野山を身軽に遊びたい!
本質的な喜びをもたらす道具たち

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ギアを通じて、軽快に歩く旅の楽しさを伝える
小さなアトリエを拠点にした「山と道」のモノ作り

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    左から小型のバックパック「MINI 25L」¥26,775、バックパック「U.L. Frame Pack ONE」(50L)¥39,113〜、そしてサコッシュ¥4,830。素材、色を選べるカスタムメイドが嬉しい。
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    極楽寺の駅の近く、坂の上にあるアトリエにて。「山と道」を手がける夏目彰さんと由美子さん夫婦。
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    バックパックやサコッシュに使われる素材が所狭しと並ぶ。今後はウエアも作ってみたいそう。
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    さまざまな素材、カラーのバックパックが並ぶ。「山と道」のバックパックはすべて受注生産、展示会とウェブサイトでオーダーできる。

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プロトタイプが出来上がる度、それらを持ってフィールドを歩く。1ヶ月に渡るニュージーランドの旅では、「ハイイングへの理解を深めることができた」そう。 ©山と道

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由美子さんが使うミシン。もう1台ミシンを置きたいというのが2人の願い。

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重量わずか75g! 驚異的な軽さを誇るオリジナルのスリーピングパッド。

剰なまでに便利さを追求した時代から、無駄を削ぎ落とした本質的なものに豊かさを感じる時代へ。現代の価値観は刻々と移り変わり、こうした価値観の変容はアウトドアにまつわるライフスタイルにも影響を与えている。たとえば、ミニマルな装備を携え身軽に野山を楽しむ「ウルトラライト(UL)ハイキング」。軽くミニマルな装備でフィールドに飛び出すこと、それはすなわち行動範囲が広くなり、自然との距離がより近くなることを意味している。そしてミニマルな装備であればこそ、そこには私たちの知恵やアイデアを凝らす余地が生まれる。一つのギアに複数の役割を求めて使い方を工夫したり、使い勝手をより洗練させるべくギアをカスタムしてみたり。

こうして既存の製品に飽き足らなくなり、自分たちの「欲しい」を形にして発信する“ガレージ”メーカーがアウトドア界には数多く存在する。いま、国内のハイカーにもっとも注目されている「山と道」も、こうしたガレージメーカーの一つだ。デザイン/アート系の現場に携わっていた夏目彰さんと衣装制作を行っていた由美子さん夫妻により2011年にスタートした、ハイキングに特化したULブランドである。現在のラインナップは最初に手がけたバックパック「U.L. Frame Pack ONE」(50L)と、はじめて商品になったスリーピングパッド(スタンダードモデルは重量わずか75g!)、サコッシュ、小型のバックパック「MINI 25Lなど。特殊な生地を扱う海外の問屋や世界中から集めた素材を用いて、試作に試作を重ねた力作揃いだ。

最初に山と山道具にはまったのはご主人の彰さんだった。

「ギアの一つ一つを吟味し、厳選したものだけを山に持って行きますが、だから道具にはそれぞれに意味があって、格好いい。その選び方も奥深いと知りました

海外のガレージメーカー発信の、シンプルで手作りされた道具に出合うにつれ、「日本の風土にあった道具作り」に心惹かれた。決定的だったのはULハイキングとの出合いだという。

それまでは二人とも重装備で山に登っていました。ULを知ってぜひ山で試してみたいと思い、装備を極限までミニマムにして山を歩いてみたんです。その時は衝撃的でした。歩ける距離が全然違う。ただ装備を軽くするだけじゃない、ULは身も心も軽くするんだって」

ちょうど、ナチュラリストのバイブルとも言われるソローの『ウォールデン—森の生活』にはまっていた彰さんにとって、自然の中でいかに豊かに暮らすかを模索したソローの生活と、無駄な機能や装備を極限まで省き、必要なモノだけを厳選するULのスタイルがぴったりリンクした。「何もない」というミニマリズムを日々の生活で実践するのは大変だけれど、週末に出かける山でなら多少の不便さも楽しめる。むしろ、不便さを快適さにだって変えられる。その後、バックパックとタープの自作キットをアメリカから取り寄せてみて作ってみたところ、「これなら自分たちで作れる!」との発想を得た夏目夫妻。憧れのジョン・ミューア・トレイルへ、自作キットの装備を携えて出かけた。ヨセミテからマウント・ホイットニーまで340kmをつなぐトレイルの一部区間はまるで「ディズニーの世界さながら」で、このトレイルを12日間かけて歩いてみた経験が「山と道」の立ち上げのきっかけになったのだった。そもそも、今では世界的なブランドとなったパタゴニアの前身、シュイナード・イクイプメントやザ・ノース・フェイスだって、ガレージメーカーから出発したのだから。

自分たちが欲しいものを形にし、できあがったプロトタイプを山に持って行ってテストを繰り返す。「昨年はニュージーランドのトレイルへ1ヶ月半の長期遠征。「歩く」行為が生活の一部としてしっくりと馴染んでいき、日本のトレイルを3、4日で縦走するのとはまったく異なる次元で自らの装備を見直すことができたと話す。

「ULハイキングは確かに、アメリカのスルーハイカーによって提唱され広まったスタイルですが、実はこうした考え方は日本でも決して珍しくなかったんです。たとえば、大正〜昭和初期の山岳界を牽引した田部重治さん。山歩きの真髄を『山との融和』と表現し、山歩きの軽快さ、愉快さを損ねないよう、上高地—剣岳縦走の際もわらじを履いたと言います。ULハイカーも共感できる日本的ハイキング・スタイルですよねですよね」

さまざまなトレイルへ出かけ、ハイカーたちとの出会いに感化され、少しずつ進化してきた「山と道」の道具たち。「軽快に歩くことの楽しさを多くの人たちに伝えたい」と小さなアトリエで生み出されるギアにはそれぞれ、想いと工夫が凝らされていて、何よりもフィールドへの愛情が感じられる。眺めるだけで、「ああ、外で使ってみたい」、そんな風に思わせてくれるのだ。

山と道

http://yamatomichi.blogspot.jp/

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