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2013.02.01

大胆なデザインのスターバックスや美術館を手掛ける建築家、隈研吾(くま けんご)を巡る旅

〜Real Styleレコメンド!冬の休日に行きたいスポット紹介~

都心部から車で、たった2時間。古き良き時代の風情と斬新なアプローチを堪能できる建築物巡りならココ!

「スターバックス コーヒー 太宰府天満宮表参道店」(2011年)、「梼原 木橋ミュージアム」(2010年)、「根津美術館」(2009年)など、新たな建築物を手掛けるたびに大きな話題を呼ぶ建築家、隈研吾(くま けんご)さん。自然素材を生かした建築や、格子を多用したデザインが特徴的な作品を多く手がけ、その独特な建築意匠から、日本を代表する建築家として世界中で大きな注目を集めている。東京をはじめ、日本各地に隈研吾さんによる建築物が存在するが、なかでも東京から100キロほど離れた栃木県には、多くの隈研吾建築があることをご存知だろうか。今回は、その土地の歴史と文化、自然環境と調和する隈研吾建築を巡る旅を紹介したいと思う。

宝積寺駅

まずは宇都宮市に隣接する高根沢町を訪れる。栃木県を走るJR東北本線とJR烏山線の乗換駅である宝積寺駅(2008年)は、かつて周辺の米麦輸送の拠点だった。駅の東には、3棟の石蔵が役目を終えて取り壊しを待っていたが、由緒ある建物を単に取り壊すことはあまりにも惜しく、隈研吾さんの監修によってその歴史背景を踏まえる形で生まれ変わることになり、宝積寺駅は田舎の小さな駅ながら、古き良き時代の駅の風情とでもいうべきか、木をふんだんに用いることで、かつての駅舎が持っていた温かさと軽やかさが再現されている。驚くべきは、駅の天井に大胆にデザインされた針葉樹合板のレリーフ。その一つひとつに高低差を付けることによって、全体として波打つような視覚効果を帯びて、躍動感が生まれている。

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また駅周辺をコミュニティスペースとして再構築しているのが、宝積寺駅の特徴だ。駅の東側にある大谷石を使った「ちょっ蔵広場」を挟んだ向かい側には、同じく大谷石を使った平屋の建物があり、地域のお土産屋や飲食店などで賑わう。独特な意匠で県外からの観光客が訪れる場所となっただけでなく、街のランドマークとして機能し、駅周辺地域の活性化も果たしている。自分が住む街の駅もこんなに素晴らしい環境だったらと羨みたくなる。

広重美術館

宝積寺駅を後にして北東へ50分ほど、「那珂川町馬頭広重美術館」(2000年)は、江戸時代の浮世絵師、歌川広重の浮世絵版画や肉筆画などの展示、地域文化活動の活性化を目的として開館された。浮世絵を中心に、様々なテーマの企画展を年に10回ほど開催し、日本が世界に誇る芸術・浮世絵を次世代に引き継ぐ役割を担っている。ゆったりとした大屋根を持つ平屋の建物には、美術館全体を覆うように地元産の八溝杉を格子状に組み、光の具合によって建物の表情に変化をもたらす。その見事なまでの景観は、那珂川の文化と自然の調和を目指した美術館にふさわしく、町の自然に溶け込んでいた。やわらかな光と自然あふれる空間が、江戸の世界へと誘い込むようだ。

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石の美術館

いよいよ最後の目的地、国道294号線をひたすら北に45分ほど車を走らせると、天然の石を積み上げた「ストーンプラザ 那須芦野・石の美術館」(2000年)に辿り着く。「石の美術館」は昭和初期に建てられた石蔵を再生し、地元の芦野石、白河石を使用した石造りの建物を新たに追加することで、美術館として生まれ変わった。総石づくりと聞くと閉ざされた重厚な空間を連想するかもしれないが、建築の中に光や風を取り入れて、石という重い素材を軽やかに使いこなし、凛とした空気が漂っている。石と水と光によってつくり出された空間は有機的な響きを感じさせ、都会の喧噪とはほど遠いゆったりとした時間を演出する。なお館内のショップ、カフェのみの利用も可能で、石蔵の中では、年に数回にわたりコンサートが開催されている。

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関東平野にあたる栃木県は豊かな自然に恵まれていて、目的地に向かう途中の車から眺める景色も抜群だ。エンターテイメント感あふれる都会的な要素は薄いけれども、東京からのアクセスは良く、個人的なリフレッシュ、家族と行くレジャー観光、そして大切な人とゆっくり過ごすドライビングスポットとしてもレコメンドしたい。ほんのり雪化粧された山々を背景に、アートと建築を味わう旅に出掛けてみてはいかがだろうか。

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