The Future of Freedom 〜本物の自由を見つけた者たちの言葉〜 〈Vol.6 FASHION〉三原康裕

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三原康裕の、人生の一片を変えるファッション

11年ぶりのフルモデルチェンジが話題を呼んでいる『All-New Jeep® Wrangler』。Jeep® の歴史を培ってきたこの一台と同じく、揺るぎない信念を持つプロフェッショナルの7人が、進化の先に辿り着いた自らの本物の自由を語るスペシャルインタビュー企画の第6弾のジャンルは〈FASHION〉。語るのは、自身の名を冠したブランド『Maison MIHARA YASUHIRO』が、ヨーロッパをはじめ国内外問わず高い評価を得ているデザイナー・三原康裕。既存の枠にとらわれない自由なデザインワークの根底には、固定概念や“くだらないプライド”を破壊する情熱が隠されていた。

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人が使うものからインスピレーションを与えたいという想い

世界を股に掛けるデザイナーの三原康裕は、1972年に長崎県で生まれ、福岡県で育った。多摩美術大学デザイン科テキスタイル学科に在学しているときに独学で靴作りを始め、在学中の1996年には靴メーカーのバックアップにより“archi doom”を設立。翌年に『MIHARA YASUHIRO』へブランド名を変更し、コレクションブランドをスタートした。三原のデザイナーとしてのスタート、それは洋服ではなく“靴”。

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「靴というのは盆栽のように小さい世界で、制約に囲まれている。だからこそ、そこに堆積された時間や、生まれる宇宙感を感じられた。靴作りは、広い荒野を走るイメージではなく、小さい世界を作ることによって広がる宇宙感を得るようなイメージだったんです」

人と芸術を調和させたい──その理想を追求するために必要なこと、それは“人が使うこと”。そして三原にとって使うことの象徴として存在したのが靴だった。人が使うものからインスピレーションを与えたいという想いは、三原のものづくりにとって、その後も大きな核となっていく。

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1998年には東京・南青山にショップをオープンし、翌年に『有限会社 SOSU』を設立。靴だけでなく総合ブランドを立ち上げた三原はその後、国内外でレディースコレクション、メンズコレクションを発表しその名を世に知らしめ、2000年からスタートしたPUMAとのコラボレーションも話題を呼んだ。どの作品のデザイン&モチーフも遊び心にあふれているが、「商品的概念として見たときは、はみ出していることが多い」と自身は語る。

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「ファッションで人にインスピレーションを与えるにあたって、まったく何もないところからは難しい。抽象画のように0を1にするようなことは難しいけれど、1だったり3だったり10だったりするものを人それぞれに解釈させることはできるし、その方が人々は想像しやすいと思う」

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ただし、そこに潜んでいる比喩や哲学といったメタファーは、別にあからさまに伝える必要はないという。その点で三原は、やや控え目に「僕は“私たちはこういうものづくりをやってます”みたいなのは嫌いなんだよね」と自身のポリシーを垣間見せた。

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「セールストークに置き換えるようなサステナビリティやエシカルなやり方は別にいいと思うけど、それを時代の風潮のようにすることは、自分ではしないかな。人を魅了するものを作ることが大事で、人が求めるものは作らない。要するに、ある意味で強制的に人に何かを考えさせたり、インスピレーションを与え続けたりしたい」

くだらないプライドというものを叩き壊し、情熱を取り戻す

そんな三原の思考は、ファッションショーでも大胆に表現されている。2018年3月28日に秩父宮ラグビー場で開催された『メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)』のランウェイショーで、モデルたちの登場を待つ会場に現れたのはトラック。「すごく茶番なファッションショーだと思うんですよね」と前置きをしつつも、「でもなぜやるかというと、見ている人の気持ちを変える、世の中の価値観を変えるため」と語る三原の言葉には、ファッションショーの固定概念を壊し、観客の感情を揺さぶろうという想いが現れていた。

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▲2018年3月28日に秩父宮ラグビー場で開催された『メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)』のランウェイショー。最新のコレクションに身を包んだモデルたちがトラックの荷台から一人一人降りて、ランウェイへ歩き出していくという驚きの演出がなされた。

「いわゆるファッションショーというのはモデルが来て、洋服を着て歩いて、戻っていくという単純作業なんですよ。やる意味があるかというと、写真も映像もさまざまな方法で発信できる今の世界で言えばNOかもしれない。では何のためにやるかというと、見てる人の考え方を変えるとか、価値観を変えるため。ショーを見てる人からすれば音楽は始まったけどモデルはなかなか出てこないし、その中でトラックが出てきて、“何かの間違いじゃないか”と多くの人は思ったはず。でもトラックからモデルが出てきたときに、みなさんは“このショーには何か意味があるんじゃないか”となったと思う。一種のユーモアであり、アイロニックな表現。ファッションウィークは世界中である中、あれはそれらに対する問題定義でもあったし、人のくだらないプライドというものを叩き壊して、情熱を取り戻したかった。あれは正直、自分が一番楽しかったのかもしれません」

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くだらないプライド──それはインタビューの中で度々出てくるワードだった。

「ファッションとは何なのかという問いを通して、僕は戦っていきたいと思ってるんですよ。ファッションショーをやる意味はそこにもあって、情熱というものは、ときにくだらないプライドとか経験によって失われていく場合がある。それで人間的に面白くなくなってしまうことも。そういうのをたくさん見てきたから、情熱がプライドを潰す状況を作りたい。すごく馬鹿げたショーもやるんですけど、知れば知るほどスノッブ(俗物、知識・教養をひけらかす見栄張りの気取り屋といった意)になっていくし、プライドの方が先立って“うーん、まあまあね”みたいになっていく。そのくだらないプライドを超えられるものを作りたい」

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昨今は情熱を失い、冷ややかな評論家的な視点を持ち、変なプライドを持ちがちな時代だ。そういうものを壊すことによって、純粋さを得ること。三原はとても単純なことを目指しているとともに、その言葉は自分たちの商品に触れることで、人々の中にある純粋なものを取り戻してほしいと願っているようだった。

ルールを作って、制約を作れる人が自由を得ることができる

デザイナー・三原康裕が“本物の自由”を手にした瞬間を尋ねると、「自由というのは、そもそも人が扱えるものだと思っていない」という前提はあるが、これまでの経験から答えを導き出していた。

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「ルールを作って、制約を作れる人が自由を得ることができる。例えば、アフリカの大草原が広がっていて、原住民の人に“この空間を好きに使っていい”と言われても、結論から言うとそれをすべて自由に扱うことは無理なのかなと。自分が住む小さいエリアをまず決めて、畑を耕してとか、少しずつその空間の中で自分が必要とする場所を選んでは作り、それでやっとその空間の意味を知っていく。何でもできるから自由なのか、何の制約もないから自由なのか──自由を使いこなしている気になっていても、そこから何も得ることができなかったり、形にできなかったりする方が多い。僕にとって自由を感じた瞬間とは、制約を決められたとき。その囲いを決められたときに、自由を感じられる」

制約という点に関しては、三原の原点である靴作りから学んだことであり、その後、洋服をデザインし始めたときに気付かされたことでもあった。

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「洋服はコートやジャケット、女性だったらワンピースとかさまざまで、最初はそのカテゴリーの多さや想像力が幾重にもレイヤーされている世界に自分自身が振り回された。あるとき、“靴を作るときはあんなに水を得た魚のようだったのに、何で洋服の場合はクリエイションの視野を定められないんだろう”と思って。そこから”制約があるから”という単純なことに気づいたんです。そこで初めてアイデアの本質やデザインのすべきこと、そして、どうすればものづくりは完結するのかということを理解するようになった」

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あえて「広い視野を持たない」という境地。概念としての囲いを作り、そこから無限に広がっていくイメージを捉える。それが三原のものづくりの手法であり、自由を感じるプロセス。そして、その先に抱く想いこそが、三原康裕というデザイナーを稀有な存在に押し上げた。

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「ファッションは年齢的なものも含めて、ターゲットがすごく狭い世界であって、限られたマイノリティの世界。なので僕は世の中にウケるものを作ろうとかは一切必要ないと思っている。ただ常に考えているのは、世の中に影響力のあるもの、空気を変えられる強いものを作りたいということ。ファッションは自己表現であり、必要かと言われれば、その人が必要であれば必要としか言えない。でも、ファッションで感じるようなドキドキやワクワクといった感情を人間が失ってしまったら、それほど退屈な世界は無いと思う」

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変わるのは自分次第。三原の作品は、そのきっかけを与えてくれる。ファッションはアートなどと同じように、答えを一つにされることを望んでいない。むしろいろいろな答えがあるからこそ彩りがある。三原のものづくりはある意味、“人を迷走させる”ことで、十人十色の答えを作り出す。

「僕は“人の頭の中を触りたい”だけ。ファッションで人の意識を呼び起こすことはできると思う。クリエイティビティを人々に持たせるものづくりというのは変わらない本質として常にあって、人々が“幸せになりたい”と思うのであれば、日常の中でクリエイティブになってほしい。そのきっかけは本来僕らが与えるものではなく、本人が自発的に考えることだけれど、ファッションはそのスイッチを入れることができるはず」

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「政治のように世の中を変えるといった大げさなことではないけれど、僕らは人の人生をちょっと変えられる」という三原の言葉に、スノッブさは微塵も感じられなかった。だからこそ未開の地を開拓し続けるフロンティアでありながら、三原の作品には見る人の心を揺さぶる情熱が宿っているのだろう。スペシャルインタビュー動画は、Abema TVで配信中。

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Text:ラスカル(NaNo.works)
Photos:Masato Yokoyama

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