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2011.11.11

南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!

スタイルのある空間で真摯な料理を楽しむ
新世代の居酒屋

  • main152 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!
    定置網で捕った天然時鮭の「上しゃけ定食」(¥1,550)。水曜日のランチはこれ目当ての客で満席になる。
  • main237 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!
    ねっとりと旨味が凝縮した、今が旬のいくら丼(¥1,300)。これに小鉢、味噌汁、ぬか漬けが付く。小さいサイズもあり(¥950)。
  • main333 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!
    どこか懐かしさも残る、「しゃけ小島」の店内。棚には店主が集めた器やオブジェなどが並ぶ。
  • main416 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!
    杉並区・代田橋にある沖縄タウン内めんそーれ大都市場。毎日、三線教室などが行われていて、その音色が心地良い。

sub1_thumb37 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!

左が焼いた鮭を自家製たれに漬け込んだ、焼き漬け(¥600)、右が鮭のチャンジャクリームチーズ(¥550)。器は島根の出西窯や、大分の小鹿田焼きのものが多い。

sub2_thumb34 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!

日本酒は東北のものを中心に30種類ほど常備。変わったところでは、濁り酒の熱燗などおすすめだ。

sub3_thumb31 南国ムード漂う沖縄タウンで 天然時鮭のおいしさに開眼!

ファッションブランド「mallbgolloic」のデザイナーでもある、店主の小林雄一さん。

しゃけ小島ーー。そそられる名前である。”しゃけ”というには、やはり鮭を専門に扱う店なのだろう。頭に浮かぶのは、硬派な板前とおかみさんが切り盛りする小料理屋、はたまた注文の飛び交うカオスな大衆酒場か。

ロケーションは杉並区代田橋の沖縄タウン、メンソーレ大都市場。どこからか三線の音が流れてきて、気分は南国ムード一色である。細い路地を歩いて行くと、周りのディープ沖縄な雰囲気とは一線を画した、シンプルな外装の建物にぶちあたる。雰囲気のある行灯には「しゃけ小島」の文字(なんと、人気アートディレクター森本千絵さんデザイン)。扉をガラリと開けると、予想を大きく裏切って、レトロモダンな佇まいの空間が現れる。棚には、趣味良く並べられた、作家ものの陶器やグラス。ここは、インテリアショップ!?

そこに、店主の小林雄一さんが調理用白衣に蝶ネクタイで登場。白衣はわかるが、蝶ネクタイって? 「いや、バーのマスターに憧れていまして」と恥ずかしそうに答える。話を聞くと、彼は洋服のデザイナーでもあり、先だってのデザインイベント「Design Tide」にも参加していたのだとか。なるほど、そんなクリエーターの手による空間と聞いて、合点がいった。

もともと小林さんを含む、3人のクリエーターがオーナーであるこの店。そのなかの1人(CMディレクター、演出家)が、「死ぬ前に鮭の皮が食べたい」という一言をつぶやいたがために、鮭専門店を始めることになったのだとか。料理店で働いた経験があるのは小林さんのみだったことから、店主は小林さんが務めることに。どうせやるなら日本一美味しい鮭を手に入れようと、北海道・釧路に飛んだという。なんの当てもなく、市役所、漁協、定食屋のおばちゃんなど、ありとあらゆる人を訪ね歩き、出合ったのが天然時鮭。鮭というと、ちょっとパサついた感があるイメージだが、天然の時鮭はしっとりとしていて、ほどよい脂もあり、香りも高い。その時鮭を引っさげて東京に戻り、メニューを考えていくうちに、小林さんは鮭の魅力にどんどんのめり込んでいった。

「しゃけ小島っていうかぎりには、ちゃんと鮭料理を知っていなきゃと思いまして、いろいろと調べていったらハマっちゃったんです。もともと日本酒が大好きなもので、日本酒に合うものも多いんですよね」

オープンの動機はなんであれ、料理は真っ当。メニューには鮭の腸の塩辛「ちゅう」や、鮭の腎臓を熟成させた「めふん」、鮭頭部の「氷頭の酢漬け」、「鮭のチャンジャ」など希少な鮭の珍味から、焼いた鮭を自家製だれに漬け込む、新潟の郷土料理「焼き漬け」や、鮭を発酵させた「鮭醤油と鮭節の焼うどん」など、さまざまな鮭料理が並ぶ。はじめて味わう料理は目からウロコ、その奥深さ、滋味深さにノックアウトさせられる。どの料理も日本酒のすすむことといったら、もう!

また、ポテトサラダやこんにゃくの辛煮、ハムカツなど、脇を固める居酒屋定番メニューもかなりの高水準。てんこもりのポテトサラダには細かくしたリンゴがアクセントとして仕込まれていたり、こんにゃくの辛煮はこんにゃくを薄く小さく切って食感を変えたりと、さりげなく手間をかけていたりするのがにくい。あくまで控えめなのに、主張する料理。しかも、値段は一品料理が300円からと大衆酒場並の安さがうれしい。

「神楽坂の”伊勢藤”とか、京成立石の”宇ち多”とか、一本筋の通った硬派な居酒屋が好きなんです。酒の肴はやっぱり安くないと、と思いまして。そのほうがやっぱりうれしいじゃないですか」と小林さん。

これからのシーズンは鮭のアラを使った粕汁が登場。熱燗と一緒に食べれば、ほっこりカラダが芯から温まることうけあい。店内に流れるゆったりした時間に、心もゆるやかにほどけていく。そんな稀有な一軒だ。

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