融合的に使えるようになっています。
両者が相まって、居心地のよい空間がそこに集まる人たちのコミュニケーションを促進し、新しい発想が次々に生まれる。そんなイノベーティブな場所ができあがるはずです。
こうしたソーシャライジングは、エリア全体でも活発になることを目指して、昨年、神谷町エリアに縁のある団体と協議会を作りました。神谷町なので、シリコンバレーならぬ神谷町“ゴッドバレー”協議会と名付けています。
既に、企業同士のコラボレーションによるイベントを実施するなど、活動を開始しており、“神谷町発”の新しいイノベーションが生まれてくることを楽しみにしています。
東京ワールドゲートは、物件の入札後にリーマンショックに見舞われるなど、非常に苦しい時期もありましたが、祖父の時代からの「虎ノ門エリアをよくしたい」という思いを受け継ぎ、結果として良いプロジェクトに仕上げることができました。
私自身としても、土地の入札から、建築計画、ホテルの誘致まで、ほとんどの工程に直接関わることができたので、とても思い出深いものになりそうです。

企業も人も、社会の一員である以上、純粋に自分の思いだけで「自由に」行動することはできませんが、様々な情報収集や未来に向けた分析をとことん積み重ねることで、自分を信じて決断できる瞬間があります。それが、私にとっての「自由」です。
決断を下すという「自由」を、自分に与えられるか。それは、努力を重ね、自分自身に打ち克った瞬間とも言えます。
2020年の東京オリンピック以降、景気の減退を心配する声は根強くありますが、少なくとも私にとってオリンピックは、日本を活性化する好材料と考えます。これまで東京に来たことがなかった方々が東京のよさを知り、帰ってからも自国でその話をしてくれるでしょう。
ただし、忘れてはいけないのは、オリンピックが通過点だということです。オリンピック中は混雑するので、あえて期間が終わってから東京を訪れる富裕層も相当数存在するはずです。
ロンドンでもオリンピック以降にインバウンドが増加しています。
日本が秘めているポテンシャルを、私たちが最高のかたちで引き出せれば、東京だけでなく、地方も含めて、「日本には私たちを満足させてくれるものがある」と、より多くの富裕層を世界中から取り込めるはず。そんな未来を実現させていくのが、今から本当に楽しみです。

スペシャルインタビュー動画は、Abema TVで配信中。

※この記事は、NewsPicks Brand Designによって制作された内容を一部改変して転載したものです。

Text:唐仁原俊博
Edit:大高志帆
Photos:茂田羽生

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